今月を視る (「むすぶ」2024年1月号より)2024/01/17 09:46

パレスチナ人の自由が達成されるまで、私たちの自由は不完全である(ネルソン・マンデラ)
即時停戦が自由と正義実現への道筋をつくる

災害救援救助体制に進展見られず
2024年が悲惨な状況をともなって幕を開けた。能登半島地震は多くの人々の命を奪い、日常の平穏な生活を一瞬にして破壊した。犠牲者を悼むとともに被災された方々には心からお見舞い申し上げる。
日本は世界でも有数の大規模地震発生国であり、ここ数十年だけでも大規模災害が何度か発生している。だが、これらの経験は生かされることはほとんどない。本来、災害救助の主力となる消防などの体制は増強されたようには見えず、その場限りの「自衛隊投入」(自衛隊にしても災害救助の専門部隊はない)で従来からの対応を一歩も出ることはない。

危なかった志賀原発
 視点を変えてみると原発の問題が浮かび上がる。今回の地震でもあわやと思わせる深刻な事態が発生していたことはあまり報道されていない。
震源に近い北陸電力志賀原発(石川県志賀町)で外部電源の一部を喪失し、変圧器からの油漏れや核燃料プールの水漏れなどがあった。『地震で同原発の1、2号機の変圧器の配管が壊れ、計約7100リットルの油が漏出。外部から受電する系統の一部が使えなくなり、別の系統に切り替えて電源を確保したという。また、地震の揺れで1、2号機の使用済み核燃料プールの水が計約420リットルあふれた。津波でなく、地震の揺れだけで一部電源喪失した可能性がある。この事実は非常に重い。
さらに被害の大きかった珠洲市にはかって関西電力、中部電力、北陸電による「珠洲原発」の建設計画があった。幸いにも住民による根強い反対運動で計画が中止となったが、もし候補地とされた高屋町(今回の震源となった地区と隣接する)に建設していたら、「大変なことになっていた」ことは間違いない。もはや震災被害を見るとき、原発を外すことは実情の正確さを欠くものとなる。

即時停戦こそ私たちの自由の始まりであり、前提
 世界に目を転じる。露・ウクライナ戦争ではウクライナの「反転攻勢」は「失敗」の見方が強い。すでにウクライナ側だけでも喪失(戦死者、重傷者の合計)は、およそ20万人を超えるとされる(世界1月号 松里公孝東大教授)。今、ウクライナにとって必要なのは、軍事的勝利ではなく、即時停戦だ。「ロシアの侵略を追認するのか」との論議はあるが、「停戦」は「屈服」ではない。「停戦」が不正義や戦争犯罪を消してしまうわけではない。「停戦」から「和平」に向けた交渉過程でこそ国際法・人道法に基づく正義は戦争以外の方法で実現されなければならないし、それは可能だ。
 イスラエルによる「パレスチナ人皆殺し作戦」は今すぐ止めさせなければならない。米国政府のように「やりすぎは効果的でない」からではない。日本政府のように「どっちもどっち」とばかりに「ハマスの幹部3人を資産凍結の制裁対象に加える」ことを閣議決定する一方で「ガザへの人道支援」の体裁を整えておきたいからではない。南アフリカ共和国政府が、イスラエルを国際司法裁判所(ICJ)の法廷でジェノサイドの罪に問うことで世界に示したように、イスラエルが70年以上にわたってパレスチナ民衆に行ってきた差別、占領、封鎖、空爆、軍事攻撃・抑圧のすべて、すなわちイスラエルによる植民地政策のすべてが否定されなければならないからだ。「パレスチナ人の自由が達成されるまで、私たちの自由は不完全である」(ネルソン・マンデラ)。即時停戦はその始まりであり、前提である。

沖縄のあきらめない闘いに全国から応えるとき
 政府は1月10日に国交相の代執行による辺野古大浦湾側の埋め立て工事に着手、強行した。工事強行に抗議し、誠意ある話し合いを求める県民や沖縄県玉城デニー知事に対して、政府は紋切り型の「丁寧な説明」を繰り返す。だが「丁寧な説明」とはまともな議論も対話もしないとする一方的な対話拒否宣言である。琉球新報の調査(1月10日付)によると、「辺野古代執行」について、沖縄県在住者の86%が「知っている」と答え、県外在住者の48%が「知らない」と答えている。大浦湾の埋め立てによる基地建設は物理的にも不可能であることはすでに明らかだが、無謀な自然破壊を一刻も早く止めるためには、代執行を「知らない」と答えた県外在住者を含め全国で「真っ当な論議」と「自分事としての対話」をつくることが何よりも求められている。

「むすぶ」目次 (2024年1月号)2024/01/17 09:54

■ 今月を視る / パレスチナ人の自由が達成されるまで、私たちの自由は不完全である
              即時停戦が自由と正義実現への道筋をつくる
■ 解説 /「原発3倍」は脱炭素の切り札か?    事務局 岡本 誠 
■ 沖縄レポート / 許されない辺野古代執行の暴挙 ― 断念するまで闘いは続く
             沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之                                 
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 Ⅱ 『ブナの木山の水小僧』『ドンドンクジラ』
子どもコンサート・元スタッフ 三沢隆広
■ 図書あんない /『平和に生きる権利は国境を超える』 猫塚義夫 清末愛砂 著 
豊岡市 判田明夫  
■ 読者つうしん / ガザ虐殺と堺大空襲  堺市 渕上經子
■ Information & Editorial Peace Note