今月を視る(「むすぶ」2011年11月号より)2011/11/25 09:00

―災害廃棄物(がれき)の「広域処理」問題―
      汚染がれきは絶対に燃やしてはいけない!

「東日本大震災に伴う災害廃棄物(がれき)の処理が難航する中、環境省は18日、岩手県宮古市で自治体の関係者を対象に現地視察会を初めて開いた。ᄏᄏᄏ。すでに同市のがれきの受け入れを始めている東京都の担当者が、搬出する際の放射線量測定などについて説明。広域処理するがれきの放射能は、食品の安全基準や『放射性物質として扱う必要がないもの』とする国の基準の100ベクレルと同程度かそれ以下。それを住民に丁寧に説明するしかない」(11月19日毎日新聞)。「丁寧な説明」ができていないことが、住民の根強い「誤解や偏見」を生んでいるかのような記事である。

だが、事実は全く違う。8月24日までに環境省に報告された「セシウム134、137の検出量が8000ベクレル(以下bq/kgと表す)超のごみ処理場」が福島の16処理場をはじめ、岩手2処理場、茨城10処理場、千葉8処理場、栃木3処理場、群馬2処理場、東京1(江戸川清掃工場)と東日本の太平洋側に大きく広がっている。これらは家庭ごみ等の焼却から検出されたものであり(最高は福島県あぶくまクリーンセンターの95300bq/kg)、同程度かそれ以上の(放射能汚染の)環境下にあるがれきを焼却すれば8000bq/kgから10万bq/kgの焼却灰を生じさせる可能性がある。

放射性物質は焼却炉で燃やしてもなくなるわけではなく、排ガスと微粒子になる。バグフィルターではガスは除去できず、微粒子もすべて取りきれるわけでない。焼却灰が高濃度に汚染されているということは、煙突から大気中に放射性物質が比例して放出されているということである(青木泰ブログより)。

東京都の担当者が言う『広域処理するがれきの放射能は、食品の安全基準や「放射性物質として扱う必要がないもの」とする国の基準の100ベクレルと同程度かそれ以下』という放射線量測定結果も信頼性にかける。まず、どれほど汚染されたがれきが、どこに、どれだけあるのか、という徹底的な調査が必要だ。それもせず、「都合の良さそうな場所から、都合の良い測定方法で得られた結果」と疑われても仕方がない「測定」実態だ。そもそも、食品の暫定安全基準(500bq/kg)はチェルノブイリ周辺を含む国際基準からすると異常な高値であり、「放射性物質として扱う必要がないもの」とする国の基準の100ベクレルと同程度かそれ以下』は極めていい加減な言い方である。100bq/kgを超えるか超えないかは極めて重要であり、福島第一原子力発電所の事故前には、「原子炉等規制法」によってセシウム134と137が合計で100bq/kgを超えるものであれば放射性廃棄物として低レベル放射性廃棄物処理施設で長期間、厳重に保管することが求められていたのである。「一度廃棄物として流れ出すと、焼却や破砕、埋立てなどの処理過程で周辺にどのような影響を与えるかわからないので」、基準値は国際的なすり合わせも経て厳しく設定されてきたのだ。

3・11以前のこうした放射性廃棄物に関する厳格な基準にもかかわらず、汚染実態に合わせるかのように、環境省は「1kgあたり10万bqを超える放射性セシウムを含む焼却灰などについて、外部に放射線が漏えいしない対策を取った上で管理型最終処分場に埋め立てることを容認する方針」だと伝えられている。人命軽視もはなはだしい、許し難い対応である。

私たちに放射性物質をなくす技術はない。すでに放射能に汚染されたがれきを含む廃棄物から人々の被曝を最少に抑えるとしたら、それらを「これから人が住めないような場所(福島第一原発、第二原発、及び周辺の高濃度汚染地域)に処理施設を東電の費用で建設する」(「それは『核の墓場』である」)以外にない(小出裕章京大原子炉実験所助教)。取り返しのつかない事態をつくり出してしまった中でそれぞれの責任を明確にした対処が問われるべきだ。

コメント

トラックバック