「むすぶ」目次(2025年6月号)2025/06/16 07:40

■ 今月を視る / イスラエル政府の戦争拡大、ガザ虐殺を止めるため
         今こそ、日本政府に外交交渉など積極関与を要求しよう!
■ 沖縄レポート / 政府に突きつけた「戦争するな!」
        「台湾有事」に抗う各地の市民団体が繋がった6/6・7東京行動  西岡信之                     
■ オピニオン / 万博と原子力 「いのち輝く未来」と「核ゴミ・被曝労働」の矛盾撞着
元越前市議 山崎隆敏                       
■ 追悼 / 箕面忠魂碑違憲訴訟元原告 古川佳子さん   事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / ミサイル弾薬庫問題を議論できる議会へ 京都府精華町議 神田たかひろ
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(2025年6月号)2025/06/16 07:38

イスラエル政府の戦争拡大、ガザ虐殺を止めるため
今こそ、日本政府に外交交渉など積極関与を要求しよう!

ネタニヤフ政権とトランプ政権は「テロ政府」
どう見ても、凶暴、残虐、非道と言う以外にない。イスラエルによるガザ攻撃のことである。イスラエル・ネタニヤフ政権と一部極右勢力、米トランプ政権と取りまき連中は、もはや、隠したり、取り繕ったりもしない。武器を持つはずのない赤ん坊、子ども、女性、老人をどれほど殺しても、「ハマスのせいだ(ハマスから離れないからだ)」と居直ってきた。最近では、公然と「ガザに罪のない人間などいない」とまで言う。ナチスが「害のないユダヤ人などいない」とユダヤ人虐殺、絶滅行為を行ったのと全く同じだ。この虐殺を止めようと声上げれば「反ユダヤ主義」のレッテルを張り、弾圧を行う。イスラエル・ネタニヤフ政権と米トランプ政権は「ならず者政府」であり、「テロ政府」である。

ネタニヤフ政権は孤立し、追い詰められている
 だが、彼らは確実に孤立し、追い詰められている。6月10日、英国とカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーの5カ国は、イスラエルの2名の極右閣僚に対し入国禁止と資産凍結の制裁を科した。声明では、「パレスチナ人の強制移住や新たな(ユダヤ人)入植地の建設を主張する過激な言動は危険で容認できない」とした、さらに、今回の措置は、「ガザでの惨事と切り離してみることはできない」とも付言し、即時停戦などに向けて尽力すると表明している。
 国連の場でも、この動きは続いている。6月4日、国連安全保障理事会でパレスチナ・ガザ地区での「無条件かつ恒久的な」即時停戦を求める決議案の採決があり、米国が拒否権を行使したため否決されたものの、理事国15カ国のうち14カ国が賛成した。
 さらに、国連は6月12日、ガザの事態を巡って緊急特別会合を開き、即時の無条件かつ恒久的な停戦を求め、イスラエルに対し、人道支援物資の搬入制限を直ちに解除することなどを求める決議を圧倒的多数(日本を含む149カ国)の賛成で採択した。決議には、「民間人の飢餓」を紛争の手段として使うことや、人道支援を拒絶することを強く非難する内容も盛り込まれている。米・トランプ政権が様々な「外交的措置を講ずる」との脅迫を行ったにもかかわらず、反対は米国やイスラエルなど12カ国、棄権は19カ国にとどまった。

イラン空爆の暴挙
 こうした中、驚くべきことに、イスラエル軍が6月13日、イランを空爆した。イスラエルはイラン中部にある「ウラン濃縮施設や各地の軍関連施設を標的に攻撃を加えた」と発表。軍幹部や国会議員、大学教授、民間人らも多数殺害されたとの報道もある。イランの「報復攻撃」を想定した挑発行動であることは明らかだ。イスラエルは自ら核兵器保有国であることは隠したまま、イランの核開発は「イスラエルの存続にとって明確で差し迫った脅威だ」と主張し、攻撃を正当化しているが、欺瞞でしかない。
イスラエルのイラン攻撃の本当の目的は、戦争の拡大によってガザ攻撃の凶悪な犯罪から目を反らさせることにある。イスラエルのガザ攻撃が明確に戦争犯罪であり、国際法違反の暴挙であること、「即時停戦、恒久停戦」で国際社会が結束を固めつつある状況に攪乱を持ち込み、「イスラエルが本当に戦っているのはパレスチナの背後にいるイランだ」とガザの現状から世界の関心を反らせようとしているのだ。なりふり構わず暴走するイスラエル・ネタニヤフ政権は世界から追放されなければならない。

日本政府も外交的措置をとるべきだ
 世界の多くの市民が非暴力のBDS(ボイコット・投資撤収・制裁)運動などの行動によって、南アを先頭にした多くの国々が国連など国際機関で声をあげ、イスラエル政府を追い詰めている。こうした運動が、英国、カナダなど米国の強い同盟国でさえ、イスラエル批判を強め、貿易協定の停止など「外交的措置」に踏み込む状況をつくり出した。
日本政府は、国連での「停戦決議」などには賛成はするが、それ以外は何の意見表明もしない。また外交的措置などのいかなる行動も起こさない。日本政府は、イスラエルに影響力を与える関係にある。日本政府に「外交的措置」に踏み込むよう求める行動が、日本の私たちの最も重要な課

「むすぶ」目次(2025年5月号)2025/05/19 18:23

■ 今月を視る / ノーモア沖縄戦 - ナクバ(大惨事)を終わらせよう!
■ 沖縄レポート / 沖縄戦から80年 
        「台湾有事」で沖縄・琉球を再び捨て石にはさせない 西岡信之                     
■ オピニオン / 使用済み核燃料「搬出計画」の欺瞞    越前市 山崎隆敏          
■ アピール? /「東大阪でヘイト問題を考える会」スタート  東大阪市 桐生隆文
■ 図書あんない /『原発と司法』 樋口英明 著  関電前プロジェクト 八木浩一
■ 読者つうしん / 厳しい地方の衰退 民主主義が私を離さない 豊岡市 判田明夫                           
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年5月号)2025/05/19 18:17

ノーモア沖縄戦 - ナクバ(大惨事)を終わらせよう!

沖縄の5・15
沖縄は、1972年5月15日の施政権返還(米軍政から日本政府へ)から53年となった。沖縄の人々が施政権返還(「復帰」)に託した願いは、人権尊重と平和主義を基本精神とする日本国憲法の厳格な適用であったが、ことごとく無視され、沖縄に憲法が実現することはなかった。米軍基地は縮小どころか強化され続け、在日米軍専用施設の70%が沖縄に集中する過酷な現実が押し付けられたままだ。米軍関係者による性暴力をはじめとした人権侵害が日常となり、沖縄の人々の平穏で人らしい生活は破壊され続けている。自民党を軸にした歴代の政権は、一貫して日本国憲法の破壊、無力化を進めてきているが、沖縄では、施政権返還の当初から「日本国憲法下の沖縄」などなかったのである。
 今年の「5.15平和行進」は5月11日、宮古島市から始まった。メインスローガンの一つは「軍事の島にしない」である、米軍基地だけでなく、対中国戦争のための自衛隊ミサイル基地設置、自衛隊部隊増強など南西諸島・沖縄への軍備強化・軍事要塞化が急ピッチに進められていることに対抗するためである。軍事要塞化を止め、平和な沖縄をめざすことが、東アジアの平和構築に直結する。この取り組みの新たな出発点として、今年の5・15がある。

パレスチナの5・15
中東地域の5・15は、1948年の「イスラエル建国」=パレスチナ占領で約70万人が難民となったナクバ(大惨事)の日である。77年を迎えた今年は、14日、ヨルダン川西岸ラマラで「ナクバはまだ終わっていない」と訴え、ガザでの戦闘終結と故郷への帰還権を求める大規模なパレードが行われた。パレードには子どもから年配まで多数の住民が参加し、即時停戦と占領、封鎖止めろと声をあげた。
48年当初から、国連機関や国際社会がイスラエルの国際法違反、戦争犯罪を何度も指摘し、速やかに違法行為を止めるよう求めてきたが、イスラエルの無法ぶりは今日、ますます激しさを増している。
 現在、イスラエルは、それまでの停戦合意を一方的に破棄し、3月18日から始まった再攻撃で、ガザそのものの消滅作戦を強めている。3月18日の攻撃再開後の2カ月で3000人近くの住民が殺害され、7,680人が負傷した。一昨年10月以降の死者累計は53000人を超えた。さらに、イスラエルが2か月以上にわたって支援物資の搬入を認めず、搬入を阻止、妨害しているため、国連機関を含め地元支援団体による炊き出しは3分の1が停止を余儀なくされ、子どもたちが飢えや死の危険に直面している。
 今回のイスラエル軍のガザ完全破壊、軍事占領、住民追放作戦は最悪の暴挙であり、戦争犯罪の最たるものである。イスラエル政府はガザ破壊、占領作戦の真の狙いをもはや隠そうともしない。イスラエル極右のベザレル・スモトリッチ財務相は、ガザ地区は半年以内に完全に破壊され、一部地域を除く多くの地域から住民は退去し、無人化することになると発言。スモトリッチ財務相は、パレスチナの住民は移住するしかないとして、「彼らはガザ地区で、希望もなく期待することもないことを理解し、完全に絶望するだろう。他の場所で新たな人生を始めるために、移住を模索するようになるだろう」と述べたことが報道されている。この発言を含むこの間のイスラエル政府の言動には、さすがのトランプ本人だけでなく、政権の、閣僚、高官からも「ネタニヤフ政権と距離を置かざるを得ない」状況が生まれ始めているともいう。イスラエル国内においても、70%以上の人々が、ネタニヤフと極右勢力による停戦破棄、軍事強行作戦に「人質の解放につながらない」と反対の意思を示している。

「このままではいけない。ヨーロッパはイスラエルへの武器供給を停止しなければならない。占領を支えるすべての貿易協定を停止しなければならない。国際法に基づき、加害者たちに責任を取らせなければならない。パレスチナとの連帯はラディカルな立ち位置ではない。道徳上の義務だ。パレスチナ人民の正義と尊厳そして解放は、譲歩の余地がない。ありきたりの発言をする時代は終わった。今こそ行動を起こす時だ。」(DiEM25=ヨーロッパ民主主義運動2025)。この呼びかけに直ちに呼応しよう。

「むすぶ」目次(2025年4月号)2025/04/24 11:00

■ 今月を視る / 赤ちゃん、子ども、女性、年寄りを殺すな! の声を大に
■ 沖縄レポート / 住民避難ではなく、軍事目標(駐屯地・弾薬庫)を撤去せよ!
                       沖縄国際大元講師 西岡信之                      
■ 寄稿 / 強制動員問題の解決、それは今を生きる私たちの問題
             強制動員問題解決と過去清算のための共同行動 矢野秀喜          
■ 読者つうしん / 高校授業料無償化の罠      枚方市 山田光一
■ 読者つうしん / シャノちゃん 良かったね、はっちゃん 頑張ろうね  
                          東大阪市 光永サチ子
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(2025年4月号)2025/04/24 10:57

赤ちゃん、子ども、女性、年寄りを殺すな! の声を大に

ガザ停戦破壊―攻撃の局限化
イスラエルは、世界中のほとんどの国や人々が切実に望んだ第2段階への移行という停戦合意(恒久停戦、イスラエル軍のガザ撤退、双方の捕虜・人質解放など)がなかったかのように、以前にも増して残虐な攻撃を繰り広げている。ガザ地区の保健当局は、イスラエル軍が3月18日に攻撃を再開してから1542人が死亡し、2023年10月からの死者は5万912人にのぼったと発表した(4月11日時点)。
UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、イスラエル軍の攻撃を再開からこれまでに推定で40万人がさらなる避難を余儀なくされたと発表し、また、3月2日からイスラエル軍がガザ地区への支援物資の搬入を認めておらず、現地では食料や医薬品などの不足が深刻で人道状況の悪化に拍車がかかっていると警鐘を鳴らした。無法者のネタニヤフやトランプが「地獄を見せてやる!」といった通りの暴虐である。さらに見逃せないのは、「緩衝地帯」と称して、軍事占領地を着々と拡大させていることだ。「装甲ブルドーザーが住宅を次々に破壊し、かつてフル稼働していた工場は、工兵が爆弾を仕掛けて計画的に解体していく。兵士がパレスチナ人住民の立ち入りを禁じて破壊しているのは、かつてその住民たちの生活と生計を支えた肥沃な農地だった」(CNN)。
パレスチナ住民を追放し、ガザ全体を占領地に変えようというおぞましい計画だ。
 だが、こんな戦争犯罪のオンパレードを世界の人々は許してはいない。イスラエル国内においても、空軍の予備役などおよそ1000人や軍の情報部門の予備役など250人が、「戦争の継続は、目的達成の役には立たず、人質や兵士、それに罪のない人々の死をもたらす」などと訴え、ハマスとの戦闘を停止し、交渉を通じて人質の解放を実現するよう求める書簡を発表し、自国民の命も省みず、政権の延命にしがみ付くネタニヤフを追い詰めている。
虐殺、占領、アパルトヘイトを終わらせるために、共同して行動する時だ。

自衛隊統合作戦司令部が始動
 「台湾有事」を回避するための外交的取り組みに全力を集中するのではなく、中国との戦争準備に地道をあげ、戦争体制づくりにつきすすむ日本政府。「自衛隊の南西シフトは、従来、琉球列島のミサイル基地化を軸に進められてきたが、今や新たな、本格的な戦争態勢構築に移行しつつある。本土から南西諸島への全自衛隊の大動員(全師団等の機動展開)、弾薬など継戦能力・兵站の強化、司令部等の地下化、この上に琉球列島・西日本の主要な民間空港・港湾の軍民共用化が決定。つまり、台湾有事のために、沖縄から九州-日本全土への戦時態勢づくりが、文字通り実戦を想定しながら本格化し始めたのだ」(小西誠)。中国との実戦を想定していることは、宮古・八重山の5市町村の島々から住民11万人と観光客約1万人を避難させる計画の概要を公表したことでも明らかだ。全島避難を含めて、住民を戦争協力に動員する対策にも余念はない。2024年4月の「第38回全日本トライアスロン宮古島大会」で陸上自衛隊内部で支援計画文書が作成されていたことが明らかに。大会を「宮古島駐屯地の存在を市民に大々的にアピールできる格好の機会」と捉え、約100人の隊員を動員し、迷彩服を着用しての支援を重視していたという。典型的な「宣撫工作」(占領地において住民に敵対心を持たせず、協力させる目的の軍隊活動)である。
 自衛隊の戦争準備が急ピッチで進む中、防衛省の常設組織「統合作戦司令部」が始動した。陸海空3自衛隊の一元指揮だけでなく、米軍と運用・作戦面でのカウンターパートも担うとする。米側も在日米軍司令部の権限を強化して「統合軍司令部」とする計画を進めているとも。これまで部隊運用を担ってきたのは制服組トップの統合幕僚長だったが、「これからは政治の対応は統幕長に任せ、司令官は部隊運用に集中する」という。実戦に特化した組織である。
 やりたい放題の戦争準備に見えるが、矛盾も露呈してきた。住民無視の戦争準備に、住民の反発も高まってきた。与那国では、8月に任期満了を迎える与那国町長選に向け、「糸数健一現町長は右に寄りすぎて、次の4年間を任せることはできない」と同じ「保守」を名乗る新人が、立候補、出馬すると表明した。
住民の声を大切にし、闘おう。「台湾有事」は阻止できる。

「むすぶ」目次(2025年3月号)2025/03/19 17:13

■ 今月を視る / 停戦から平和的解決へ! 真剣な外交が必要だ!
■ 沖縄レポート / 宮古・八重山はすでに戦時体制-市民が戦争止める
                       沖縄国際大元講師 西岡信之                      
■ 寄稿 / 再生可能エネルギー転換で、原発ゼロ達成は可能だ!
                       東京都足立区 山根昭平          
■ 図書あんない /『金正恩の「決断」を読み解く』 鄭 旭湜 著  事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / 広島に生まれた私が3月1日に思うこと   堺市 白倉和典
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年3月号)2025/03/19 17:12

停戦から平和的解決へ! 真剣な外交が必要だ!

停戦延長維持から第2段階の交渉を
3月は、戦争と平和をめぐる大きな動きが続いている。まず、ガザ停戦の第1段階(6週間)が終了し、第2段階(イスラエル軍のガザ撤退や恒久停戦に関する交渉)、第3段階(ガザ復興のための交渉)への移行は「棚上げ」にされたままだが、「停戦延長」がかろうじて維持されている。停戦期間中も繰り返し行われるイスラエルの攻撃(とくに西岸地区でのパレスチナ人を狙った攻撃や入植強化)や支援物資の搬入妨害で停戦延長が脅かされており、不安定で予断を許さない状況だが、停戦破壊許さず、第2段階の交渉に入るよう国際的圧力を強めることが求められる。

新たな核軍備管理・削減交渉を米ロに強く要求
米ニューヨークの国連本部で開催された核兵器禁止条約の第3回締約国会議(3月3日~7日)は、「核廃絶は単なる願望ではなく、世界の安全保障と人類の生存に絶対必要」だとする宣言を採択した。
また、新戦略兵器削減条約(新START)の期限を来年2月に控え、新たな核軍備管理・削減交渉を
直ちに始めるよう米ロに強く要求した。核保有国や日本など「核の傘」、「核抑止力」を信奉する多くの国がオブザーバー参加すら拒み、会議を無視する姿勢を装ったが、核禁条約が「核のない世界」を実現する唯一で確かな途であることを、あらためて世界に広く知らせることが大事だ。
 トランプは、2月13日、記者団の質問に答える形で、「世界情勢がいったん落ち着いた段階で」と前置きしたうえで、「我々はみな、もっと生産的なことに使えるはずの多額の資金を核兵器に費やしている」と語り、中ロと交渉し、軍事費の半減をめざす意向を表明したという。「そのとおりだ!今すぐ実行を」の声を一層大きく世界から突きつけよう。

もはや軍事的解決はない
 2月末のゼレンスキー vs.トランプ、ヴァンスの口論の末、決裂した首脳会談を経て、3月13日、米・ウクライナは「即時かつ暫定的な30日間の停戦」に合意したことが発表された。ロシアの態度はまだ確定的なものは報じられていないが、停戦をめぐるこの動きは注目すべき大きな変化である。トランプ政権の思惑や狙いが、ウクライナ・ロシアの市民の命と人権を守ることにあるのではなく、グローバル資本のための「自国の利益」にあることは間違いない。だが、現時点での停戦への試みは、トランプらの邪悪な狙いを理由に、躊躇したり消極的になったりしてはならない重大問題である。トランプが言うまでもなく、「(武器援助だけでなくNATOの軍事介入・参戦を望む)ゼレンスキーは、第3次世界大戦に賭けようとしている」、「もはや軍事的解決(勝敗をつける)はありえない」ことは一定の真実である。また、メディアはこの停戦の動きの中で、ウクライナ兵士や市民が「こんな(不利な)停戦なら、何のために多くのウクライナ人が戦い、死んでいったのか分からない」と憤る姿を度々映し出す。戦禍に苦しむ民衆の率直な感情であることは理解できる。だが、一方でかつて日米の戦争において「戦争をやめるならどこかで一度でも敵をたたいて、できるだけ有利な条件で」という軍部や政権の「一撃講和論」に民衆も巻き込まれていった事実、そのためにどれだけ多くの命が失われたかを忘れてはならない。
 停戦は多くの妥協を伴うが、屈服を意味するものではない。正義は武力以外のあらゆる抵抗、行動によって実現しなければならない。
 「この戦争が続けば、ウクライナとロシアでさらに何千人もの命が失われるだろうし、戦争が激化すれば、全世界に影響を及ぼすだろう」、「戦争がさらに激化する前に、米国とウクライナがより現実的な基盤で再び協力することを私たちは期待するが、そのためには真剣な外交が必要となる。ヨーロッパはウクライナに戦い続けるよう奨励するのを止めなければならない。今こそ、どんなに困難であっても、この戦争は交渉の場で解決しなければならないことをすべての関係者が認識しなければならないときだ」(米反戦団体CODEPINK 2月28日緊急発表)との認識を共有する。
日本政府に対しても、和平のための外交交渉に参加し、そのイニシアチブを発揮するよう要求しよう。ウクライナの戦場だけでなく、ガザの戦場も。

「むすぶ」目次(2025年2月号)2025/02/19 16:16

■ 今月を視る / パレスチナ・ガザ地区における停戦破壊許さず、恒久停戦へ!
■ オピニオン / 核兵器禁止条約・第3回締約国会議にむけて
                    ZENKO関電前プロジェクト 安井賢二
■ 沖縄レポート / 反転攻勢へ 対中戦争を回避させる市民運動をいまこそ
                       沖縄国際大元講師 西岡信之                      
■ 解説 / ノー!ハプサ(ヤスクニ合祀取り消し)訴訟最高裁判決
                     ノー!ハプサ 事務局長 山本直好          
■ 図書あんない /『パンとペンの事件簿』 柳 広司 著    堺市 松永直子
■ 読者つうしん / ひとりスタンディングを初めて1年3か月  堺市 佐藤美津子
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年2月号)2025/02/19 16:15

パレスチナ・ガザ地区における停戦破壊許さず、恒久停戦へ!

トランプ政権による暴力と強欲の世界支配
トランプ政権の「Make America Great Again(アメリカ合衆国を再び偉大な国にする)」は、暴力と強欲が支配する「ジャングルの掟」を再び世界に押し付けようとするものだ。一方、石破政権は「楽しい日本」を掲げている。安倍政権の軍国主義礼賛でしかない「美しい日本」よりははるかにましだが、「楽しい日本」も中味がともなわないことには、単なる「空文句」でしかない。2025年予算案はこれまでの金持ち優遇、軍事優先の基本姿勢に何の変化もない。「楽しい日本」だけでなく、「楽しい世界」もセットであるべきだ。そのための外交、安保にも今のところ変化はないとしか見えない。トランプとの首脳会談も以前からのスタンスに何の変化もなかった。「楽しい世界」に向けて彼らに託すものはないが、彼らをして動かざるを得ない状況を作り出す国内外の取り組みは一層重要だ。

停戦破壊攻撃を許すな
トランプ米大統領は2月4日、訪米中のイスラエルのネタニヤフ首相との会談後の記者会見で、パレスチナ・ガザ地区をアメリカが「引き取る」、アメリカが「所有する」と発言。「ガザを更地にして再開発する」、「再建の間はパレスチナ人をガザの域外に移住させる」、「パレスチナ人がガザに帰還する権利はない」というとんでもない「計画」をぶち上げた。このトランプ発言を受けて、イスラエルのカッツ国防相は2月6日、パレスチナ自治区ガザの住民の自主的な退去を可能にする計画を準備するようイスラエル軍に指示したと明らかにし、「退去したガザの住民たちの受け入れ先について、イスラエルのガザへの攻撃を強く非難してきた国に「受け入れる義務がある」と一方的に主張。スペインやアイルランド、ノルウェーを名指しし、「受け入れを拒否すれば偽善だ」とまくしたてている。
さらに、トランプは2月10日、ハマス側がイスラエルの数々の停戦合意違反に抗議する措置として「人質の解放一時延期」を表明すると、ハマスに対し、「パレスチナ・ガザ地区で拘束している人質全員を『土曜日の12時』までに解放せよ」、応じなければ「地獄のようなとんでもない事態」にすると脅迫した。イスラエルは、停戦合意発効後もガザで攻撃を行う、支援物資の円滑な搬入を妨害する、ヨルダン川西岸地区で戦闘を激化、暴力的なユダ人入植を強めるなど、停戦合意の実行を無視してきた。
すでに、停戦交渉は、第2段階(イスラエル人の残りの捕虜とパレスチナ人囚人の交換、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退など)、第3段階(ガザ地区の再建)のための交渉に入っているが、イスラエルとトランプ政権の「ガザ地区の再建」が「ガザ地区からパレスチナ住民を追放する」計画であったことが露呈したといわなければならない。

国際刑事裁判所に制裁の暴挙
この暴虐ともいうべき計画に対し、パレスチナ民衆が「我々の人々と土地の権利は売り物でも交換でも交渉の対象でもない」、「イスラエル政府とネタニヤフ首相は、我々の民に対して行ったジェノサイド、強制移住、併合の犯罪を隠そうとしている」と抗議の声をあげたのは当然であり、正当だ。
 トランプ政権はパレスチナ民衆だけでなく、世界の良識に牙を向けている。トランプ大統領は2月6日、米国民やイスラエルなどの同盟国に対する捜査に関わったICC(国際刑事裁判所)の職員らに制裁を課す大統領令に署名し、2月10日、ICCのカーン主任検察官に対し制裁を課した。制裁には、米国やイスラエルなどの捜査に関わったICC職員やその家族の米国内の資産凍結や米国への渡航制限などが含まれる。
 イスラエルとトランプ政権によるあからさまな停戦破壊を許さず、パレスチナ民衆、世界の人々と連帯し、停戦維持、恒久停戦に向けて歩をすすめよう。