今月を視る (「むすぶ」2021年5月号より)2021/05/22 13:51

重大な欠陥を持つ国民投票法
 政府、与党が5月6日、衆院憲法審査会で、5月11日、衆院本会議で国民投票法改正案の採決を強行、可決させた。強硬な改憲派であり、実態は完全な与党である維新はもちろん、立憲民主、国民民主を引き入れての暴挙である。「安倍政権下での改憲反対」を掲げてきた立憲民主が、「国民投票実施時のCM規制について3年後の『見直しを検討』を「修正として認めさせた」ことを理由に容認に転じた。こんな「修正内容」で改憲暴走に歯止めをかけられるとはだれも思わない。立憲の責任投げ出しは、とうてい許容できるものではなく、情けないかぎりである。

一貫してサボタージュされた論議
 そもそも、今回の改正案(2018年提出)をめぐる最大の争点は、「国民投票を、公選法に合わせた形にする」ことではない。国民投票法は2007年の成立時にテレビなどのスポットCM規制や最低投票率などを検討課題とし、先送りし、今日に至るも何の論議も行われていない。与党はこの重要点について具体的に論議することを一貫してサボタージュしてきた。憲法は先の大戦の反省の上に国家の権力行使を規制し、市民の自由と権利を保障する法制の根幹として存在してきた。改憲内容の是非の前に、日本の法制度の根幹である憲法を変えるかもしれない手続きの一つである国民投票が、「公選法並み」であっていいのかどうかがまず厳しく問われなければならず、根本的な論議が必要なのだ。
 テレビやラジオでの政党のスポットCMは、今の国民投票法では投票前の14日間を除いて規制がなく、費用制限や罰則すらない。カネを大量投入して多数派を握ろうとするやり方は公平ではなく、カネで世論を動かそうとする行為は民主主義に反する。ましてや憲法の是非を問う国民投票の場に持ち込まれることが、あってはならない。CM規制は国民投票法の最も重要な問題の一つである。
 最低投票率もその一つである。一定の投票率に達しなかった場合に、投票そのものを不成立とする最低投票率は絶対に必要だ。例えば投票率3割の国民投票で、賛成が6割を占めても有権者全体では2割に届かない。これでは、有権者の意志が明確に示されたものとはとうてい言えないことは明らかだ。公選法適用の一般の選挙や投票は、一定の期間で改選されるため、その都度有権者の意思が一定反映される。だが、国民投票の結果はほぼ半永久的なものとなる。半永久的な性格を持つ憲法の是非を問う国民投票がCM規制も最低投票率もない「公選法並み」であっていいはずはない。最低投票率は、ずばり5割が合理的だ。改憲派は反対派のボイコットを理由に「ハードルが高すぎる」と拒否するが、投票ボイコットを乗り越えて、有権者の5割以上の人々が賛成し、「現憲法を変えなければ生活がたちいかなくなる」との強く熱い意志が明確に示されて初めて「改憲」の正統性を獲得できる。憲法を一般法並みに格下げしようとする企みを許さず、現在国会で行われている欺瞞的で内容のない「論議」ではなく、公正で民主的な論議を国会の内外につくりあげよう。
コロナ禍で、感染防止に全エネルギーを注がなければならない時に、“不要不急”そのものである「改憲準備」に奔走する。こんな自公と維新による“惨事便乗型政治”を運動の力でストップだ。

イスラエルによるパレスチナへの無差別攻撃、虐殺やめろ!の声を
 イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への無差別攻撃による死者は5月18日現在、子ども61人を含む212人に上った(イスラエル側の死者は子供1人を含む10人)。これはマスメディアがいう「報復の連鎖」や「暴力の応酬」という次元のものではない。国際法違反の無差別攻撃、虐殺行為である。このやり方は、レジスタンスによるドイツ兵殺害に対してその何十倍もの住民の命を奪うというナチスのやり方と同じだ。米バイデン政権は、「イスラエルに自衛権がある」と言い、イスラエルによる虐殺行為を止めようとはしない。国連等による積極的「介入」にも妨害の役割しか担わない。日本政府は、いつものようにダンマリを決め込んでいる。中国政府による「ウイグル・香港の人権侵害」非難とは大違いである。世界では、「パレスチナに自由を」「ガザを支持するのにイスラム教徒になる必要はない、人間になるだけだ」と市民の行動が広がっている。日本からも、“命と人権守れ”の声と行動を広げよう。

◆イスラエル大使館 TEL:03-3264-0911 FAX:03-3264-0791
E-mail:information@tokyo.mfa.gov.il

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