今月を視る(「むすぶ」2016年11・12月号より)2017/01/05 10:52

自衛隊の南スーダン派兵と沖縄の基地強化
 改憲先取りの軍事優先社会に、地域から対決の取組みを!

武器輸出、原発輸出、カジノ、新「3本の矢」
もはやブレーキを踏む気さえなくなった安倍政権。12月2日には、たった6時間の審議で「カジノ法案」の採決を衆院内閣委員会で強行、可決した。「カジノ」が安倍政権の成長戦略の切り札の一つとでも言うのか。それとも改憲への同士である維新の党に対する単なるご褒美なのか。いずれにしても、『今や、アベノミクスの新たな「3本の矢」は「武器輸出」と「原発輸出」、そして「カジノ」という実態』(古賀茂明氏)は、安倍政権のめざす社会がグローバル資本の権益擁護のための軍事優先社会であることをはっきりと示している。

自衛隊の「最初の一発」の前に、撤退を
 「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防衛」を新任務とする陸上自衛隊11次隊の主力部隊(青森の第5普通科連隊が中心)の第1陣約120人が、12月1日、南スーダンに派遣され、首都ジュバに到着した。すでに、11月21日には先発隊130人が派遣、到着しており、残りの約100人が12月15日に到着する予定だ。12月12日から新任務が適用されることになっており、総勢350人が「殺し、殺される」現場で活動することになる。
繰り返し指摘されているように、南スーダンの政治、軍事情勢は悪化の一途である。政府が「首都ジュバは比較的安定している」と言い募るのとは裏腹に、政府軍と反政府軍の戦闘は、首都ジュバでも激化しつつある。7月には、政府軍と反政府軍による死者300人の大規模な戦闘が起こった。国連機関の民間人が殺害、暴行、レイプされた事件も発生している。現在の南スーダンに日本のPKO参加五原則の一つである「紛争当事者間の停戦合意」はとっくにない。また、国連のPKOは、現在、文民保護のため内紛に積極的に介入する方向に変質している。PKO参加五原則も、国連のPKO活動の変質も無視して、南スーダンに自衛隊を派遣し続ける政府・防衛省の目的は何か。「
殺し、殺される」現場に置くことで、自衛隊の「普通の軍隊」への一歩を踏み込ませることだ。たとえ、自衛隊が「最初の一発」を撃ち、撃ち合いとなって自衛官が負傷、殉職したとしても、「権限を他国並みにすべきだ」と国民世論を改憲へ誘導することを狙っていると考えるべきだ。
「最初の一発」を許してはならない。「自衛隊は南スーダンから直ちに撤退せよ」の声と行動を高めなければならない。全力で取り組もう。

高江・辺野古、そして伊江島 一体的な北部の基地強化との闘い
政府は、東村高江のオスプレイ(ヘリ)パッド建設をアピールするため、米軍北部訓練場の約51%の「使えない区域」の「返還式典」を12月20日に行うと発表した。そのために、従来に増して無茶苦茶な工事強行に乗り出している。全国から動員された500人もの機動隊の暴力が頂点に達した「土人」、「シナ人」発言。すでに、高江での抗議行動を理由に10月17日に不当逮捕し、勾留している山城博治さんらに加え、1月の辺野古でのゲート前ブロック積み上げ抗議行動を理由に、11月29日、山城さんの再逮捕を含む4名の逮捕という暴挙を行った。逮捕者は9名に上り、山城さんらの勾留は、保釈も認めず、すでに40日を超えるという異常さである。
 これは、「高江を片付けなければ辺野古へ進めない」とする政府の焦りである。だが、高江の闘いに「終り」などない。木々がなぎ倒され、多大な環境破壊がすすめられたが、これ以上の自然破壊を止めさせ、何よりもオスプレイを軸とした基地の運用、機能強化を許さない闘いだからだ。
伊江島へのステルス戦闘機F35の着陸帯建設(強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯「LDHデッキ」の拡張工事)を含め、米海兵隊の「戦略展望2025」がいう「普天間代替施設建設が進行しているキャンプ・シュワブなど北部は目覚ましい変化を遂げる」ことを許さない闘いが、一歩も引かずに存在している。この沖縄の闘いに、全国から応える取組みに全力を挙げる時だ。

「むすぶ」目次(2016年11・12月号)2017/01/05 10:53

■ 今月を視る/ 自衛隊の南スーダン派兵と沖縄の基地強化
改憲先取りの軍事優先社会に、地域から対決の取組みを!          
■ 報告/ むすぶ会学習会 「パレスチナの今 - イスラエルと日本」  
■ Q&A/ 高江/機動隊の「土人」発言~差別と弾圧強める安倍政権
■ シリーズ・沖縄の米軍基地 ~「県外移設」を考える その5
■ BOOK CORNER/「さようなら! 福沢諭吉」 安川寿之輔 他 著(花伝社) 岡本 誠
■ 読者つうしん/ 久しぶりの沖縄 -辺野古・高江・読谷- 大阪府太子町  湯川 恭
■ Linking Peace Column & おしらせ

今月を視る(「むすぶ」2017年1月号より)2017/01/28 09:49

日本軍慰安婦問題と沖縄新基地建設
被害者と住民を無視した政府間合意に正当性はない!        

国際常識は被害者の人権回復が最優先されること
昨年、12月28日、韓国釜山の日本総領事館前に設置された少女像をめぐって、日本国内では「国と国の約束を守らない韓国社会は異常」「国際常識からかけ離れた韓国」との一方的な決めつけに基づくキャンペーンが、「リベラル」と評される毎日、朝日、東京新聞という大手メディアを含めて大々的に繰り広げられている。「人権よりも国益優先」のどこがリベラルか?そう叫びたくなるひどい実情だ。
そもそも、「慰安婦問題」についての日韓政府間合意(2015年12月28日)を「歴史的合意」と評価することは決定的に誤りだ。被害当事者はもちろん、韓国の多くの人々が、この政府合間意をもって「慰安婦問題」の「最終決着」とすることに全く納得していないからだ。解決に向けた「足がかり」というならともかく「歴史的合意」などありえない。歴史的国家犯罪である日本軍慰安婦問題を(年間5兆円以上も軍事費に費やす日本の財力からすれば)「わずか」10億円で「帳消しにしろ」とはあまりにも厚かましい態度である。
合意後も謝罪と記憶への誠実な態度を一切示すことなく、ソウルの日本大使館前の「平和の碑」(少女像)の撤去にのみ執着し、圧力を加え続けた日本政府に対する不信がいっそう高まったのは当然であり、腐敗の極みに達した朴・クネ政権への怒りと相まって、「日韓政府間合意」への怒りが爆発したのが今回の事態である。釜山の少女像は、合意に怒った釜山市民・学生らが合意直後に建立計画を立て、合意1周年の日に設置を行ったものだ。実際、直近の韓国世論調査でも、「合意を破棄すべき」との回答が6割近くにのぼっている。韓国の民衆がなぜ怒っているのか、何を日本政府に求めているのかに正面から向き合おうとはせず、韓国政府に「国と国の約束は守れ」と迫ることは、ソウルや釜山での市民の抗議行動に対する強権的な対応、暴力的な弾圧を要求するものであり、犯罪行為と言っても言い過ぎではない。
振り返れば、65年の日韓基本条約は、軍事独裁の朴・チョンヒ政権との結託で、日本軍慰安婦とされた女性たちをはじめ日本の侵略と植民地主義の被害者たちが声をあげることができない状況で締結が強行された。その50年後、セウォウル号事件など民衆の怒りと闘いに追いつめられた娘の朴・クネ政権を利用する形で今回の日韓政府間合意が押し付けられた。だが、50年前との違いは、韓国の民主主義運動は、腐敗した政権を弾劾に追い込むまでに大きく前進した状況にあることだ。この韓国の闘いに連帯し、日本社会で侵略と植民地主義の清算を求める運動をすすめなければならない。

「SACO合意」も住民無視の日米政府間合意
 沖縄の新基地建設を強行する日本政府の名分は、日米同盟強化のための「国と国の約束を守る」である。日米安保条約であり、現在の沖縄では、SACO合意がそれである。「日韓合意」同様そこには被害者と住民の意思は全くない。日本政府にとって、国益こそが全てであり、それを体現する日米政府間合意は絶対である。基地被害に苦しむ住民の思いは眼中になく、逆らうものは排除の対象でしかない。
この姿勢は、年明けから露骨に示された。米軍は、オスプレイ墜落後1週間も待たず、訓練を再開しただけでなく、事故の直接原因となった空中給油訓練をも1か月を待たず再開するという暴挙を強行したが、日本政府は、この暴挙を直ちに容認、追認した。
さらに、日本政府は「高江オスプレイパッド完成」を謳いながら、実際には内部の建設を急ぎ、一方で、辺野古での工事を再開させるというなりふり構わぬ攻勢に出た。
今や、沖縄でのオスプレイと強襲揚陸艦の巨大総合基地建設は、政府、防衛省にとって、同時並行ですすめられる与那国から奄美大島での対中国軍事包囲作戦(有事には5万人規模の自衛隊動員を想定したミサイル基地軸の大軍事拠点づくり)の要となっている。
 沖縄の新基地建設阻止、オスプレイ配備撤回と海兵隊の撤退という要求と闘いは、東アジアでの戦争をくい止め、平和な環境を作り出す闘いである。勝利への道を確実につくり出すために全力を尽くそう。

「むすぶ」目次(2017年1月号)2017/01/28 09:50

■ 今月を視る/ 日本軍慰安婦問題と沖縄新基地建設
被害者と住民を無視した政府間合意に正当性はない!          
■ 解説/ 「失敗学」を学ばない高速炉開発と核燃料サイクル  岡本 誠 
■ Q&A/ 沖縄/オスプレイ墜落と地に堕ちた最高裁判決
■ 映像/「テロリストは僕だった~基地建設反対に立ち上がる元米兵」 豆多敏紀
■ 読者つうしん/ 追悼☆杉山千佐子さん 全国戦災傷害者連絡会 賛助会員 赤松 竜
■ 国立景観訴訟・上原さん支援カンパのお願い & おしらせ