今月を視る(「むすぶ」2016年5月号より)2016/05/27 09:38

オバマ大統領の広島訪問
核兵器廃絶へ原爆投下の過ち認め、謝罪を!

被害者への謝罪は不可欠
オバマ大統領が「伊勢志摩サミット」の終了直後の5月27日に広島を公式訪問することが決まった。
人類史上他に例を見ない無差別大量殺戮として明白な「人道に対する罪」である原爆投下を世界で初めて唯一実行した米国に、その過ちを認めさせ、被害者に謝罪させることは、「核のない平和な世界」への不可欠かつ最も重要な課題である。今なお、核兵器保有世界一の位置を維持するだけでなく、世界の戦争の中心にある米国に過ちを認めさせ、被害者に謝罪させることは容易でないことは確かだが、あいまいにしたり、避けて通ったりすることは許されない問題である。だが、米国はすでに「広島で謝罪しない」と予防線を張り、この問題から世界の目をそらせようと懸命だ。
日米互いの戦争責任不問で「同盟強化」
広島へは安倍首相も同行する。日本政府は、オバマ大統領の広島訪問に際して、過ちを認めることも被害者への謝罪も一切求めない。日米政府の狙いは、そもそも「伊勢志摩サミット」がそうであるように、グローバル資本の権益確保のための「同盟強化」であり、そのために、互いの戦争責任を消し去ることにある。
だが、この狙いを世界はすでに見抜いている。昨年2月、広島の平和市民団体が共同でオバマ大統領に充て、『私たちは、オバマ大統領が広島を訪問される際には、米国大統領として、原爆無差別大量殺戮が人類に対する由々しい犯罪行為であったことをはっきりと認め、米国政府の責任の所在を明らかにした上で、原爆被害者に謝罪し、残り少なくなった米国大統領の任期期間中、「核廃絶」に向けて全力で努力する覚悟を公にされることを要求します。と同時に、日本政府、安倍政権にも、中国・北朝鮮・韓国をはじめアジア太平洋諸国に対して自国の「戦争責任」を真摯に認め、謝罪し、「被害者」、「被害国」が受け入れられるような適切な戦後補償政策を実践していくことを強く求めます。』との手紙を送った。
世界のすう勢は核兵器廃絶と軍縮
ジュネーブで「核兵器のない世界」を実現するための法的な措置を話し合う国連の公開作業部会(核兵器を法的に禁止しようという国際的な潮流の高まりを受けて、昨年の国連総会決議によって設立された)が開催され、「メキシコ、ブラジルなど9カ国が、核兵器禁止条約を念頭に、核兵器を禁止するための法的な措置についての交渉を2017年から開始するよう、踏み込んだ提案をした。核兵器の非人道性を訴え、禁止を求める動きは広がりを見せ、より具体的なものになっている」(毎日新聞)。核保有国はボイコットで対抗しているが、もはや、この流れは止められない。一見、混乱と戦争が支配するかに見える世界も、ヨーロッパでの軍縮が顕著なように軍縮が趨勢だ。
オバマ大統領は被爆者の声に向き合え
オバマ大統領の広島訪問は世界の核廃絶と軍縮との流れの中にある。この流れが「広島訪問」を実現させたとも言える。彼らの思惑がどこにあるにせよ、広島訪問で被爆者の声に触れずにいられることは不可能だ。広島県の湯崎知事は、被爆の実相をしっかりと受け止めるためには「原爆慰霊碑への献花と資料館見学、原爆ドームの視察とともに、被爆者の話を聞くことがフルセットとしてあるのではないか」と指摘し、オバマ米大統領が広島を訪問する際、被爆者と面会する場を設けるよう、安倍晋三首相やケネディ駐日米大使に直接要請する考えを示した。今こそ、被爆者の声に向き合わせなければならない。

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