今月を視る(「むすぶ」2013年2月号より)2013/02/23 10:37

日中政府は「尖閣」周辺での軍事行動を即刻中止せよ!

「尖閣」をめぐって、かつてないほど緊張が高まっている。とりわけ、軍事的緊張は「不測の事態」を招きかねないほど危険な状態である。この状態を脱するための大前提は、この地域での一切の軍事行動を直ちに中止することである。私たちは、日中両政府に、「不測の事態」の前に、この地域での軍事行動を即刻中止するよう要求する。

2月5日、小野寺防衛相が防衛省で緊急記者会見を開き、「1月30日、東シナ海の公海上で中国海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に対し、射撃管制用のレーダーを照射した」「同月19日にも別の艦艇が海自のヘリコプターに同様の照射を行った可能性が高い」と軍事情報に関する「異例の公表」を行った。
防衛省による「事件」の概要は、1月30日午前10時ごろ、尖閣諸島から北側におよそ180キロ離れた海域―「日本の主張する経済的排他水域(EEZ)の中間線の日本側」(EEZ区域内は中間線の日本側であろうとなかろうと、軍艦を含むあらゆる船舶の航行は認められている)において、中国海軍ジャンウェイⅡ級(053H3型)フリゲート「連雲港(リェンユンガン)」が約3キロ先から海自護衛艦「ゆうだち」にレーダーを照射。同月19日午後5時ごろにも、中国海軍のジャンカイⅠ級(054型)フリゲート「温州(ウェンジョウ)」が数キロ先から海自護衛艦「おおなみ」搭載ヘリにレーダーを照射したと疑われる事案が発生した、というもの。

「射撃管制用レーダー照射」はミサイルなどを発射する際に対象を捕捉するためのもので、攻撃を前提とするものといわれている。『照射はいわば「攻撃予告」であり、「照射された側が対応行動として先に攻撃しても、国際法的に何ら問題ではない」(防衛省幹部)ほどの危険な行為だ』と中国政府への非難を強めている。だが、中国海軍艦船からはレーダー照射のみで砲身の指向などは無かったことは防衛省が認めている。その意味で、日本のメディアなどで盛んに使われている「至近距離から銃口を突きつけているに等しい行為」という言い方は、大げさであり、意図的に対立を煽る言動である。とはいえ、今回の中国海軍艦船からの「射撃管制用のレーダー照射」が事実であれば、危険な行為であることに変わりない。冷静さを欠いた双方の現場判断が重なれば、「不測の事態」に発展することは十分にありうることだからである。

一方、中国外務省は2月8日、「使用したレーダーは警戒用管制レーダーであり、射撃管制用レーダーではない」と日本側発表を否定し、「日本が危機をあおり、緊張をつくり出し、中国のイメージをおとしめようとしている」と反論したことが報道されている。中国の民間メディアも「だが中国艦隊の30年以上の遠洋航海の歴史にとって、このような事態は決して珍しいことではない。中国の艦隊が遠洋航海に出港するたび、自衛隊の艦載機やP-3C対潜哨戒機が追尾してくるのはもはや恒例行事。日本防衛省のウェブサイトには中国艦艇の写真が大量にアップされている」と日中双方の「諜報合戦」や挑発行為が常態化していることが指摘されている。

東アジアの平和な環境づくりよりも、一握りの富者の「もうけ」を優先する日中両政府の「非難合戦」からは、今回の事件の正確な実態と事実経過を明らかにすることは現状では難しい。しかし、はっきりしていることは、尖閣諸島周辺海域と東シナ海上空で、数カ月前から自衛隊と中国軍の艦船や航空機が至近距離でにらみ合うような「接近戦」が続いているという驚くべき実態である。今回、照射されたという海自護衛艦「ゆうだち」、「おおなみ」はともに「テロ特措法」に基づき、度々インド洋に派遣され、多国間演習にも参加した「歴戦」の「護衛艦」という偽名の駆逐艦である。こんな戦闘艦や戦闘機が「接近戦」を展開されれば、「不測の事態」が発生する危険性が高まるのは当然だ。

まず、このような軍事行動を中止することが先決だ。南西諸島への自衛隊配備・増強を止めること。そこから緊張緩和、平和的解決の糸口をつかみだすよう声を大にしよう。

「むすぶ」目次(2013年2月号)2013/02/23 10:41

■ 今月を視る/ 日中政府は「尖閣」周辺での軍事行動を即刻中止せよ!          
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