今月を視る (「むすぶ」2026年1月号) ― 2026/01/19 06:41
弱肉強食の野蛮な社会を拒否する市民の声と行動を!
周到に準備、計画されたベネズエラ侵攻
年明けから耳を疑うようなことが起こされた。1月3日、トランプの命令で米軍がベネズエラの首都カラカスなどに大規模に空爆などの攻撃をかけ、「電撃的な地上侵攻」によってマドゥロ大統領夫妻を拘束・拉致し、ニューヨークに連行した。この攻撃で、約半数に上る民間人含め100人以上のベネズエラ側の人々が殺された。すでにトランプ政権は9月以降、ベネズエラ周辺で「麻薬運搬船」と勝手に決めつけた船に対する攻撃を繰り返して120人以上を殺害してきた。民間機に偽装して攻撃する国際法違反、戦争犯罪のケースも暴露されている。今回の攻撃は何カ月も周到に準備、計画されたものだと言われる。「反体制派指導者」マリア・コリナ・マチャド(彼女は米軍の介入を叫び、イスラエル支持を公言する)のノーベル平和賞受賞も米トランプ政権の暗躍の結果との疑念も「周到な準備」の一つだろう。
CIA(米中央情報局)などを使って資金をばらまき、対政府批判活動の組織化やスパイ工作も大規模に展開されたことは容易に想像できる。大統領警護支援に派遣されていたキューバの戦闘員がほぼ皆殺しにされたのも、警護隊や軍の一部が買収されていたとの疑いもある。いずれにせよ、今回の侵攻作戦は最初から最後まで謀略そのものであり、国際法違反、戦争犯罪の蛮行である。
中南米での米国による血塗られた歴史
トランプは、ベネズエラの土地も埋蔵量世界一といわれる石油も「開発したのは米国であり、もともと米国のものだ」と当たり前のように言う。ベネズエラでは長年、こうした米国資本とそれに結託した国内の大金持ち勢力が富を独占し、大多数の民衆が貧困に苦しめられてきた。そうした極端な貧富の格差をなくし、石油をはじめとした社会的な富を貧困にあえぐ民衆に取り戻そうと改革を目指す反米左派政府を誕生させた。20数年前から今日に至っている。キューバ革命以来、中南米諸国では同様の改革が多くの国、地域ですすめられた。米国は、利権を失うことを恐れ、嫌い、これら反米左派政権に対しては経済制裁などを通じて経済を混乱させ、社会不安を煽り、時にはクーデターを起こさせ、時には、「低強度紛争」と呼ばれる軍事戦略で内戦を起こさせ社会改革をつぶし、体制の転覆を繰り返してきた。
1954年、米国が画策したクーデターにより、土地改革を進めていたグアテマラのアルベンス政権が崩壊。61年には、CIAが支援した亡命キューバ人部隊がカストロ政権の転覆を試みた「ピッグス湾事件」が発生。70年代以降は左派勢力の台頭を阻止する名目で、アルゼンチンやチリなどで軍事クーデターを起こさせ軍事独裁政権を擁立した。81年、レーガン政権はニカラグアに左派政権が誕生すると、軍事介入。エルサルバドル内戦でも軍事支援を行い、左翼ゲリラの封じ込めを図った。83年のグレナダ侵攻では、東カリブ海諸国軍を従えた米軍部隊が上陸し、短期間で反米政権を崩壊させた。89年、ブッシュ(父)政権はパナマに侵攻し、(米国が麻薬取引の罪で起訴した)最高実力者ノリエガ将軍(米国が育てたとされる)を拘束し、失脚に追い込んだ。
これらいずれの米軍侵攻の背景には、自ら「米国の裏庭」と位置づける中南米での石油やパナマ運河の権益など米国を拠点とする多国籍企業(グローバル資本)の利権を維持する狙いがあったことは明らかである。これらの蛮行に対して、国連総会などで「国際法の著しい違反」と非難する決議を可決したが、米国は、今回のトランプのように口にはしなかったが「国際法は必要ない」という態度に終始してきた。
「第2のキューバ」を阻止し、今やほとんど左派政権となっている状態にくさびを打ち込むこむことが、石油以上に大きな狙いと言える。中南米だけではない。「大量破壊兵器を保有している」(デタラメであったことが後に判明)ことを口実に大規模に軍事介入したイラク戦争は記憶に新しい。そして今また、イランに対する軍事介入を窺っている。
トランプ政権や多国籍企業のこんな好き勝手な振舞いをこのまま放置すれば、世界と「99%」の人々は弱肉強食の野蛮な時代に引き戻される。トランプのこのギャングでしかない強欲な野望と野蛮な行いに反対の声をあげ行動することが緊急に求められている。この当たり前の行動に背を向け、トランプ政権の野蛮な行動に明確に反対しないことは、加担でしかない。プーチンのウクライナへの軍事侵攻や中国の台湾への「圧力」を「力による現状変更」として威勢よく非難してきたものの多くが、トランプのこの行いには黙っている。中には「『力による現状変更』そのもので、中露を非難する論拠と矛盾する」(小野寺五典・安全保障調査会長)と発言するものはいるが、高市首相は「在ベネズエラ日本人の安全確保」を言うだけで黙ったままだ。
「死の商人」国家へまっしぐらの高市政権
その高市政権が、1月23日召集の通常国会冒頭で衆院解散を宣言し、総選挙実施の挙に打って出る意向を示した。「支持率が高い」うちに不安定さを突破しようという党利党略そのものである。高市政権の「成長戦略」の一つは「防衛産業」(武器商売)の成長、拡充である。それを梃に「日本経済を成長させる」というもの、つまり「死の商人」国家づくりである。
与党時代の公明党斉藤鉄夫代表は「死の商人化だけは避けなければいけない」と言ったが、現在の高市政権にとって「死の商人」はそれほど忌み嫌うものではないらしい。それどころか「防衛産業」(軍需産業)こそ「日本経済成長の要」と言って憚らない。
日本の軍需企業の筆頭は三菱重工や川崎重工だ。防衛省によると24年度の調達品契約実績は、三菱重工が1兆4567億円、川崎重工が6383億円。武器輸出の完全自由化が未だの日本でこの売り上げ実績は相当なものだ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が今年発表したデーターによれば、24年度の軍事関連販売額のトップ10は、ロッキード・マーチン(米国)を筆頭にBAEシステムズ(英国・4位)、ロステック(露・7位)、中国航空工業集団(8位)、中国電子科技集団(9位)と続く中(他はすべて米国企業)、三菱重工が32位、川崎重工が55位、富士通が64位、三菱電機が76位、NECが83位と百傑入りした。
つい最近までは大ぴらに営業できなかった「死の商人」たちが、大手を振るうようになった。家電や自動車よりも消耗、消費の激しい兵器の方が儲かるのだ。しかも軍需産業のすそ野は広い。国内では、上記以外に、東芝、IHI(旧石川島播磨)、SUBARU、日立、沖電気、コマツ、ダイキン、ENEOS、出光興産など、多種、多様な業界が群がっている。
これら日本の軍需業界はさらなる高みを目指す。世界のトップ10はともかく、ドイツなどのヨーロッパの兵器輸出国や最近ポーランドと147億6000万ドル(約2兆470億円)の兵器輸出契約を締結した韓国を意識して、「追いつけ追い越せ」の勢いである。すでに政府は、「防衛費」を国内総生産(GDP)比2%に増額する数値目標を2年早める「前倒し」で、2025年度の「防衛費」と関連費の総額が約11兆円になる補正予算を成立させた。次の一手は「防衛装備移転」の大幅緩和に踏み込んだ5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海に限定)の撤廃だ。5類型が撤廃されれば販路は海外に広がる。すでにオーストラリアなどいくつかの国との間で武器完成品や受注や新たなステルス戦闘機の共同開発を進めている。これら、すでに決まっている武器輸出をスムーズに進め、販路を拡大するために、あっという間に「5類型」も投げ捨てる。また、ウクライナへの武器輸出を念頭に紛争中の国への輸出を禁ずる「3原則」の見直しも口にしだした。中国との軍事を含む緊張激化が止まらない。否、止めようとしない。この緊張状態でこそ武器商売にとって増殖できるもっとも都合の良い環境だからだ。
死の商人が大手を振るう社会であっていいのか。日本に住む市民の一人ひとりに、問い続けなければならない。総選挙の結果がどうであれ、弱肉強食の野蛮な社会を拒否する市民の声と行動を、間断なく続けよう。ニューヨーク市長選が示したように、『時には「善き者」が勝つ』のだから。
周到に準備、計画されたベネズエラ侵攻
年明けから耳を疑うようなことが起こされた。1月3日、トランプの命令で米軍がベネズエラの首都カラカスなどに大規模に空爆などの攻撃をかけ、「電撃的な地上侵攻」によってマドゥロ大統領夫妻を拘束・拉致し、ニューヨークに連行した。この攻撃で、約半数に上る民間人含め100人以上のベネズエラ側の人々が殺された。すでにトランプ政権は9月以降、ベネズエラ周辺で「麻薬運搬船」と勝手に決めつけた船に対する攻撃を繰り返して120人以上を殺害してきた。民間機に偽装して攻撃する国際法違反、戦争犯罪のケースも暴露されている。今回の攻撃は何カ月も周到に準備、計画されたものだと言われる。「反体制派指導者」マリア・コリナ・マチャド(彼女は米軍の介入を叫び、イスラエル支持を公言する)のノーベル平和賞受賞も米トランプ政権の暗躍の結果との疑念も「周到な準備」の一つだろう。
CIA(米中央情報局)などを使って資金をばらまき、対政府批判活動の組織化やスパイ工作も大規模に展開されたことは容易に想像できる。大統領警護支援に派遣されていたキューバの戦闘員がほぼ皆殺しにされたのも、警護隊や軍の一部が買収されていたとの疑いもある。いずれにせよ、今回の侵攻作戦は最初から最後まで謀略そのものであり、国際法違反、戦争犯罪の蛮行である。
中南米での米国による血塗られた歴史
トランプは、ベネズエラの土地も埋蔵量世界一といわれる石油も「開発したのは米国であり、もともと米国のものだ」と当たり前のように言う。ベネズエラでは長年、こうした米国資本とそれに結託した国内の大金持ち勢力が富を独占し、大多数の民衆が貧困に苦しめられてきた。そうした極端な貧富の格差をなくし、石油をはじめとした社会的な富を貧困にあえぐ民衆に取り戻そうと改革を目指す反米左派政府を誕生させた。20数年前から今日に至っている。キューバ革命以来、中南米諸国では同様の改革が多くの国、地域ですすめられた。米国は、利権を失うことを恐れ、嫌い、これら反米左派政権に対しては経済制裁などを通じて経済を混乱させ、社会不安を煽り、時にはクーデターを起こさせ、時には、「低強度紛争」と呼ばれる軍事戦略で内戦を起こさせ社会改革をつぶし、体制の転覆を繰り返してきた。
1954年、米国が画策したクーデターにより、土地改革を進めていたグアテマラのアルベンス政権が崩壊。61年には、CIAが支援した亡命キューバ人部隊がカストロ政権の転覆を試みた「ピッグス湾事件」が発生。70年代以降は左派勢力の台頭を阻止する名目で、アルゼンチンやチリなどで軍事クーデターを起こさせ軍事独裁政権を擁立した。81年、レーガン政権はニカラグアに左派政権が誕生すると、軍事介入。エルサルバドル内戦でも軍事支援を行い、左翼ゲリラの封じ込めを図った。83年のグレナダ侵攻では、東カリブ海諸国軍を従えた米軍部隊が上陸し、短期間で反米政権を崩壊させた。89年、ブッシュ(父)政権はパナマに侵攻し、(米国が麻薬取引の罪で起訴した)最高実力者ノリエガ将軍(米国が育てたとされる)を拘束し、失脚に追い込んだ。
これらいずれの米軍侵攻の背景には、自ら「米国の裏庭」と位置づける中南米での石油やパナマ運河の権益など米国を拠点とする多国籍企業(グローバル資本)の利権を維持する狙いがあったことは明らかである。これらの蛮行に対して、国連総会などで「国際法の著しい違反」と非難する決議を可決したが、米国は、今回のトランプのように口にはしなかったが「国際法は必要ない」という態度に終始してきた。
「第2のキューバ」を阻止し、今やほとんど左派政権となっている状態にくさびを打ち込むこむことが、石油以上に大きな狙いと言える。中南米だけではない。「大量破壊兵器を保有している」(デタラメであったことが後に判明)ことを口実に大規模に軍事介入したイラク戦争は記憶に新しい。そして今また、イランに対する軍事介入を窺っている。
トランプ政権や多国籍企業のこんな好き勝手な振舞いをこのまま放置すれば、世界と「99%」の人々は弱肉強食の野蛮な時代に引き戻される。トランプのこのギャングでしかない強欲な野望と野蛮な行いに反対の声をあげ行動することが緊急に求められている。この当たり前の行動に背を向け、トランプ政権の野蛮な行動に明確に反対しないことは、加担でしかない。プーチンのウクライナへの軍事侵攻や中国の台湾への「圧力」を「力による現状変更」として威勢よく非難してきたものの多くが、トランプのこの行いには黙っている。中には「『力による現状変更』そのもので、中露を非難する論拠と矛盾する」(小野寺五典・安全保障調査会長)と発言するものはいるが、高市首相は「在ベネズエラ日本人の安全確保」を言うだけで黙ったままだ。
「死の商人」国家へまっしぐらの高市政権
その高市政権が、1月23日召集の通常国会冒頭で衆院解散を宣言し、総選挙実施の挙に打って出る意向を示した。「支持率が高い」うちに不安定さを突破しようという党利党略そのものである。高市政権の「成長戦略」の一つは「防衛産業」(武器商売)の成長、拡充である。それを梃に「日本経済を成長させる」というもの、つまり「死の商人」国家づくりである。
与党時代の公明党斉藤鉄夫代表は「死の商人化だけは避けなければいけない」と言ったが、現在の高市政権にとって「死の商人」はそれほど忌み嫌うものではないらしい。それどころか「防衛産業」(軍需産業)こそ「日本経済成長の要」と言って憚らない。
日本の軍需企業の筆頭は三菱重工や川崎重工だ。防衛省によると24年度の調達品契約実績は、三菱重工が1兆4567億円、川崎重工が6383億円。武器輸出の完全自由化が未だの日本でこの売り上げ実績は相当なものだ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が今年発表したデーターによれば、24年度の軍事関連販売額のトップ10は、ロッキード・マーチン(米国)を筆頭にBAEシステムズ(英国・4位)、ロステック(露・7位)、中国航空工業集団(8位)、中国電子科技集団(9位)と続く中(他はすべて米国企業)、三菱重工が32位、川崎重工が55位、富士通が64位、三菱電機が76位、NECが83位と百傑入りした。
つい最近までは大ぴらに営業できなかった「死の商人」たちが、大手を振るうようになった。家電や自動車よりも消耗、消費の激しい兵器の方が儲かるのだ。しかも軍需産業のすそ野は広い。国内では、上記以外に、東芝、IHI(旧石川島播磨)、SUBARU、日立、沖電気、コマツ、ダイキン、ENEOS、出光興産など、多種、多様な業界が群がっている。
これら日本の軍需業界はさらなる高みを目指す。世界のトップ10はともかく、ドイツなどのヨーロッパの兵器輸出国や最近ポーランドと147億6000万ドル(約2兆470億円)の兵器輸出契約を締結した韓国を意識して、「追いつけ追い越せ」の勢いである。すでに政府は、「防衛費」を国内総生産(GDP)比2%に増額する数値目標を2年早める「前倒し」で、2025年度の「防衛費」と関連費の総額が約11兆円になる補正予算を成立させた。次の一手は「防衛装備移転」の大幅緩和に踏み込んだ5類型(救難、輸送、警戒、監視、掃海に限定)の撤廃だ。5類型が撤廃されれば販路は海外に広がる。すでにオーストラリアなどいくつかの国との間で武器完成品や受注や新たなステルス戦闘機の共同開発を進めている。これら、すでに決まっている武器輸出をスムーズに進め、販路を拡大するために、あっという間に「5類型」も投げ捨てる。また、ウクライナへの武器輸出を念頭に紛争中の国への輸出を禁ずる「3原則」の見直しも口にしだした。中国との軍事を含む緊張激化が止まらない。否、止めようとしない。この緊張状態でこそ武器商売にとって増殖できるもっとも都合の良い環境だからだ。
死の商人が大手を振るう社会であっていいのか。日本に住む市民の一人ひとりに、問い続けなければならない。総選挙の結果がどうであれ、弱肉強食の野蛮な社会を拒否する市民の声と行動を、間断なく続けよう。ニューヨーク市長選が示したように、『時には「善き者」が勝つ』のだから。
「むすぶ」目次 (2026年1月号) ― 2026/01/19 06:43
■ 今月を視る / 弱肉強食の野蛮な社会を拒否する市民の声と行動を!
■ アピール / 東大阪市・大阪市の中学校で「自衛隊職場体験」多数実施
学校に再考を迫る運動スタート 大阪市立中学校元教員 松田幹夫
■ 沖縄レポート /「二度と戦場にしないで」県内新聞・声欄の沈痛な訴え
今こそ武力なき平和を 沖縄国際大元講師 西岡信之
■ 読者つうしん / 金儲けしか考えない介護事業所“ビーナス”
さかいユニオン 美佐田 和之
■ 読者つうしん / 平和な社会を近所から、粘り強い運動で 富田林市 中條千尋
■ Information / 2025年会計報告 / Editorial Peace Note
■ アピール / 東大阪市・大阪市の中学校で「自衛隊職場体験」多数実施
学校に再考を迫る運動スタート 大阪市立中学校元教員 松田幹夫
■ 沖縄レポート /「二度と戦場にしないで」県内新聞・声欄の沈痛な訴え
今こそ武力なき平和を 沖縄国際大元講師 西岡信之
■ 読者つうしん / 金儲けしか考えない介護事業所“ビーナス”
さかいユニオン 美佐田 和之
■ 読者つうしん / 平和な社会を近所から、粘り強い運動で 富田林市 中條千尋
■ Information / 2025年会計報告 / Editorial Peace Note