今月を視る (「むすぶ」2011年4月号)2011/04/24 00:02

空疎な「がんばろう!日本」ではなく、
被災者の悲しみ、苦しみに寄り添い、怒りを共有し、支えよう

東北沖大地震からすでに1ヶ月以上が経過した。死者、行方不明者は約3万人に近づき、未曽有の大惨事に愕然とせざるをえない。地震は天災で防ぎようがないが、これほど多くの命が奪われることを防ぐことはできなかったのか。助けられる命はなかったのか。防災計画、体制の不備などあらためて厳密に検証する必要がある。

かつてない規模の被害に苦しむ被災者の救援は急がなければならないのに、これを妨げているのは、東京電力福島第1原子力発電所の放射性物質大量放出事故だ。少なくない人々が「原発震災」の危険性を警告し、警鐘を鳴らしてきたにもかかわらず、これを無視し、利潤追求に突っ走ってきた結果である。東電をはじめ各電力会社や原発利権に群がる大企業、政府は口をそろえて「想定外」を強調するが、「想定できなかった」のではなく、原発を運転し続けるために、あえて「想定しなかった」のだ。これは、明確な人災であり、犯罪行為にほかならない。

すでに事故の深刻さは、チェルノブイリに並ぶ最悪で「天井知らず」のレベル7であることを政府も認めざるをえない事態になっている。炉心溶融(メルトダウン)を起こし、原発施設外への放射性物質放出は止めることはできず、高濃度汚染水よりはましなだけの放射能汚染水を「低濃度」と称して1万トン以上も海中へ投棄するという暴挙を行なった。放出された放射性物質は、チェルノブイリの1割にすぎないと強調しているが、「1割はけっして軽くないこと」「1号機から4号機の核燃料総量はチェルノブイリの3倍以上であり、放射能放出が止められていないことを考えれば極めて深刻」(京大原子炉実験所・小出裕章さん)であることはもはやごまかすことはできない。政府は、制御不能事故に陥った原発の冷却安定化のめどを6ヶ月~9ヶ月と発表した(4月18日)が、目算の明確な根拠もなく、国内外のだれからも信用されていない。

こんな状態にもかかわらず、電力会社、大企業、政府機関は原発推進政策に変わりはないと断言する。人の命よりも儲けを優先する醜く犯罪的な態度だ。当事者としての責任感が全くない原子力安全・保安院の西山審議官は「原発の代わりは停電」と居直り、原発製造メーカーの一つである日立社長は「国の基準にのっとって設計しており、責任を問われる立場にはない」「国内で稼動している原発が全て止まれば計画停電が全国に広がる可能性もあり、エネルギー政策上、原発を一切使わないことはありえない」と断言。関西電力は、私たちの原発停止、廃炉要求に対し、「原発からの撤退」を選択肢の一つにおいて検討することさえ拒否する回答を行った。日本経団連会長は「東電は、(大型の地震と津波による)被災者の側面もあり、政府が東電を加害者扱いばかりするのはいかがなものか」「東日本大震災が関東大震災の数十倍の規模に上ることを考慮すれば、東電だけに責任を負わせるべきではなく、国が(主導して)損害賠償に対応すべきだ」と徹底して東電擁護、原発温存の姿勢をむき出しにしている。犯罪企業東電の救済に国庫金(私たちの税金)を費やすよう要求するなど絶対に許すことはできない。

テレビでは、相変わらず、多くのタレントを動員して、まるで戦時下の「国難に一致団結して立ち向かおう」のごとく「がんばろう!日本」「この国は強い国」など空疎なせりふを並べ立て、ナショナリズムを煽り立てながら、一方で「フクシマ原発」の犯罪を覆い隠す役割を果たしている。

それでも、中には「今回ばかりは福島の人々はしっかりと怒らないといけません。みんなでそれを支えましょう。頑張ろうというきれい事では、もうどうにもならないところにきていることを国全体で認識すべきです」(福島出身の俳優 西田敏行さん)と率直に発言する人も現れている。

フクシマの怒りを全国から支えよう。今こそ、原発を無くし、莫大な原子力予算や軍事費を被災者支援にまわすよう要求し、行動する時だ。

「むすぶ」 2011年4月号 目次2011/04/24 00:15

■ 今月を視る/ 空疎な「がんばろう!日本」ではなく
     被災者の悲しみ、苦しみに寄り添い、怒りを共有し、支えよう!
■ 書簡/「GAMA」~続編「MABUI」上映会実現のおねがい 藤岡章泰
■ Q&A/ 東日本大震災・レベル7福島原発事故~その1
       「安全神話」の破綻と私たちの目ざすべきもの
■ 情報/ 岩国の今 仕組まれた愛宕山の「米軍住宅化」計画に市民の怒り新た! 
■ 講師紹介/ 山崎隆敏さん(『生き残れない「原子力防災計画」』の著者)
■ 5.4関西のつどい案内 & お知らせ

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