今月を視る(「むすぶ」2025年」7・8月号)2025/07/28 10:24

今こそ 「ミサイルより米を!」 「人権ファースト」 の声を!

最悪の参議院選結果
2025年参議院議員選挙。気分で言えば最悪の結果だった。「善きこと」をあえて探せば、沖縄選挙区で「オール沖縄」が議席を守ったこと、社民党が比例で1議席獲得し2%の政党要件をクリアしたことぐらいか。だが、沖縄選挙区では極右の参政党が12万票も獲得。これは右翼票が自民党側から流れた結果であった。また社民党では、これまで人権・平和の闘いに率先して取り組んできた現職の大椿ゆうこ議員の再選を果たせなかった。そんなことを考えると手放しでは喜べない。
 他方、石破自公政権の過半数割れ、「大敗」という結果も、単純には喜べない側面がある。自民党がここまで落ち込んだのには、旧安倍派など極右的勢力の票が参政党や保守党という極右政党に、さらに極右とまでは言えないまでも排外的で反共の右派政党、国民民主党に流れ込んだことが一因として挙げられる。日本のメディアの多くは、旧安倍派勢力や参政党、保守党を「保守的」政党と呼ぶが、彼らは明らかに極右であり、露骨な戦争勢力である。日頃、日本のメディアはフランスの「国民連合」、オランダの「自由党」、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」などを「極右」と呼ぶが、旧安倍派勢力、参政党、保守党は、欧米基準で言えば明確な極右である。メディアが旧安倍派や参政党、保守党を極右として批判せず曖昧な態度をとっていることが、彼らの跳梁跋扈を許している一因でもある。

あらゆる領域で「人権ファースト」を対置して闘おう
石破おろしの政局へと事態が移っている。石破は「反安倍」であり、いわば常識的な保守であった。その石破を「許しがたい」存在として危険な極右勢力が一斉攻撃を始めているのが現局面だ。
選挙期間中、唯一「参政党」の危険で極右的実態を正面から取り上げた「報道特集」(TBS)が「偏向報道」だと参政党などから攻撃されている。昨年の兵庫県知事選をめぐる報道でも、立花らのデマの実態を徹底的に批判する報道を行った「報道特集」に対して、極右勢力が「スポンサー降りろ」など一斉攻撃を仕掛け、広告スポンサーとなっていた大手家電量販店が撤退するという事態になった。
今回の参議院選挙で初めて気づいたわけではないが、日本の社会、政治状況は明らかに危険な方向に傾いている。放置すれば、戦争とファシズムにますます近づいていく。この危険な流れを食い止め、「奴らを通すな!」の声を広げる努力が求められている。あらゆる分野で生活の場で、「日本人ファースト」に「人権ファースト」を対置する闘いが求められている。

自衛官の戦死を間近に想定
この状況を見て、意を強くしているのが、自衛隊上層部だ。自衛隊の幹部は、もはや「戦死は決してあってはならないもの」とは見ていない。戦死は間近な現実ととらえている。6月25日付毎日新聞の「論点 靖国と自衛隊」に登場した火箸芳文(元陸上幕僚長、旧陸軍将校や退職幹部自衛官で構成する陸修偕行社理事長、靖国神社崇敬者総代)は、もはや旧陸軍との連続性を否定もしなければ隠そうともしない。「一命を賭して国を守る任務にあたるのは旧陸軍も陸自も同じです。我々は陸軍の末裔だと自任しています」「A級戦犯については肯定も否定もしません。東京裁判は平和に対する罪という事後法で弁明の機会も与えないで見せしめのような形で裁き、軍部が悪かったという歴史観を米国が押し付けました。そこに私は疑問があります」。ここまで、明け透けに公然と語ったことはなかった。自民党西田昌司参議や参政党神谷代表が語ったのは、この自衛隊上層部の思いに他ならない。「旧軍を礼賛するのはけしからんという気持ちが国民の中にずっとあったことは否定しません。ただ、我々の任務についてわかってもらえる時期なのではないかと思います」。自衛隊上層部や戦争勢力は、「国を守る」ためには自衛官の戦死も住民の犠牲も当然だとする軍事優先社会に踏み込もうとしている。

だが、「世の中すべてが最悪である必要はない」。これは、ニューヨーク市長選挙(11月)に向けた民主党予備選挙において歴史的勝利を収めたDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)のゾーラン・マムダニ候補への祝賀連帯メッセージの一節だ。また、「ジェノサイドに反対し、パレスチナ人の人間性を認めることは、選挙における致命的リスクではないと証明された」の一節にも勇気づけられる。
日本でも「ミサイルより米を!」。ベタに見えるがシンプルで真っ当なスローガン。これを人間らしい生活を奪われ傷ついたすべての人に届けてゆこう。そのための闘いをここから始めよう。

「むすぶ」目次(2025年7・8月号)2025/07/28 10:26

■ 今月を視る / 今こそ「ミサイルより米を!」「人権ファースト」の声を!
■ 解説 / 柏崎刈羽原発再稼働 県民投票は否決されても正念場はこれから
           東京都足立区 山根昭平 
■ 報告 / 継承と裾野の広がりが強く感じられた
2025年度「沖縄恨之碑の会」追悼会   事務局 豆多敏紀      
■ 沖縄レポート / 尊い命を捧げたのではなく、国体護持のために奪われた命
元沖縄国際大講師 西岡信之  
■ オピニオン / 天皇の広島訪問に異議あり    ZENKO 広島 日南田成志                   
■ 読者つうしん /「欲しがりません 勝つまでは」に思う    堺市 中川經子 
■ Information & Editorial Peace Note