今月を視る(「むすぶ」2020年6月号より)2020/06/26 17:15

「イージス・アショア」配備「停止」を機に
東アジアの新たな軍縮秩序を築く闘いを!

基地建設は断念させることができる
 6月15日、河野防衛相が秋田、山口両県への陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備計画について「プロセスの停止」を表明した。河野防衛相は、「停止」の理由について、発射後ミサイルから切り離されるブースターをコントロールして落下させることができない技術的欠陥をあげ、この改修にさらに多額の費用と期間が必要なことから、「配備は合理的ではないと判断した」とした。だが、このような初歩的欠陥は最初から分かっていたはずで、政府にとって、「停止」判断に至る動機の一つは、「イージス・アショア」ではINF(米ロ中距離核戦力廃棄条約)失効(2019年8月2日)後の米中ロを中心とした世界的なミサイル・核軍拡競争に対応できず、「無用の長物」となることが明らかになっていることだ。しかし、このような政府や軍拡推進勢力の思惑が政府の「停止」判断に導いた最大の要因ではない。決定的な要因は、地元住民の揺るぐことのなかった反対の意志と粘り強い闘いであった。配備先とされた新屋演習場の秋田市とむつみ演習場の萩市・阿武町では自治体ぐるみで政府・防衛省のでたらめ計画を追及し、「プロセスの停止」に追い込んだのである。
 奇しくも、今年は「大阪・能勢ナイキ基地建設」計画が打ち出されて50年にあたる。能勢ナイキ基地建設反対闘争は、地元住民を先頭に、周辺自治体や労働組合を巻き込んだ幅広く、粘り強い7年間の
闘いの末に建設計画を断念させ、勝利した。1973年には、「長沼自衛隊違憲判決」も勝ちとられた。今回の「イージス・アショア」配備の「停止」は、「能勢の教訓」である「基地建設は断念させることができる」を見事に証明したのである。

辺野古新基地建設はもっと「合理的ではない」
一方、工事関係者の新型コロナウイルス感染で中断していた辺野古新基地建設工事が6月12日に再
開が強行された。県議選からわずか5日後の暴挙である。そもそも辺野古新基地建設はすべての面で不
合理である。まず、中国のミサイル射程内にある沖縄での米海兵隊基地新設は、軍事的に疑問視されて
いる。さらに辺野古海域には軟弱地盤が広がり、技術的にも不可能である。費用も期間も「イージス・
アショア」の比ではないほど膨大だ。そして、何より沖縄の民意は「新基地建設反対」である。「イー
ジス・アショア」に続いて辺野古新基地建設は断念しなければならないし、断念させることはできる。               

政府の「ミサイル防衛」再構築に抗し、軍縮を対置するとき
 政府は「ミサイル防衛」強化を断念したわけではない。中国を主要なターゲットにした「ミサイル防衛」体制構築・強化が政府の戦略である。この間、新たに設置・建設された京丹後・Xバンドレーダー基地や「南西諸島防衛線」―奄美~宮古~石垣をつらねるミサイル基地群はこの戦略に位置づいている。
一旦はつまずいたものの、「ただでは転ばぬ」政府・防衛省が早速動き始めている。「安保の空白は避けなければならない」を口実に、「敵基地攻撃能力」の保有に乗り出した。「迎撃ミサイルがダメなら」「敵が発射する前に、敵基地を叩く」というわけだ。政府の計画は、「国家安全保障戦略」(2013年策定)を改定し、「敵基地攻撃能力」の保有を可能にするというもの。もはや「専守防衛」などどこにもない。憲法を根底から覆す「構想」だ。もともと秋田と山口の「イージス・アショア」は、いつでも「先制攻撃用中距離ミサイル基地」に変更が可能なものだった。すでに「イージス・アショア」に代わる攻撃用ミサイルシステムが候補として挙がっている。敵の射程圏外から発射できる「スタンド・オフ・ミサイル」や地対地「高速滑空弾」などの射程が長いミサイルだ。これらを導入しようと動き出した。

昨年8月2日、米トランプ政権の一方的な離脱によってINF(米ロ中距離核戦力廃棄条約)が失効した。米国は直ちに新たな中距離ミサイルの開発に着手し、アジア・太平洋に中距離ミサイルを再配備する動きも強まっている。在日米軍基地、自衛隊基地はその有力な候補地であり、INF失効後の新たな核軍拡競争の真っ只中に入ろうとしている。新たなミサイル配備を阻止し、辺野古新基地建設を許さない闘いは、核軍拡競争に抗し、東アジアに緊張緩和と新たな軍縮秩序を築く極めて重要な闘いである。

「むすぶ」目次(2020年」5月号)2020/05/27 15:56

■ 今月を視る/ 軍事費削って、「コロナ対策」に予算回せ
世界共通の言葉と要求で今こそ世界を軍縮へ導こう! 
■ 報告/ 2019年以降の「むすぶ会」活動をふりかえって  事務局 豆多敏紀
■ Q & A <NO,108>/ 防衛省 イージス・アショアの「新屋配備」を断念
           政府は計画自体の白紙撤回をすべきだ (その2)
■ Book Corner/「森アッパの日本語・朝鮮語比較論」 耕文社 医問研 森國悦
■ 読者つうしん/ 松井市長、あなたはどこまでの風景を見て
          「コロナ専門病院化」発言をしたのか 堺市 石黒和代
■ おしらせ & 編集後記

今月を視る(「むすぶ」2020年5月号より)2020/05/27 15:55

軍事費削って、「コロナ対策」に予算回せ
世界共通の言葉と要求で今こそ世界を軍縮へ導こう!

軍事費削減し、緊急災害支援金の財源を捻出した韓国政府
 軍備増強を続けながら、市民のくらしといのちを守ることなどできない。韓国政府は7兆6千億ウォン(約6700億円)規模の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急災害支援金(全世帯に支給)の財源を用意するために、今年の国防予算50兆2千億ウォン(約4兆4000億円)から、9897億ウォン(約850億円)を削減することを決めた。4月16日に国会に提出した第2次補正予算によって明らかになった。F35A戦闘機や海上作戦ヘリなど外国製武器の購買予算の中から、契約や試験運営が遅延している事業の支出を主に減らす方針だという。F35A戦闘機3000億ウォン、海上作戦ヘリコプター2000億ウォン、広開土3イージス艦事業1000億ウォンなど。軍施設と鉄道投資事業も先送りや削減で資金を節約するという。莫大な軍事費からすれば850億円は約2%程度で、しかも来年への「先送り」だが、世界でこうした措置に踏み切るのは、今のところ韓国政府だけである。この措置を韓国の「緊急的例外措置」にとどまらせず、世界の共通する要求として広げることが今極めて重要だ。
韓国政府の動きの背後に市民の声がある。ロウソク革命で大きな役割を果たした韓国最大の市民運動団体・参与連帯は4月8日、「増え続ける国防費を大幅に削減し、新型コロナウイルスの被害克服のために投入すること」を求める声明を発表している。声明は、新型コロナウイルスの世界的拡散という歴史的な事件を前に、「緊急的例外措置」にとどまることなく、「国家の安全保障」と「人間の安全保障」の関係を見直すという世界的で根本的な問題提起をする。さらに「攻撃用」兵器を買うための予算を削減するよう求める。その額は16兆6804億ウォン(約1兆4900億円)である。

世界を軍縮へと導く新たな機会-日本で具体的要求を
「軍事費削って暮らしに」は私たちの一貫した主張だが、残念ながらこれまではキャンペーンの域を超えることはなかった。だが、今こそ、「軍事費削って暮らしに」の要求を具体化し、突き出す時だ。
 辺野古新基地建設の総額2兆5千億円(沖縄県試算)。イージスアショア2基で総額1兆円。F35は147機で6.2兆円。オスプレイ、グローバルホーク、さらに南西諸島への自衛隊基地建設。これらの全てが文字通り〝不要不急〟であるだけでなく、壮大な無駄遣いである。
 「軍事費削って、コロナ対策に」、世界共通の言葉と要求が今リアリティーを持つ。「コロナ禍」の先、世界を軍縮へと導く新たな機会とすることが必要だ。

辺野古新基地建設は撤回を!
玉城デニー沖縄県知事も5月20日、県内外にLINEやTwitterでこう呼びかけた。「現在、コロナ感染で窮地にある県民の生活が第一です!そのような現状の中、本当に今、莫大な予算をかけた辺野古新基地の建設が必要でしょうか? この予算で今、助けるべきは県民の命を守る医療の現場、そして県民の暮らしを守るべき生活の補償ではないでしょうか?」
 続けて「5月19日、世論の強い批判を受けて政府は検察庁法改正案を撤回。総理は『国民の理解なしに進められない』とコメントされたとも。2兆5千億の予算、護岸崩落の恐れがある軟弱地盤、多くの希少種が生息し環境省が重要海域に指定する『辺野古新基地建設埋めたて工事』も国民・県民の理解は得られない。撤回を!」

安倍内閣の支持率は、ついに27%まで落ち込んだ(毎日新聞5/24)。市民のくらしといのちを守るのではなく軍事大国に固執し、「コロナ場泥棒」の所業で乗り切ろうとあがく政府への怒りだ。平和で持続可能な社会へ、率先した軍事費削減を政府に求め、世界を軍縮へと導くよう訴えるときだ。

「むすぶ」目次(2020年3月号)2020/03/20 21:08

■ 今月を視る/ 自粛強要はねのけ、「改憲実験」許さず
国内外ですすむ核・軍拡競争に反対の声と行動を! 
■ 寄稿/ 本部町健堅、彦山丸犠牲者遺骨発掘を終えて   沖縄県 沖本富貴子
■ Q & A <NO,106>/ 東日本大震災・東電福島原発事故から9年
                    今、何が問われているのか
■ Book Corner/「華僑二世徐翆珍的在日」徐 翆珍 著  事務局 湯川 恭
■ 読者つうしん/ ふるさと沖縄離れ、在京都・宇治43年 今、辺野古に行く理由 
宇治市 中川清子
■ おしらせ & 編集後記

今月を視る(「むすぶ」2020年3月号より)2020/03/20 21:06

 自粛強要はねのけ、「改憲実験」許さず
 国内外ですすむ核・軍拡競争に反対の声と行動を!

どさくさ紛れの「改憲実験」
「新型コロナウイルス問題」一色の状況が続く。3月13日には「非常事態宣言」が最大の狙いである「新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案」がいとも簡単に成立させられた。どさくさ紛れの「改憲実験」に他ならず、次々と打ち出される強権措置の頂点である。この「特措法」の法的、政治的問題点以上に危惧されるのは、共産党とれいわを除く野党の振舞いである。改正や新法に根拠がなく、「非常事態宣言」にあたっては国会の事前承認を要求していたにもかかわらず、何の歯止めにもならない国会への「事前報告」であっさりと手を打ち、賛成に回ったことだ。情けないことに、これらの党で、明確に反対票を投じたのは、立憲の山尾、無所属の寺田議員のたった二人にすぎなかった。「挙国一致」体制を思わせる気味悪さである。
メディアは、安倍首相が会見で『現状は「非常事態宣言」を出す状況にはない』、『慎重姿勢を貫く』との発言に「安心」を植え付けようとするが、すでにいくつかの地域で、「非常事態」を先取りするような動きが現れている。大阪豊中市では、「森友学園問題追及!4年目集会」が当初使用許可の出ていた市中央公民館が臨時閉館となり、公園での集会に切り替えたところ、一旦使用承諾されていたにもかかわらず、使用承認が取り消されるという事態に至っている。これは、全く根拠を欠いた学校一斉休業と同様、社会的、政治的活動を自粛させようとする不当な措置である。今必要なことは、このような政府の根拠のない自粛強要に従うことではなく、自治体が科学的根拠に基づいて市民の基本的人権を尊重し、健康を守る医療体制と予算を確保するよう要求することである。自粛強要は許してはならず、大事なことは、科学的根拠に基づいて市民の自主的判断と自発的行動を確保することである。

感染スピード上回る軍拡競争
 新型コロナウイルス感染が世界に広がる中、その陰に隠れてウイルス感染を上回るスピードで軍拡競争がすすめられている。コロナウイルス問題で唯一の「不幸中の幸い」といえるのは米韓合同演習の延期(事実上の中止。2月27日発表)ぐらいだが、それ以外では、国内外を問わず、「自粛」どころか以前にも増して活発な軍備強化が展開されている。
沖縄・辺野古では90㍍地点の軟弱地盤を示すデータを無視し、「追加の調査をする必要がない」と居直り、新基地建設工事作業を中断なく続行。米軍は演習など全国各地で住民生活への影響を無視、地元との「約束」に違反して傍若無人な活動を強行している。
 自衛隊は、日本版海兵隊といわれる陸上自衛隊の水陸機動団と米軍との共同訓練を米軍の演習場「金武ブルー・ビーチ訓練場」(沖縄県)で実施(1月25日~2月13日)。水陸機働団の沖縄での訓練は初めて。住民自治破壊の中山石垣市政を利用した南西諸島での自衛隊ミサイル基地建設強行と合わせ、沖縄・南西諸島全域での対中国軍事拠点化が急ピッチですすめられている。
 一方、世界では、米露中などの新たな核軍拡競争が再燃しつつある。米国の一方的な離脱を契機に昨年8月、中距離核戦力(INF)全廃条約が失効し、唯一残る新戦略兵器削減条約(新START)も、期限切れまで1年を切った。4月下旬には核拡散防止条約(NPT)再検討会議の開催が予定されているが、「コロナウイルス感染拡大の影響」を理由(口実)に来年3月への延期が調整されているとの報道が出ている。こうした中、米国は「使いやすい核兵器」とされる小型核を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を配備するなど、軍拡に拍車をかけている。トランプ政権は、ロシアが保有する小型核や中国が条約に入っていないことなど核削減条約の不備を指摘し、これを口実に条約離脱を合理化しているがこれはとんでもない欺瞞だ。いずれにせよ、米露中のボスたちに交渉を任せていては何も進まない。新型コロナウイルスはいずれコントロールできるかもしれないが、核戦争による汚染と破壊は、コントロール不可能である。
世界の人々とともに、核軍拡を止め、核軍縮に誠実に取り組むよう迫る行動に「待った」はない。

「むすぶ」目次(2020年2月号)2020/02/21 18:41

■ 今月を視る/ 米大統領選をめぐる米社会の変容に注目!
世界的視点で平和・軍縮を推し進めよう! 
■ 解説/ 強制動員問題解決に向け「協議体」創設を呼びかけ  共同行動 矢野秀喜
■ Q & A <NO,105>/「1月17日」-阪神大震災25年 伊方原発運転差し止め
■ 映像案内/ 韓国映画「弁護人」「タクシー運転手」「1987」 事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん/『3・11』10年目 命守る大きな運動へ! 
ZENKO関電前プロジェクト 安井賢二
■ 2019年度会計報告 & おしらせ

今月を視る(「むすぶ」2020年2月号より)2020/02/21 18:40

米大統領選をめぐる米社会の変容に注目!
世界的視点で平和・軍縮を推し進めよう!

国会予算委員会のテレビ中継なし
「桜」夕食会の無記名領収書-首相反論、ホテルが否定、景気腰折れの懸念-GDP落ち込み政府「想像以上」。18日朝日新聞朝刊見出しが躍った。しかし、予算委員会のテレビ中継はなし。公共放送であるべきNHKの報道姿勢はいっそう酷いものになっている。

社会主義者が米大統領候補に
一方、米大統領候補・民主党予備選。バーニー・サンダースは、初旬のアイオワ州の党員集会では、ブティジェッジと僅か0.1ポイント差の次点であったが、続くニューハンプシャー州ではトップ。緒戦の勝利を宣言した。「週刊MDS」1613号を引用すると、「労働者階級の有権者は、バーニー・サンダースが推し進めている大胆な民主主義的社会主義の展望を受け入れる準備ができていることを示した。我々はメディケア・フォー・オールとグリーン・ニューディール、大量投獄の終了、移民の正義を求める。戦争はもうたくさんだ。」
日米両国のメディアにおいても、ブティジェッジの若さ(38歳)が強調されてはいる。しかし、ここまでのバーニー・サンダース(78歳)の勝利の要因が、その革新的政策・公約にあることは明らかだ。若い世代、働くものたちが、その政策、方向に共鳴し、ともに闘った緒戦の勝利なのである。
次の山場3月3日「スーパーチューズデー」を、期待と希望を持って注視しよう。

終末時計はあと1分40秒
 米科学誌Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)は、1月末、核兵器と気候危機による世界滅亡まで「終末時計(残り時間)」が過去最短の1分40秒に至ったと発表した(1962年キューバ危機の際、それは2分前を指していた)。その要因の一つが、中東・イラン核危機であることは言うまでもない。あらためて振り返っておこう。2018年、トランプは一方的にINF全廃条約から離脱を表明し、昨年2月に破棄通告、6カ月後の8月に同条約は失効した。現状では、保持すれど使用できない中距離核戦力(INF)に代わり、「使いやすい核兵器」の開発、装備に注力するためである。米国防総省は2018年2月には核体制見直し(NPR)報告で、「小型」核兵器新規配備を公表していた。「小さい」とは言え問題の核兵器「W76-2」は、広島型原爆以下ではあるがその爆発力は5~6キロトンと推定されている。そしてその「使える核」は、イランを標的に戦略原潜に配備されている。
このように視てくると、現代世界の危機は「アメリカ・ファースト」に発し、「トランプ・ファースト」につながり、大統領再選に帰着する、といっても過言ではない。トランプの言動は、ラストベルト地帯、農業生産地域、キリスト教福音派といった票田確保に規定されている。こんな事態を許してはならない。

核兵器禁止条約批准を日本政府に
 「小康状態」とは言われているが、イラン中東危機の構造は基本的に変っていない。平和・軍縮を希求する世界の人々とともに、ヒロシマ・ナガサキ被爆75周年の今年、あらためて核兵器禁止条約の批准を日本政府に迫ろう。

 安倍内閣支持が急降下し、不支持が上回った(2月15、16日実施の共同通信社世論調査)。安倍内閣支持41%に対し不支持は46.1%になった。「朝日」(2月18日)によれば、新型コロナウイルスを巡る政府対応に「評価しない」が50%で「する」の34%を上回り、「桜」では安倍の国会説明に「納得できない」が71%で「できる」が12%とされ、IR国内設置に「デメリットが大きい」が56%、「メリット」が30%、加えて従来の「緩やかに回復」との景気判断を修正(新言語による言い逃れ)せざる得ないほどに追い込まれているのである。
「若い世代」が未来像として資本主義より社会主義を希求との世論調査に象徴されるアメリカ社会の変容の中、私たちは「サンダース運動」に連帯し、またアジア民衆と連帯し、地域を変え、安倍を後景に追いやろう。

今月を視る(「むすぶ」2020年1月号より)2020/01/27 19:54

世界を戦争の危機に投げ込む米トランプ政権
戦争の火種つくる駐留米軍は直ちにひきあげを!

イラン司令官爆殺の暴挙・犯罪
 1月3日、米軍がイラン軍司令官などを、イラクで移動中に、「自慢」の無人攻撃機(ドローン)を使って爆殺した。米政府は、「イラン司令官は米軍や米国人への攻撃を計画、指揮していた」「司令官抹殺は、米国民の命を守る正当な行動」「戦争を止めるためのものだった」とこの暗殺を正当化しているが、イラク戦争開戦と同様に、「イランの米国人攻撃計画」の詳細や証拠を何も示していない。仮に、「証拠」がある」としても、このような米軍による暗殺行為は私的処刑=リンチ殺人であり、国際法はもちろん米国内法にも違反する犯罪行為である。このような他国要人の暗殺は、国際法違反の宣戦布告、先制攻撃を意味し、全面戦争も視野に入れた重大な挑発行為である。この結果、イランが「体裁を保つ」ためだけとはいえ、イラクの米軍基地への短距離ミサイルによる報復攻撃に踏み切り、米国による再報復を恐れたイラン軍がテヘラン空港から出発したウクライナの民間機を米軍の巡航ミサイルと誤認し、撃墜したことで、自国民を含め何の責任も落ち度もない176人もの乗員、乗客の命を奪うという大惨事を引き起こした。「誤爆」したというイランの責任は重大だが、こうした惨事を含め数百万人もの命を奪いさる「全面戦争をも辞せず」とした米、イランよるこの間の一連の挑発、先制攻撃、報復行為は明らかに戦争犯罪として糾弾されなければならない。
 イランの攻撃で米国人に死者が出なかったことからトランプ大統領が声明で「軍事的な報復はしない」と表明したこと、また、イランが「誤爆」を認めたことで事態のエスカレートは一旦止まっているかに見える。だが、米国はより強い新たな経済制裁で圧力をかけ続けると公言しており、戦争の危機が解消される保証はどこにもない。

米国が誤りを認め、まず謝罪すること
 事態のエスカレートに歯止めをかけ、報復の応酬を止め、戦争の危機解消に向かうために、米国、イラン双方に「自制」を求めるのは当然だが、それだけでは全く不十分である。今回の危機を招いた根本的な事態は、米トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開させたことにある。この上に、イラン要人を暗殺したこと、しかも、イラク政府の同意なしに、イラクの領土(バグダット)で爆殺を強行したことは、イラクの主権を侵害する国際法違反のテロ行為に他ならない。にもかかわらず、国連などの国際機関や米国の同盟国が米国の無法な一連の行為に対して、明解に批判していないことが今日の危機を招いたといっても過言ではない。したがって、事態の根本的解決には、国際社会が米国に誤りを認めさせ、謝罪させることが必要だ。そのために、世界中で「中東での新たな戦争は許さない」の声と行動を集中することが求められている。

安倍の中東訪問と自衛隊派兵は有害
 こうした中、日本政府は、「中東の緊張緩和と自衛隊派兵への理解を求める」と称して中東3カ国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン)歴訪と自衛隊派兵の第1陣としてP3C対潜哨戒機の部隊派遣を強行した。だが、訪問する3ヵ国は、いずれも米国の協力関係にある独裁国であり、米国とイランの緊張関係に影響を与えられる国ではない。中東の緊張緩和は付け足しにすぎず、ほとんど支持のない海上自衛隊の中東派遣への容認態度を取り付けることが唯一の目的であることは明らかだ。

世界の駐留米軍と派兵のための軍事基地は平和の脅威
 自衛隊のP3C哨戒機部隊は那覇航空基地から出発した。沖縄の米軍基地から中東に派遣されるケースは珍しくない。この駐留米軍があり、沖縄の自衛隊基地から中東に自衛隊が派兵される限という事実は、今日の中東での戦争と危機に対し、日本にも少なくない責任がある。世界の戦争に直結する駐留米軍は直ちにひきあげ、海外派兵のための自衛隊基地もいらないの声を大にして行動しよう。

「むすぶ」目次(2019年11・12月号)2019/12/05 17:45

■ 今月を視る/ GSOMIA破棄は実現しなかったが・・・・
「朝鮮半島平和プロセス」を開く闘いは続く! 
■ 寄稿/ アフガニスタンからサラさんがやって来た RAWAと連帯する会 桐生佳子 
■ Q & A/ 東電・原発事故「無罪判決」と関電・原発マネー「不正還流」
■ Book Corner/『パンプキン! 模擬原爆の夏』 令丈ヒロ子 作  堺市 石黒一郎                         
■ 読者つうしん/ 骨裁判を傍聴して 心ゆさぶる意見陳述 大阪府・太子町 湯川 恭
■ おしらせ & 編集後記

今月を視る(「むすぶ」2019年11・12月号より)2019/12/05 17:44

GSOMIA破棄は実現しなかったが…
  「朝鮮半島平和プロセス」を開く闘いは続く!

“ローソク市民”が切り開いた地平に立って
11月22日、韓国政府は「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄を凍結する」ことを失効寸前になって日本政府に通告した。韓国政府は「1年延長ではなく、破棄はいつでもできる」と強調しているが、GSOMIAの破棄が実現しなかったのは東アジアの平和を希求する人々にとって極めて残念なことである。日本のメディアが宣伝する「日韓の安全保障にとって不可欠な協定」とは全く逆にGSOMIAは朝鮮半島のみならず東アジアの平和と安全にとって百害あって一利なしの存在だからである。そもそも日本と韓国のGSOMIAは韓国の進歩勢力や市民が一貫して反対してきたものであり、執拗で威圧的な日米の圧力を背景に朴槿恵政権が妥協して2016年11月に強行成立させた協定である。
現在の韓国世論調査でも51%が破棄を支持し、破棄に反対はわずか28%という民意とかけ離れた軍事協定である。したがって、GSOMIAの破棄、失効は朝鮮半島と東アジアの平和の危機などではなく、平和を築く新たなチャンスであった。米国や日本の介入の余地を極力減らし、朝鮮半島平和プロセスをすすめるうえでGSOMIAは不要であるだけでなく、障害である。本質的には緊張関係を持続させたい日米の勢力がGSOMIAの破棄、失効に強い危機感を持ち、韓国政府に強烈な圧力をかけたことは疑いない。とくに米上院の決議は韓国政府の強い姿勢を怯ませることに効果的となった。
 文在寅政権が米国の圧力を跳ね返すことができず、朝鮮半島平和プロセスが困難につきあたらざるを得ない状況にどう立ち向かうか。被害者の人権回復を軸にした「元徴用工問題」の解決など日本の植民地支配責任の清算を求める闘いと朝鮮半島の非核化、東アジアの平和構築の闘いは一体である。“ローソク市民”の闘いが切り開いたこの地平に立ち、後退することなく、日韓市民の声をよりいっそう強め広げよう。それが文在寅政権に米国や日本の不当な圧力に立ち向かわせる唯一の力となる。

沖縄と朝鮮半島の闘いは一体
 もし、日韓のGSOMIA破棄が実現していれば、在韓米軍や在日、在沖米軍にも少なからぬ影響が及んだと思われる。今回、それは叶わなかったがそれぞれの地での闘いは続く。沖縄では、県の埋め立て承認の撤回を、取り消した国土交通相の裁決は違法だとして、県が国を相手に裁決取り消しを求める「抗告訴訟」の第1回口頭弁論が11月26日、那覇地裁で始まった。司法の独立がほとんど失われたとはいえ、辺野古現地での埋め立て阻止行動と合わせ、あきらめない闘いの重要性は一段と増している。韓国では、被害者の戦後補償を求める持続した闘いが韓国司法を動かし、大法院の画期的な判決を引き出したことを忘れてはならない。
 
石垣では自治基本条例廃止の動き 
 沖縄・南西諸島での自衛隊ミサイル基地建設強行に対する闘いも力強く展開されている。宮古島では
山城博治沖縄平和運動センター議長も参加し、連日工事強行に抗議し、阻止の座り込みが取り組まれている。
 石垣市では陸上自衛隊配備計画に対し、市住民投票を求める会が昨年12月、有権者の約4割に当たる署名を集め、基本条例を根拠として住民投票の実施を市に直接請求した。市議会は今年2月、市提案の住民投票条例案を否決したが、求める会が市を提訴し係争中となっている。
 石垣市の自治基本条例は2010年、県内で初めて石垣市で施行された。条例には住民投票に関する規定があり、有権者の4分の1以上の連署で市長に住民投票の実施を請求できるとしている。請求があったとき、市長は「所定の手続を経て、住民投票を実施しなければならない」とも明記している。
 今や、安倍応援団と化した中山市長と市議会与党は、住民投票を何としても阻止するために、自治体の憲法ともいうべき自治基本条例を「廃止すべき」とまで言い出したのだ。
 基地推進・容認勢力がいかに民主主義の実現や民意の尊重に恐怖しているかがよくわかる事態だ。
韓国、沖縄、宮古、石垣で力強くすすめられる闘いに注目し、この闘いを自分の住む地域に知らせることから始めよう。それが連帯の第一歩となる。