今月を視る(「むすぶ」2020年7・8月号より)2020/08/06 15:38

「終末時計」は「あと100秒」と史上最悪を更新
核・軍拡競争にNO! 核・軍縮への転換が最大課題

被爆75年の緊急課題
コロナ禍が続く中、被爆75年の熱い「ヒロシマ」・「ナガサキ」が巡ってくる。今年は例年と異なり、平和祈念式典含め原水禁大会、国際会議等のほとんどがオンライン方式で行われる。大会等の形態は大きく変わるが、反核平和運動が直面する課題は不変である。それどころか、緊急に解決しなければならない課題が山積している。
2020年の今年、米科学誌「原子力科学者会報」の「終末時計」(核戦争などで地球の終末が訪れる残り時間を示す)が、「あと100秒」と史上最悪を更新した。冷戦終結後の1991年には「17分前」を示していたが、米国のINF(中距離核戦力)全廃条約脱退によるINF全廃条約失効などが原因で核兵器の削減や緊張緩和は待ったなしの状況となった。
米トランプ政権の暴走にストップを
このような最悪の事態に至った責任は米トランプ政権にあることは明らかだ。トランプ政権は、新たな地球温暖化対策であるパリ協定、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、イランとの核合意などからの離脱を次々と強行し、昨年には旧ソ連と1987年に結んだ中距離核戦力(INF)全廃条約から離脱、今年5月には締約国が互いに上空から査察できる「オープンスカイズ(領空開放)」条約からの離脱方針を表明した。さらに2011年2月5日に発効した大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略核兵器の保有数や配備数を制限する新戦略兵器削減条約(新START)をめぐる米ロ交渉でも延長(5年)しない方向で様々な「難題」を持ち出している(期限は来年2月)。
トランプ米政権は「中国も入れた3カ国の条約にすべきだ」とか現在は条約に含まれていない戦術核兵器も対象に加えるべきだとか一見一理ありそうな主張で交渉を難航させているが、中国が受け入れるはずがないことを見越した主張だ。そもそも、新STARTはICBMなどの戦略核兵器の弾頭数を、以前の条約で定めた6000発ずつから1550発ずつへと大幅に削減することに合意したほか、核弾頭を運搬するミサイルや戦略爆撃機などの保有数や配備数にも上限を設けたが、現状の実態は、今年1月時点で米国は5800発、ロシアは6375発の核兵器を保有する(ストックホルム国際平和研究所)など、ほとんど削減が実行されていない中、近年、増大させているとはいえ、その数約320発と米露の20分の1にとどまっている中国を削減交渉の対等の当事者として入れるなど到底無理な主張である。米トランプ政権の本当の狙いは、米国の核保有の自由を奪う条約をこの際、破棄したいというところにあるのは間違いない。
今年4月にニューヨークで開催予定だったNPT(核拡散防止条約)再検討会議は、新型コロナウイルス感染症の拡大で延期(来年4月までに開催)になったが、核軍縮、不拡散の重要会議であるにもかかわらず、事前協議では、核保有国と日本政府を含む「同盟国」のサボタージュによって合意事項はほとんど作れていない。
核兵器禁止条約への参加を要求しよう
この流れは、新たな核・軍拡競争を生むことは必至であり、直ちにストップをかけなければならない。
トランプの大統領再選阻止はもちろんだが、まず新STARTの5年延長に合意させることは緊急課題だ。そして、条約発効に必要な批准国数50まで残り11カ国となった「核兵器禁止条約」の批准国をさらに広め、未だ被爆国の責任を果たさない日本政府を含め核保有国とその同盟国に条約への参加を求める運動を強めることが何より求められている。
辺野古新基地建設―設計変更に国内外から不承認の声を
 東アジアに軍縮秩序をうちたてるために辺野古新基地建設阻止は特別に重要だ。沖縄防衛局はコロナ禍全国拡大の真最中、混乱に乗じるかのように4月21日、沖縄県に設計変更申請書を提出した。だが、政府の「辺野古が唯一」は、内部から揺らぎ始めている。かつて辺野古推進の先頭に立ったことがある石破、中谷元防衛相らから「再検討が必要」の声が公然化されている。翁長前知事が埋め立て承認撤回に踏み切ったときのように、地方自治の問題として今回の設計変更にNO! の声を全国から上げ、建設を阻むときだ。8月上旬に始まる設計変更の広告縦覧に全国から不承認の声をあげよう(沖縄の海や環境等に関心があればだれでも意見書は出せる)。意見書ハガキもあるので活用を。あらたなチャンスだ。

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