今月を視る(「むすぶ」2013年3月号より)2013/04/09 14:12

「名護新基地」も、「オスプレイ」も、「F35」も、自衛隊強化がねらい

安倍政権による2009年(民主党鳩山政権の誕生と「普天間基地の移設先は国外、最低でも県外」方針)以前への回帰策が強引かつ急ピッチにすすめられている。政府は、今夏の参議院選挙、来年1月の名護市長選、来年秋の県知事選を待つことなく、既成事実の積み重ねで、「オール沖縄」の「普天間基地の県外移設、新基地建設反対」の決意に亀裂を生み出し、あきらめを生じさせようと画策している。そのため、この3月中にも辺野古の埋め立て申請を行なう構えであることが報道されている。「沖縄防衛局が名護漁業協同組合(古波蔵廣組合長)に提出した公有水面の埋め立て同意申請で、同漁協は総会を11日に開き、埋め立てに同意することを賛成多数で可決した」のは安倍政権がねらう流れを作り出すための巧みな演出であり、既成事実化のひとつでもある。だが、名護漁協は、早くから多額の補償金と引換え要求の辺野古新基地「推進派」として知られており、同漁協の「埋め立て同意」が特段、局面の変化を表すものでないことはだれもが知っている。しかも、「移設予定地は、もともとアメリカ軍の訓練で自由に漁ができないうえ、移設計画はいくら反対しても国策で進められており、結果的に一番損をするのは漁業者だ。安倍総理大臣も『県外移設は困難だ』と述べており、いよいよ移設は進むと組合員も思っている。組合員が後悔しないように国は補償してもらいたいし、納得がいく補償額でなければ同意書は出さない」(古波蔵廣組合長)と「補償金吊り上げ」へのパフォーマンスの一環でもあることを明け透けに語っている。事態に変化が現れているわけではない。実際、仲井真弘多知事は「県としては、結論を出すには8~10カ月かかる。手続きを踏んで判断したい」「辺野古への移設は実現性が低い」と語り、名護市の稲嶺進市長は「大変残念であると同時に寂しく、悲しい」と述べ、「(埋め立て申請など)事務手続きが進んでも、実際に移設が前に進むことにはつながらない」と強調している。その他にも、埋め立てにはくぐり抜けなければならない無理が山ほどある。今や沖縄の民意は、安倍政権のこんな姑息な演出に揺らぐほどあやふやなものではない。

米軍は、安倍内閣が「オール沖縄」のオスプレイ撤回、普天間基地の県内移設反対の声を無視するのに呼応して、3月6~8日に米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸機MV22オスプレイ3機を岩国基地(山口県岩国市)に移し、和歌山や四国を通過する「オレンジ・ルート」で低空飛行訓練を強行した。オスプレイは昨年10月の沖縄配備後、フィリピンなど海外での低空飛行訓練を行ってきたが、本土では初めて。全国六つのルートでそれぞれ年間55回程度、低空飛行訓練を行う可能性があるとされている。米軍当局は、当初の予定の「イエロー・ルート」(九州)を変更した理由として、陸自の日出生台での演習と重なることをあげたが、今回の訓練強行は、日米連携によるものに他ならず、日米政府が「配慮」するのは住民の安全ではなく双方の軍事的事情だけであることも明らかになった。さらに、小野寺防衛相は11日午前の衆院予算委員会で、米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイを自衛隊が導入する可能性について「個人的な感覚で言うと、小笠原を含めた離島での患者搬送には非常に大きな威力を発揮するのではないか」と述べ、防衛省自身がオスプレイを欲しがっていることを隠していない。

武器輸出3原則の空洞化の突破口として狙われている米軍の最新鋭ステルス戦闘機F35についても日本の「国益」(グローバル資本の利益)優先の姿勢は明らかである。米軍が、F35を2017年に岩国基地に配備することに加え、日本も航空自衛隊の次期主力戦闘機として42機購入する。

これら安倍政権の「命よりもカネと軍事優先」の軍事政策は、単に米軍の「やりたい放題」の容認ではない。自衛隊強化のために、辺野古新基地もオスプレイもF35も活用しようとしている日本政府のねらいを見定めた闘いをつくりだそう。

「むすぶ」目次(2013年3月号)2013/04/09 14:16

■ 今月を視る/「名護新基地」も、「オスプレイ」も、「F35」も、自衛隊強化がねらい         
■ ミニ解説/ 福島県鮫川村の『高濃度放射性廃棄物』焼却施設建設問題について
■ Q&A/ 震災がれき広域処理差し止め訴訟 
              法廷での焦点~内部被曝の危険性と廃棄物利権
■ TRIP CORNER/ 八重山・ちらっと1人旅(その1)  堺市 豆多敏紀
■ 読者つうしん/ 韓国の女性労働者たたかいと連帯!   高槻市 山本利枝                         
■ 4.14市民シンポジウム & おしらせ