<読者つうしん> 猫の恩返し? 「動物保護優先住宅」2023/10/23 15:14

東大阪市  尾田清一

今夏、命の危険を感じる猛暑の中、僕はエアコンのない長屋の一室で、黙々と段ボール箱に荷物を詰め、引越し準備をしていました。何度も暑さで手が止まり、扇風機の唸る音とべたつく熱風に急かされながらの作業でした。築60年越えのこの長屋は、戦後の住宅難の時代に建てられたもので、間口も間取りも小さく、今はほとんど空き家です。ここにかつて家族6人で暮らしていたこともあるのですが、今は僕ひとりと猫3匹(だんご三兄弟…僕はそう呼んでいる)だけの暮らしとなりました。
おふくろがエアコン嫌いで、室外機も朽ちた物干しにあり危険だったので、10数年前に撤去。僕は「エアコンなんかなくても、日本の夏くらい・・・」とずっと豪語してきたのですが、「地球沸騰」の今夏、それはもう通用しなくなっていました。僕自身もさることながら、だんご三兄弟が、連日室温35度を超える中で、寝ているのか、死んでいるのか、あるいは気を失っているのか、分からない状態に度々陥りました。でも、僕にしてやれることといえば、玄関の引き戸の前にコンパネを立てかけて影をつくること、裏の坪庭の庇にホースで水をかけることぐらい。このままではヤバイ! 危険! 何とかしなくては・・・

7月の末、そんな窮状を、昨年知り合った「むすぶ会」のMさんに話したところ、Mさんはふと思い出したように「ちょうどいい物件がある」って、一緒に地域猫の世話をしているFさんを紹介してくれました。
Fさんは美容師さん。Mさんのマンションの隣で美容室を経営しているのですが、副業にささやかな賃貸業もやっていて、名刺には「不動産賃貸 動物保護優先住宅」の肩書きが。もちろん「動物保護優先住宅」は、Fさんの造語です。なんでも犬や猫を保護し飼っている人たちが、そのためにアパートやマンションを借りにくいという事情に心を痛め、なんとかサポートしたいと今年から始めた事業とのこと。格安の中古物件を買取り、最小限のリフォームをして、そういう人たちに優先入居してもらうという賃貸業です。
とはいえ、気になるのは家賃。聞いてみると、2軒のうちまだ1軒空いていて「一般の方は月●万円ですが、保護動物を飼っておられる方は5000円引き。さらに複数匹飼っておられる方は、そこから1匹につき1000円引きします。」とのこと。僕の場合は、8000円引き。助かります。このせち辛い世の中に、こんな賃貸システムがあるなんて・・・ 命を大切にしたいという家主さんのやさしい情熱を感じました。
かくして、年金一人暮らしの僕が、猫3匹連れて、長屋からの脱出を決断! 8月初めのことでした。
そこから、冒頭に書いた猛暑と熱風の中での地獄の作業が、一カ月間続いたのです。もとより僕の荷物は少なかったのですが、何しろ戦後間もない親の代からの家財道具にガラクタ・・・ これまでずいぶん処分してきたつもりが、優柔不断を思い知らされました。
それでも何とか必死に頑張って、9月上旬、ついに引越し! 新居は長屋から直線距離で約5キロ、駅から徒歩6分の好立地。築40年のこじんまりした二階建てで、入居に先がけエアコンも設置しました。
この物件で一番気に入ったのは、2階の南北両側にベランダがあること。Mさんと見に来たときから、この両ベランダに鉄製のしっかりした脱出防止ネットを張ったら、三兄弟を室内から開放し、外の景色を眺めたり日光や風にあたったりさせてやれると、これまで叶わなかった夢を描いていました。

14年前のある夜、お風呂屋さんに行く途中、道にだんごが3つ落ちていると思ったら、仔猫3匹でした。野良と分かり連れ帰り、トム、カミン、ツレと名付けて家族にしました。そのころすでに我家には、事情で飼えなくなった人から引き取った先住猫が1匹いたし、決して余裕のある暮らしではなかったのですが、そのまま道路上の小さな命を見捨てることはできなかったのです。
今回、思いがけずこのような「動物保護優先住宅」に恵まれたのは、命にやさしい地域の人たちの暖かい心を介して、だんご三兄弟からの「猫の恩返し」だったのでしょうか? ふとそんなことを思ったりします。
10月に入り、ようやくエアコンの要らなくなった部屋で、今、高齢猫となった三兄弟は、のびのびと風に吹かれ、気持ちよさそうに寝ています。僕にとって、この上なく幸せで平和なひとときです。

「むすぶ」目次 (2023年9月号)2023/09/24 18:04

■ 今月を視る / 軍拡か軍縮か? 市民社会のあたりまえの論議を要求しよう!
■ 沖縄レポート / 辺野古、最高裁上告棄却 三権分立を取り戻す闘いへ!
            沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之
■ Q & A /「肩代わり金」の「供託」と今後の課題  全国ネットワーク 矢野秀喜                                 
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 『ハイビスカスの娘』 印西市 若谷政樹
■ 読者つうしん /『沖縄、再び戦場へ』上映会からのスタート  松原市 岡部修子  
■ 読者つうしん / 熊野古道を歩きながら考えたこと    枚方市 佐藤謙司
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る (「むすぶ」2023年9月号より)2023/09/24 18:03

軍拡か軍縮か? 市民社会のあたりまえの論議を要求しよう!

■なぜ「防衛費」あげるの?
「私たちは、社会科や総合学習で、沖縄のことや戦争のことを学んできました。戦争は遠い昔の話だと思ったのに、今も苦しんでいる人がいることや、今にも続く問題であることがわかりました。」
 「戦争は怖いし、絶対にやってはいけないと思っていたのに、ニュースで防衛費をあげようとしていることを知りました。そこで岸田首相に『ぜひ聞いてみたい、伝えたい』という声があがって、クラスのみんなで手紙を書きました。」
東京都世田谷区の私立和光小学校6年の36人が、今年初めに書いた手紙の始まりである(毎日新聞 8/15)。そして、率直な疑問を伝え、岸田首相から直接答えを聞きたいと思いをつづっている。
「今、北朝鮮が日本にミサイルをうってきていますが、うってきているから軍事費を増やすのはダメだと思います。> <逆に中国などが怒って、攻撃してくるかもしれないと思いました。」「なぜ自衛隊が、国を守る以外に攻めてもいいというルールになったのですか?」 等々。
さらにある児童は、沖縄で見聞きしたことを踏まえ、全員で書いた手紙に加え、こんな思いをつづったとある。
 「平和は自分だけの意見ではなく、人の意見もちゃんと聞き、いろいろな意見があることを理解しないと平和にはならないと思います。なので沖縄の声も聞いてください。それとも何か聞かない理由があるのですか?」
この小学生の率直な疑問は、実は多くの市民の疑問である。政府の強引な軍拡は、こうした疑問や市民の率直な論議を排除して成り立っている。国会審議すらまともに行わず、空前の軍拡政策を推し進める政府に対し、今当たり前の疑問をぶつけ、まともな論議を要求することは極めて重要だ。

■最高裁の政治的判決に委縮などしない
9月4日、辺野古新基地建設を巡る訴訟で最高裁は県の主張を退ける不当判決を行った。県が不承認とした理由(軟弱地盤やジュゴン保護の不備)には一切触れないだけでなく、「法定受託事務を巡って国が知事の処分を取り消す裁決をした場合、『知事は裁決の趣旨に従って処分をすべき義務を負うべきである』と述べ、地方自治法違反だとした。」「これでは、国と対立した場合、自治体は国に従うしかないということになる。」(琉球新報9/5)ように、国と地方自治体は対等とうたった地方自治法の精神を真っ向から否定する時代逆行の判決と言わざるを得ない。
 メディアの多くは沖縄県が新たな裁判を起こせないように言うが、そんなことはない。玉城デニー知事は新たな法廷闘争も視野に入れながら、国内外の世論に訴えるため、9月18日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた国連人権理事会に出席し、「米軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている沖縄の状況を世界中から関心を持って見てください」と訴えた。
沖縄の闘いがそうであるように、平和を求める闘いは今回の最高裁判決で萎縮などしていない。
8月29日、陸上自衛隊のオスプレイを佐賀空港に配備する計画に対し、漁師ら地元の人々が、建設中の佐賀駐屯地(仮称)の工事を差し止める仮処分を佐賀地裁に申し立てた。9月8日には東京電力福島第1原発で8月に始まった“処理汚染水”海洋放出の差し止めを求めて、福島、宮城県などの住民ら約150人が、国と東電を福島地裁に提訴した。
裁判闘争含め、一切あきらめのないこれらの平和の闘いを支える取組みを全国に広げよう!

「むすぶ」目次 (2023年8月号)2023/08/22 15:34

■ 今月を視る /「相互の関係においてすべての紛争を平和的手段により解決し
 武力及び武力による威嚇に訴えないこと」を基礎に行動を!
■ オピニオン / 人新世と海洋放出  ZENKO関電前プロジェクト 八木浩一
■ 沖縄レポート /「台湾有事」を絶対に起こさせない!
 沖縄・南西諸島で戦争させない取組みを全国で! 西岡信之                                 
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 『マブイ風』   印西市 若谷政樹
■ 図書あんない /『南風(まぜ)に乗る』  柳 広司著   堺市 松永直子  
■ 読者つうしん / マイナカードは恐ろしい! 仕事の意欲も減退、もうええわ!
           忙殺職場からのためいき  堺市堺区役所 五十子幸光
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る (「むすぶ」2023年8月号より)2023/08/22 15:33

「相互の関係においてすべての紛争を平和的手段により解決し、
武力及び武力による威嚇に訴えないこと」(日中共同声明)を基礎に行動を!

「問われる長崎平和宣言 防衛力強化への懸念示さず」
78年目の8月を迎えた。6日(ヒロシマ)、9日(ナガサキ)、15日(敗戦の日)。この国の8月の風景は例年と変わらないように見える。だが、注意深く見ると、微妙な変化に気づく。15日が植民地支配と侵略戦争が断罪された「敗戦の日」であるにもかかわらず、一貫して「終戦の日」とごまかし続けることは変わらないが、例年、政府の核、戦争平和政策を鋭く批判してきた長崎平和宣言に微妙な変化が現れたことを知った。テレビで長崎市長が読み上げる平和宣言を聞いていた限りでは、「変化」に気づかなかった。市長以外の知事や首相など政治家のメッセージ(いずれもVTR)が余りにも空疎で誠実のかけらも感じられないひどい内容だったからかもしれない。市長の読む平和宣言は、核抑止論を鋭く批判し、核兵器禁止条約に日本が参加(少なくともオブザーバー参加)すべきことを切実に訴えていた点で、いつものようにまともな宣言と感じたのは私だけではないだろう。
だが、「問われる長崎平和宣言 防衛力強化への懸念示さず」との見出しの新聞記事(8月10日、毎日新聞、「記者の目」)を見て驚いた。記事は『平和祈念式典で鈴木史朗・長崎市長(56)が読み上げた平和宣言は、起草段階では岸田文雄政権が2022年12月に安全保障関連3文書を改定したことに懸念を示すよう求める意見が相次いだが、直接の言及はなかった。起草に関わった人たちの「非戦」の願いが十分に反映された平和宣言だったか、私は疑問を感じている』と、今年の長崎平和宣言の背景を伝えている。私たちの「反核平和」の願いは、現実の政治との激しく厳しい闘いなしには実現しえない。そのことをあらためて思い知った今年の長崎平和宣言であった。

台湾有事で「戦う覚悟」が必要と挑発
政府にとって広島、長崎の原爆忌がもはや眼中にないことを表明するかのように麻生太郎副総裁が8月7~9日、現職の副総裁として初めて国交のない台湾を訪問。それだけでも大問題なのに、8日に台北市内で講演し、台湾有事を念頭に「戦う覚悟」が求められていると、対中戦争に備えるべきとの挑発的な発言をした。
 対中国抑止力を強調し、「今ほど日本、台湾、アメリカをはじめとした有志の国々に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている時代はない」「戦う覚悟だ」「いざとなったら、台湾海峡の安定のために防衛力を使うという明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」などと発言したことが報じられた。
今回の麻生の台湾訪問と大きく踏み込んだ発言はいくつもの重大な問題点を引き起こす。「戦う覚悟」や「いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使う」との一連の発言は自衛隊が中国軍と戦うとの表明であり、中国にとっては事実上の「宣戦布告」と受けとめかねない暴言だ。実際に中国は猛反発しているが、麻生はこれまでも同様の発言を繰り返しており、中国の反発を予測したうえでの悪質な挑発であることは間違いない。
もう一つの重大な問題は、これまでの日中関係や合意がなかったかのように振舞っていることだ。日中の国際関係は1972年の「日中共同声明」「日中平和条約」を基礎に50年にわたって築かれてきた。共同声明等は「一つの中国」の了解、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」、「中華人民共和国が中国の唯一の合法政府」(共同声明)、日中両国が「主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉」(平和条約)が約され、両国が「相互の関係においてすべての紛争を平和的手段により解決し、武力及び武力による威嚇に訴えないこと」(共同声明)と明文化されている。台湾をめぐる麻生や政府の今回の行動、発言は「日中共同声明」等に明らかに違反している。これまで築き上げてきた国際秩序のうえに問題の平和手的解決に向けて行動する、そんな当たり前の役割を要求しよう。
「なぜ防衛費を上げるのですか」。小学6年生が岸田首相へ送った手紙にこう書かれていた(毎日新聞 2023/8/15)。みんなの当たり前の声を当たり前にあげる時だ。

「むすぶ」目次 (2023年6・7月号)2023/07/12 20:16

■ 今月を視る / 交渉、停戦は降参を意味するものではない!
ウクライナでの戦争の停戦を! 世界の行動に合流しよう!
■ 寄稿 / いまこそ加害企業は強制動員被害者との真摯な対話を! 
日鉄裁判を支援する会 中田光信 
■ 沖縄レポート /「平和の礎」24万人名前読み上げ 次世代につなぐ平和の灯
            沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之
■ オピニオン / ウィーン平和サミットの意義を考える    東京 浅井健治                                 
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 『月桃』   印西市 若谷政樹  
■ 読者つうしん /『おもしろかってんよ』と歩まれた飯田しずえさんに学ぶ
        大阪府太子町 湯川 恭
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る (「むすぶ」2023年6・7月号より)2023/07/12 20:14

交渉、停戦は降参を意味するものではない!
ウクライナでの戦争の停戦を! 世界の行動に合流しよう!

武器輸出解禁にストップを
 ウクライナでの戦争を利用して、ここぞとスーパー軍事大国に突き進む日本。直近でも「防衛装備移転」、つまり武器輸出の歯止めが取り払われたかのような動きが強まっている。政府は1967年策定の「武器輸出三原則」を改悪し、2014年「防衛装備移転3原則」に変えた。だが、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5分野に限定という規制を残さざるを得なかった。この規制も障害となり、輸出の実績はほとんど上がっていないという。ここにきて、自民党は「5分野撤廃」を公然と掲げるようになった。
 自民、公明両党のワーキングチーム(WT)は7月5日、「防衛装備移転三原則」とその運用指針の見直しを求めるまとめを出した。日本が英国、イタリアと開発する次期戦闘機を念頭に、国際共同開発・生産した「装備品」について「日本から第三国にも直接移転できるようすべき」や「国際法に違反する侵略や武力行使を受けている国への支援」を輸出の目的に追加し、ウクライナへの武器輸出は推進すべきと声をそろえている。さらに、F15戦闘機の中古エンジンを念頭に、完成装備品に殺傷能力があっても、部品そのものに殺傷性がなければ移転を可能とすべきだとの意見など、武器輸出全面解禁への布石も次々と打たれた。
 すでに、6月7日には、〝死の商人〟でしかない巨大な軍需産業を税金で育て支える〝防衛産業強化法〟、6月14日には、43兆円もの莫大な軍事費を調達するための〝防衛財源確保法〟を成立させた。
悪法は成立したが、その目的を達成するためのプロセスは大きな矛盾をはらむ。市民生活破壊を伴うことは確実であり、実質化を止める闘いは続く。

ウクライナでの戦争継続を求める好戦勢力
 ウクライナ軍の「反転攻勢」が連日ニュースで流される。「徹底抗戦を決めたのは政府ではなく、私たち市民だ」「悪いのはプーチンだけではない。プーチン政権を容認しているロシア人との和解は永遠にない」「戦争を終わらせるのは勝利しかない」とのウクライナ市民の怒りの声。戦争で家族や隣人を失い、傷つき、生活を丸ごと破壊された市民の耐え難い怒りの感情はだれも否定できない。だが、「戦争を終わらせるのは勝利しかない」というのは本当なのかと問いかけること、「これ以上戦争の犠牲者を生まないために、和平や停戦を呼びかけることはウクライナ市民に対する侮辱や背信になるのだろうか。私たちはそうは思わない。「今、停戦をすればロシアを利するだけ」「今の状況で妥協、停戦すればウクライナ市民の正当な権利は永遠に取り戻せない」という意見が、ウクライナ政府だけでなく、世界の反戦勢力の中にも存在していることも知っている。それでも、私たちはこれ以上の犠牲を止めるために「今すぐ停戦」を求め、自国政府に停戦に向けた外交交渉を行うよう求める行動を支持する。軍事的勝利ではなく、国際連帯のもと非武装の闘いでウクライナの人々の人権、正義を取り戻すことは「空論」などではない。
他方、米国政府はウクライナ軍の「反転攻勢」支援のために、イラク戦争で使用した非人道的な兵器クラスター爆弾を供与すると決定した。この米国の決定に、NATO諸国からも批判の声があがっているにもかかわらず、日本政府が何らの反応も示さないのはなぜか。クラスター爆弾は、オスロ条約(2010年発効)で製造や使用が禁じられている(米国、ロシア、イスラエルなどの戦争国家以外、日本も含めほとんどの国が署名、批准している)。国際法違反の米国のこの決定を黙認する理由は一つしかない。戦争の継続を望むからだ。それが自国の利益につながるからだ。覇権の確保や武器売買でのぼろ儲けができるからだ。
こんな泥沼からのオルタナティブを示す世界の動きが始まっている。「ウクライナに平和を国際サミット」(6月10~11日、オーストリア・ウィーン)で、宣言「今こそ停戦と交渉を! 9/30~10/8グローバル行動週間へ」が採択された。合流へ全国各地域での具体化が課題だ。

「むすぶ」目次 (2023年5月号)2023/05/22 12:47

■ 今月を視る / 世界が共有しなければならないのは
「人権と平和」を最優先する価値観だ!
■ 沖縄レポート / 日本復帰51年 78年前の地獄の沖縄戦を二度と繰り返すな
5.21平和集会に2100人  沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之                                   
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 『喜瀬武原』   印西市 若谷政樹
■ 図書あんない / 『反戦川柳人 鶴淋の獄死』 佐高 信 著  堺市 松永直子  
■ 読者つうしん / 広島サミットを問う 核抑止ではなく核廃絶を!  
ZENKO・広島 日南田 成志 
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る (「むすぶ」2023年5月号より)2023/05/22 12:42

世界が共有しなければならないのは
「人権と平和」を最優先する価値観だ!

G7サミット・広島の真の課題
無内容な「自由や民主主義」といった価値観ではなく、「人権と平和」を最優先する価値観を世界は共有しなければならない。
広島でのG7サミット(主要7カ国首脳会議)が5月19日~21日の日程で行われた。日本の岸田首相の単なるパフォーマンスではなく、広島で行うこのG7サミットを真に意義あるものにするための課題と議題は極めて明確だ。
重要な課題の一つは、核抑止力の強化ではなく、核軍縮、核廃絶である。だが、主要7カ国のうち米国をはじめ3カ国は核保有国、他の4カ国は米国の「核の傘」に入っている。ロシアがウクライナ戦争で核兵器の使用をちらつかせ、核戦争の脅威が高まる中、バイデン大統領や岸田首相はG7国の結束を強調するが、「結束」の内実は「核抑止力の強化」でしかなく、核軍縮の展望や道筋は何一つ示さない。今回に比して、昨年11月にインドネシア・バリで開かれたロシアや中国もメンバーとするG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)は「核兵器の使用・威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取り組み、外交、外交・対話が極めて重要だ。今日の時代は戦争の時代であってはならない」と宣言している。妥協の産物で不充分とはいえ、メンバーとしてロシア、中国も宣言に一定の責任を負い、拘束されるという点だけも一歩前進である。そもそもG7が敵対勢力とし、もう一つの核兵器保有国であるロシアや中国を排除して、どのような「話し合い」も「合意」も生まれないことは明らかだ。そのことを承知の上で、広島・G7サミットで核軍縮をアピールするというなら、G7サミット側による一方的な軍縮措置が必要だ。岸田首相のリードによる「新たな核軍縮提案」として大々的に宣伝されるG7「広島ビジョン」は、G7核保有国の核戦力はそのままに、中国に「核戦力データーを公表せよ」と迫り、それに応じるはずのない中国を悪者に仕立てるだけのプロパガンダに過ぎない。もはやG7であろうが、ロシア、中國であろうが、「核抑止力」にしがみつく勢力に自ら核軍縮へ進む意思も能力もないことは明らかだ。テレビの報道番組でサミットを前に平和資料館を見学した「核開発疑惑」のある国の市民へのインタビューで「自国政府の核政策をどう思うのか」を問われたその外国市民が「政府と市民は違う」と明確に答えた、その答えの中にこそ核廃絶への道筋が明確に見えている。世界の市民の意思が結実したものが核兵器禁止条約に他ならない。核兵器禁止条約に一言も触れずスルーしてしまうG7サミットではなく、世界の市民の意思である核兵器禁止条約に向き合うようサミット以後も声を高めることが重要だ。

今すぐ停戦を! ウクライナに平和を!
 もう一つの重要な課題は、ウクライナでの戦争を直ちに停戦させることだ。「ウクライナに平和を」を「ウクライナに勝利を」にすり替えさせてはいけない。「交渉というのは降参するという意味ではありません」(停戦を求めるドイツの「平和宣言」)。「外交を通じてロシア・ウクライナ戦争を迅速に終わらせるために全力を行使するよう要請します(米知識人のニューヨーク・タイムスへの意見広告)。『なぜ「ロシアの撤退」ではなく「停戦」なのか。「停戦」というとウクライナの人たちが傷つくのではないか。それでも犠牲を最小限にするには停戦しかない』『停戦とは悲劇的な終戦を迎えないための方策です』(伊勢崎賢治)。
だが、G7サミットは、「ウクライナへの強力な支援」と「対ロ制裁のレベルアップ」しか言わなかった。これでは対露中「戦争サミット」という他ない。ウクライナからゼレンスキー大統領を呼び寄せ、さらなる軍事支援を求めさせるという演出も用意した。一方で、防衛省はウクライナの負傷兵2人を自衛隊中央病院に受け入れ、治療するとサミット前日の18日、発表し、ウクライナ戦争への参加に腐心した。核兵器禁止条約をスルーし、停戦の「て」の字も出さないサミット会合など、広島を侮辱する行為である。そのことを各国の市民が自国政府に問いただし、核廃絶、ウクライナでの戦争の停戦実現、気候変動危機への抜本的対処などを求める具体的な行動が一層重要となっている。
 世界では即時停戦を求める声が高まっている。日本でも「2023年5月広島に集まるG7指導者におくる日本市民の宣言」の署名(次ページ参照)が継続する。今こそ声を高めよう。

「むすぶ」目次 (2023年4月号)2023/04/27 13:34

■ 今月を視る / ウクライナに平和を! 直ちに停戦を!
東アジアに対話を! 台湾をめぐる米中戦争は起こさせない!
■ 報告 / 8年ぶりのアフガニスタン訪問   RAWAと連帯する会 桐生佳子
■ 沖縄レポート / 戦争準備ではなく平和外交めざす玉城デニー沖縄県政
           沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之
■ Q&A <NO.133> / 今、南西諸島の軍事化を止める確かな力を!                                   
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌『遥かな道に』  印西市 若谷政樹
■ 読者つうしん / 無理なく、楽しく、ボチボチと 
大阪狭山市議選挙に加わって 大阪府太子町 湯川 恭   
■ Information & Editorial Peace Note