今月を視る (「むすぶ」2023年2月号より)2023/02/18 11:39

ロシアによる軍事侵攻から1年-増え続ける死傷者
「勝利」ではなく、世界のすべての紛争地に平和を!

ウクライナ軍への武器供与など軍事支援に断固反対
昨年2月24日のロシアによるウクライナへの軍事侵攻=侵略戦争開始から間もなく1年となる。この1年間の戦争によるウクライナ、ロシア双方の死傷者は両政府が明らかにしないため正確にはわからないが、20万人に上るとの報道もある。さらにウクライナの子供を含む非戦闘員の死傷者も数万人に上るとも報道されている。これ以上の死傷者を生み出さないための国際的な政治交渉が何より優先されなければならない。
しかし、日本のメディアの報道は「戦況」を中心にしたものであり、ウクライナに平和を実現するために今何が求められているのかを伝えようとする姿勢はほとんどない。「ウクライナに平和を」ではなく「ウクライナに勝利を」へと世論を巧妙に誘導する動きすら見える。これ以上の犠牲を生まないために、ゼレンスキー大統領が叫ぶ「武器を! 武器を! 武器を! 」ではなく、戦闘の即時停止に向けた国際的な政治、外交交渉こそが求められているのだ。
この間、NATO諸国などがウクライナ軍に対する戦車、戦闘機などの最新鋭武器供与の動きを強めているが戦闘を激化するだけであり、「戦果をあげなければ有利な交渉はできない」との軍事優先の姿勢に私たちは断固反対である。戦闘の即時停止、国際世論を背景にした交渉でロシア軍のウクライナからの撤退を実現することは可能である。

尖閣周辺の緊張激化はほんとうか?
 「台湾は明日のウクライナ」を声高に叫ぶ勢力は、東アジアの安全保障環境が急激に悪化していると声をそろえる。彼らにとって、その象徴的存在の一つが尖閣諸島周辺の海域である。そのために、メディアを総動員して尖閣諸島周辺の海域に日々緊張が高まっていると大々的に宣伝している。中国公船(中国海警局所属船舶など)の「領海侵入」はトップニュース扱いで政府発表がそのまま垂れ流される。しかし、中国政府の「言い分」はもちろん「領海侵入」に至る具体的な経緯や詳細が報じられることはまずない。尖閣諸島周辺の海域で緊張と混乱は急速に高まっているというのはほんとうなのか。
毎日新聞(1月25日付)によると、中国公船の接続水域(無害通航であれば沿岸国は規制できない。国際法上公海に近い扱い)では航行が2022年の1年間で336日とほぼ毎日だったものの、「領海侵入」の日数は37日で前年(21年)の40日から減っている。さらに、「隻数で見ると、22年に接続水域に入ったのは延べ1201隻と、21年の1222隻から減った。領海侵入は22年が延べ103隻で、21年の延べ110隻を下回った。」という。これは、国有化以降で最多の13年(延べ188隻)の5割強である。実際は、ことさら緊張が持続的に高まっているという状況にはない。
ところで、中国公船の「領海侵入」はどのような状況で起こっているのか。断片的な情報しかないが、「漁船の監視や追跡」によるものとの見方が多い。だが、日本側の漁船が尖閣周辺で頻繁に漁業を行っている事実はない。八重山漁協(石垣市)の関係者に聞くと「漁協の船であの海に行く船はいないよ。メリットよりもリスクの方が大きいから」という。また、「いま石垣から行くのは、尖閣は日本領土だと主張する目的の船くらいだ」とも。さらに「石垣から尖閣までは約170キロメートル離れており、漁民にとって漁船の燃料が高騰した影響も大きい。一方で魚価は低迷。大型船で数日かけて漁をしなければ採算はとれない。尖閣周辺は漁船が安心して操業を続ける環境にはない」(日経2020年8月17日)。
この事実から浮かび上がるのは、「漁船」を装った極右団体による挑発行為が中国側とのトラブルを増加させているという疑念だ。昨年の参議院選の政見放送で右翼政党が「漁船を尖閣諸島に20数回航行させた」と公言していた。1月30日には、極右の中山義隆石垣市長が乗船する「調査船」の動きに合わせて中国海警局の船が航行し、その延長線上で「領海侵入」が起こっている。尖閣諸島周辺の緊張は作られたものであることがはっきりと見えてくる。
そのうえ、政府は新「安保3文書」で海保能力強化、「自衛隊と連携」を明記し、海保を自衛隊の指揮下に置くとの方針を打ち出した。尖閣諸島の領有をめぐって軍拡をすすめ威嚇合戦を繰り広げるのは、もう止めるべきだ。尖閣諸島周辺を「争いの海」ではなく「平和・友好の海」にするため大胆な軍縮こそが求められている。この声を広げよう。

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