今月を視る(「むすぶ」2020年4月号より)2020/05/13 09:17

ポスト「新型コロナ」社会を見据え
平和で持続可能な社会に向けて変革の行動を!

「緊急事態」政治は戦争政策の一環
4月7日、緊急事態宣言が発令された。東京、大阪など7都道府県が対象地域となったが、4月16日には対象地域が全国に拡大された。4月7日の「宣言」には70%以上、4月16日の「宣言」の全国拡大には80%以上が「妥当だ」とした(毎日新聞世論調査)。緊急事態宣言は単に「国民に向けた政府の強いメッセージ」ではない。恐ろしいのは、「緊急事態」政治が歴史的に見て戦争政策の一環であり、権力による権利と自由の制限を含む強権発動だとの認識が全くないことだ。そもそも感染症を巡る問題・対策は「戦争」ではない。戦争は敵のせん滅を目的にするが、感染症対策はウイルスせん滅を目的とすることではない。旧来のインフルエンザウイルスによる感染症は毎年流行するが、この対策はウイルスの撲滅にではなく、いかに被害を低減させるかということにある。これは言葉の使い方ではなく、対処の方向性が全く異なる問題である。人々に「戦時」や「非常事態」を強いる最大の狙いは、政権の「新型コロナ」対策を含む政策への批判を封殺することにあるということを、一時も見過ごしてはならない。「今、批判をしている時間はない」「対立ではなく団結するとき」はまやかしであり、だまされてはならいとはっきり言わなければならないときだ。

感染拡大事態の責任の明確化と謝罪要求を
「歴史の教訓」が追いやられている。現代版「欲しがりません。勝つまでは」が大手を振るうようになった。何の躊躇もなく、「一人ひとりが我慢するとき」「国民の一致団結が難局を乗り越える」が叫ばれる。ここにあるのは、思考停止による自主判断の放棄である。「とにかく家から出ないで」「一人ひとりの責任と自覚」が氾濫する。だが、これを声高に叫ぶ人間ほど、自らの責任には無自覚である。その筆頭は、安倍首相であり、小池東京都知事、吉村大阪府知事らが続く。水際対策に完全に失敗し、「オリンピックがどうなるか」だけに腐心した結果、必要な検査もせず、感染者を蔓延させた無策と失政の責任を一切語ろうとしない。この点に関しては、政府に追随し、「オリンピックどうなる」報道に終始した日本のメディアの責任も大きい。吉村知事は「緊急事態宣言による制限と補償はセット」を言うが、それだけでは不十分だ。もう一つ必要なのは、今日の状況に至った責任の明確化と謝罪だ。セットを強調する吉村大阪府知事にしても医療体制の縮小を推進してきた責任を一切語ろうとしない。責任の明確化と謝罪のない「緊急事態宣言」はけっして命を救わない。
今、政府と地方行政に対して、感染拡大地域への医療の集中的な投入、膨大検査の実施、「宣言」による生活崩壊への支援・補償などの要求を具体化し、行動すると同時に、責任の明確化と謝罪を要求することは極めて重要である。

ポスト「新型コロナ」社会を見据えた取り組みへ
他方、「森かけ」、「桜を見る会」、「東京高検検事長の定年延長」問題、沖縄、日韓問題など、新型コロナ」問題に埋もれさせてはいけない問題が山積する。辺野古新基地問題は、沖縄でも感染拡大が深刻な状態にあるにもかかわらず、関係業者の従業員に感染者が出るまで工事を止めず(4月16日まで)、4月21日には辺野古新基地建設の「設計変更」申請を強行した。6月7日の県議選をはじめ知事の「不承認」を支える取組みのいっそうの強化が求められる。
一方、4月15日、新型コロナウイルスの感染危機という状況に直面する中で行われた韓国総選挙は、文在寅政権の「圧勝」となった。ドライブスルー方式を含む膨大PCR検査の実施などで感染拡大の抑え込みに成功したことが「圧勝」の主要因と報道されるが、低・中所得者に対する積極的かつ迅速な生活支援策実施が大きな支持を得たことは明らかだ。文政権が過半数を得たこと、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」前代表の尹美香(ユンミヒャン)氏が「共に市民党」で当選したことは、ローソク革命がめざす社会の変革にさらに確かな展望を与えたと言える。
今、困難に加え課題は山積だが、ポスト「新型コロナ」社会を見据えた取り組みの強化が求められる

「むすぶ」目次(2020年4月号)2020/05/13 09:19

■ 今月を視る/ ポスト「新型コロナ」社会を見据え
平和で持続可能な社会に向けて変革の行動を! 
■ OPINION/ いのちを守るため、安倍政権の支配強化を許さない 事務局 湯川 恭
■ Q & A <NO,107>/ 今、市民の広範な力で
              イージス・アショア配備STOPを!
■ 映像案内/「主戦場」 監督・脚本:ミキ・デザキ  憲法9条の会・関西 堤 淳雄
■ 読者つうしん/ 「学校休校」の現場より   大阪市小学校教員・T
■ おしらせ & 編集後記

今月を視る(「むすぶ」2020年5月号より)2020/05/27 15:55

軍事費削って、「コロナ対策」に予算回せ
世界共通の言葉と要求で今こそ世界を軍縮へ導こう!

軍事費削減し、緊急災害支援金の財源を捻出した韓国政府
 軍備増強を続けながら、市民のくらしといのちを守ることなどできない。韓国政府は7兆6千億ウォン(約6700億円)規模の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)緊急災害支援金(全世帯に支給)の財源を用意するために、今年の国防予算50兆2千億ウォン(約4兆4000億円)から、9897億ウォン(約850億円)を削減することを決めた。4月16日に国会に提出した第2次補正予算によって明らかになった。F35A戦闘機や海上作戦ヘリなど外国製武器の購買予算の中から、契約や試験運営が遅延している事業の支出を主に減らす方針だという。F35A戦闘機3000億ウォン、海上作戦ヘリコプター2000億ウォン、広開土3イージス艦事業1000億ウォンなど。軍施設と鉄道投資事業も先送りや削減で資金を節約するという。莫大な軍事費からすれば850億円は約2%程度で、しかも来年への「先送り」だが、世界でこうした措置に踏み切るのは、今のところ韓国政府だけである。この措置を韓国の「緊急的例外措置」にとどまらせず、世界の共通する要求として広げることが今極めて重要だ。
韓国政府の動きの背後に市民の声がある。ロウソク革命で大きな役割を果たした韓国最大の市民運動団体・参与連帯は4月8日、「増え続ける国防費を大幅に削減し、新型コロナウイルスの被害克服のために投入すること」を求める声明を発表している。声明は、新型コロナウイルスの世界的拡散という歴史的な事件を前に、「緊急的例外措置」にとどまることなく、「国家の安全保障」と「人間の安全保障」の関係を見直すという世界的で根本的な問題提起をする。さらに「攻撃用」兵器を買うための予算を削減するよう求める。その額は16兆6804億ウォン(約1兆4900億円)である。

世界を軍縮へと導く新たな機会-日本で具体的要求を
「軍事費削って暮らしに」は私たちの一貫した主張だが、残念ながらこれまではキャンペーンの域を超えることはなかった。だが、今こそ、「軍事費削って暮らしに」の要求を具体化し、突き出す時だ。
 辺野古新基地建設の総額2兆5千億円(沖縄県試算)。イージスアショア2基で総額1兆円。F35は147機で6.2兆円。オスプレイ、グローバルホーク、さらに南西諸島への自衛隊基地建設。これらの全てが文字通り〝不要不急〟であるだけでなく、壮大な無駄遣いである。
 「軍事費削って、コロナ対策に」、世界共通の言葉と要求が今リアリティーを持つ。「コロナ禍」の先、世界を軍縮へと導く新たな機会とすることが必要だ。

辺野古新基地建設は撤回を!
玉城デニー沖縄県知事も5月20日、県内外にLINEやTwitterでこう呼びかけた。「現在、コロナ感染で窮地にある県民の生活が第一です!そのような現状の中、本当に今、莫大な予算をかけた辺野古新基地の建設が必要でしょうか? この予算で今、助けるべきは県民の命を守る医療の現場、そして県民の暮らしを守るべき生活の補償ではないでしょうか?」
 続けて「5月19日、世論の強い批判を受けて政府は検察庁法改正案を撤回。総理は『国民の理解なしに進められない』とコメントされたとも。2兆5千億の予算、護岸崩落の恐れがある軟弱地盤、多くの希少種が生息し環境省が重要海域に指定する『辺野古新基地建設埋めたて工事』も国民・県民の理解は得られない。撤回を!」

安倍内閣の支持率は、ついに27%まで落ち込んだ(毎日新聞5/24)。市民のくらしといのちを守るのではなく軍事大国に固執し、「コロナ場泥棒」の所業で乗り切ろうとあがく政府への怒りだ。平和で持続可能な社会へ、率先した軍事費削減を政府に求め、世界を軍縮へと導くよう訴えるときだ。

「むすぶ」目次(2020年」5月号)2020/05/27 15:56

■ 今月を視る/ 軍事費削って、「コロナ対策」に予算回せ
世界共通の言葉と要求で今こそ世界を軍縮へ導こう! 
■ 報告/ 2019年以降の「むすぶ会」活動をふりかえって  事務局 豆多敏紀
■ Q & A <NO,108>/ 防衛省 イージス・アショアの「新屋配備」を断念
           政府は計画自体の白紙撤回をすべきだ (その2)
■ Book Corner/「森アッパの日本語・朝鮮語比較論」 耕文社 医問研 森國悦
■ 読者つうしん/ 松井市長、あなたはどこまでの風景を見て
          「コロナ専門病院化」発言をしたのか 堺市 石黒和代
■ おしらせ & 編集後記