今月を視る(「むすぶ」2017年9月より)2017/10/14 10:09

-北東アジア非核兵器地帯と核兵器禁止条約-
  今こそ、地域の平和と安定へ 確かな展望を訴えよう!
      
金正恩政権の暴走を最大限に利用する安倍政権
9月12日の毎日新聞朝刊の片隅に、『首相「防衛力強化」自衛隊幹部に訓示』との見出しで安倍首相が自衛隊幹部会同(9月11日)で訓示したとの小さな記事があった。訓示は『北朝鮮の核・ミサイル開発について「現実に真正面から向き合わねばならない。防衛力を強化し、果たし得る役割の拡大を図る」というもの。朝鮮半島をめぐるこの間の「不穏な動き」に不安を募らせながら、「戦争だけはしないで!」と痛切に願う大多数の人々の声に反し、安倍は、「開戦も現実の一つ。参戦に備え、万全の準備を」と自衛隊幹部に号令をかけているのだ。ここに安倍政権の危険な性格が露出している。これ見よがしな米韓合同演習や日米共同演習による明らかな挑発に対し、弾道ミサイル発射や核実験を繰り返す金正恩政権の暴走を最大限に利用し、自衛隊を〝いつでもどこでも戦争できる軍隊〟に仕上げようとするのが安倍政権の魂胆である。

「防衛力を強化し、果たし得る役割の拡大」を具体化
9月9日、航空自衛隊のF15戦闘機2機と米空軍のB1爆撃機2機は東シナ海で共同訓練を実施した。F15は那覇基地(那覇市)、B1は米領グアムのアンダーセン空軍基地から発進し、計画ルートを編隊を崩さずに飛ぶ訓練を行った。これ以外にも、『北朝鮮が米領グアム周辺に弾道ミサイルを発射した場合に上空を通過する中四国4県では、空自が地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」の部隊を展開中。海上配備型迎撃ミサイル「SM3」を搭載した海上自衛隊のイージス艦も日本周辺で常時監視態勢をとっている。米海軍は8日に原子力空母「ロナルド・レーガン」を横須賀基地(神奈川県横須賀市)から出港させた。海自と空母を含む米海軍は日本周辺海域で共同訓練を実施する可能性がある』と報道。「果たし得る役割の拡大」は、日米共同演習という形で加速度を一気に高めている
「防衛力強化」は2018年度予算の概算要求に露骨に示された。要求額は過去最大の5兆2551億円。伸び率は今年度当初予算比2.5%増で、第2次安倍政権発足以来6年連続の要求増だ。
内容も「高額商品」オンパレード。目玉の一つとなる弾道ミサイル防衛(BMD)の新システム「イージス・アショア」は、現在海上自衛隊のイージス艦に搭載している海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を陸上に置く新システム。概算要求では項目のみで、1基約800億円とされる費用は明示せず、年末までに確定というインチキぶり。その他、ミサイルやレーダー関連の高額兵器がずらり。
また、「オキナワ島しょ戦争」を想定し、自衛隊配備・増強(18年3月に発足する水陸機動団など)が進められる沖縄・南西諸島関係では新たなミサイル兵器・研究が盛り込まれた。「島しょ防衛用高速滑空弾」(高速で滑空して目標を攻撃する新ミサイル。離島間での攻撃用)と「島しょ防衛用新対艦誘導弾」(「海上優勢」を確保するための対艦攻撃ミサイル弾)の開発に向けた要素技術研究費で、それぞれ100億円、77億円を計上。さらに、南西警備部隊の施設整備に552億円。最新鋭ステルス戦闘機F35を6機881億円。また、南西諸島防衛強化としてオスプレイ4機457億円も計上した。

圧力・制裁の強化ではなく、対話と軍縮を!
中国やロシアにどのような政治的思惑があるにせよ、現在の危機に際し、「朝鮮半島の緊張と核問題に深刻な懸念を表明する。平和的手段と関係国の直接対話を通じてのみ解決すべきだ」(「アモイ宣言」)と、関係国に自制を促すという主張は正しく、「北朝鮮の核開発と米韓合同演習を同時に止める」という提案は当面の危機回避に最も有効な措置でありうる。すでに「圧力強化」が 金正恩政権の核開発を止めるのに何の効果もないことが明らかになっているにもかかわらず、これらの主張には一切耳を貸さず、「さらに強力な圧力を」だけ繰り返すのは、外交的に無能なだけでない。
北東アジアの平和と安定を望まぬ戦争勢力のどす黒い欲望が背後で渦巻いていることを見抜き、緊張激化政策に拒否の声をあげなければならない。「北東アジア非核兵器地帯」と「核兵器禁止条約」は、現在の危機を脱し、この地域の平和と安定に導く確かな展望であることを粘り強く広く訴えよう。

「むすぶ」目次(2017年9月号)2017/10/14 10:10

■ 今月を視る/ 北東アジア非核兵器地帯と核兵器禁止条約
        今こそ、地域の平和と安定へ 確かな展望を訴えよう!
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