今月を視る(「むすぶ」2018年11・12月号より)2018/12/10 21:41

SACO合意、日韓請求権協定、「慰安婦」問題合意
人権無視の二国間条約・合意は国際基準ではない!

「二国間条約・合意は最優先」はすでに破たん
10月30日、韓国の元徴用工4人(すでに3名が死亡)が戦時中の強制労働によって受けた被害の損害賠償を求めた裁判で韓国大法院(最高裁)が被告・新日鉄住金の上告を棄却、日本の植民地支配と侵略戦争の遂行過程での日本企業の反人道的行為によって生じた被害の慰謝料を認め、原告勝訴の判決を確定させた。この判決は朝鮮半島の戦争と平和をめぐる問題の根底にある日本の植民地支配の責任と清算は未解決であること、朝鮮半島や東アジアの平和構築をすすめるうえで、植民地支配責任の清算は避けて通ることのできない問題であることを示している。歴史的、画期的判決である。
これに対する日本の対応は全く異常である。政府、大企業、大手メディアが一体となって「国と国の約束を守らない韓国」「韓国は国際常識が通用しない国」など韓国バッシングの大合唱。韓国政府に対して、裁判所の判断に介入すべきかのような対応を求める異常さである。さらに、11月21日、韓国政府が慰安婦問題に関する日韓合意に基づく「和解・癒やし財団」を解散すると発表するとこのバッシングはいっそう激しいものとなっている。大手メディアのほとんども、政府と一体となって「国益擁護」を叫ぶ酷い様相である。「条約・合意を遵守できない韓国は民主主義国家ではない」、「韓国政府(文在寅政権)はおかしい」というイメージを日本社会に植え付けようとしているが、不都合な真実は一切伝えない。
徴用工をめぐる今回の裁判で、朴槿恵政権が判決を出さないよう裁判所に圧力をかけていたことが暴露されている。その朴槿恵政権が安倍政権との間で合意した『「慰安婦」問題合意』と朴槿恵の父親である朴正煕軍事独裁政権が日本との間で締結したのが、日韓基本条約・請求権協定である。これらの条約・合意に共通するのは、被害者の声と人権をほとんど反映することがなかったことだ。日本政府は、「国際司法裁判所に提訴も視野に」とあたかも日本の側に理と勝算があるように「威勢よさ」を強調するが、国連人権規約に示される個人の人権尊重こそが今日のグローバルスタンダードであり、形式的な国家間の約束以上に被害者の人権回復が最優先されなければならない。人権を基礎に新しい日韓の関係を築くときだ。

辺野古新基地はできない!
「国際条約最優先」を政府が辺野古新基地建設強行の最大の根拠とするSACO合意もまた沖縄県民の意思を無視し、人権尊重のかけらもない日米の二国間合意である。沖縄県民の人権も民意も全く考慮する気のない安倍内閣は玉城デニー知事との会談からわずか5日後の10月17日、辺野古新基地建設に伴う沖縄県の埋め立て承認撤回への「法的対抗措置」として、国土交通相に対して行政不服審査法に基づく審査請求と、処分が出るまで撤回の効果を止める執行停止を申し立てるという強権策に打って出た。この「自作自演」の猿芝居によって石井国土交通相は30日、知事の撤回処分の効力を一時停止することを決定。埋立て承認の撤回の効力は停止され、臨時制限区域を示すオイルフェンスと浮具(フロート)設置などの「工事再開」に着手。しかし、土砂搬入については、台風で破損した本部塩川港の復旧に目途が立たないことを理由に本部町が許可を出さないため、土砂搬入は当面不可能との報道も出て、防衛局にとっては極めてピンチな状況にあることは間違いない。
「天の利」も重なって、政府・防衛省は明らかに追い詰められている。それでも、「建設の遅れや停滞はない」ことを示すために、11月15日、キャンプ・シュワブゲートからのダンプによる資材搬入を2ヵ月ぶりに再開した。「粛々と進める」との政治的パフォーマンスだろうが、行き詰まりははっきりしている。
玉城デニー知事が初めて訪米し、米国内にも多くの共感を得るなど確かな成果を手に帰沖した。政府・防衛省が2年間も隠し通し、県の撤回の理由の一つになった大浦湾の「マヨネーズ状態」とも表される超軟弱地盤の問題を米政権の関係者にも明確に説明したことは成果の大きな一つである。
来年2月の『県民投票』に向けた沖縄の新たな闘いが始まっている。持続する沖縄の闘いに全国から応えるときだ。全国の地域から声をあげよう。

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