今月を視る(「むすぶ」2012年2月号より)2012/02/20 13:28

命と人権を脅かす基地は撤去しかない!

日米両政府は2月8日、「在日米軍再編計画見直し共同発表」を公表した。共同発表の最大のポイントは、「両国政府は、再編のロードマップ(行程表)に示されている現行の態勢に関する計画の調整について、特に海兵隊のグアムへの移転およびその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことについて、公式な議論を開始した」ことである。2006年に合意した「米軍再編のロードマップ」によって、これまで固執してきた「普天間飛行場の辺野古移設と海兵隊約8000人のグアム移転、嘉手納よりも南にある基地の一括返還を一つのパッケージ」とする位置付けを放棄し、在沖縄米海兵隊のグアム移転を先行して進めるとしたのである。
今春にも外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、再編に関するロードマップを修正(海兵隊のグアム移転の時期、移転経費の日本側負担の見直しなど具体化)。その後、首相が訪米し、オバマ大統領と合意内容を確認するというスケジュールらしい。
また、「これまでの協議で米側は、海兵隊のグアム移転に関し、行程表で予定していた8000人を約4700人に縮小して移し、残りは米軍岩国基地(山口県岩国市)やハワイ、オーストラリアに移転させる案を打診。日本側は5施設・区域のうち、キャンプ瑞慶覧と牧港補給地区の先行返還を求めた」と伝えられている。
共同発表は、一方で、『辺野古の新基地建設計画は「引き続きコミット」し、「両国は、普天間飛行場の代替施設に関する現在の計画が、唯一の有効な進め方であると信じている」』、『これまでの日米合意で約1万人としてきた沖縄残留海兵隊については、従来合意通りの規模を「確保していく」』と名護・辺野古新基地建設を放棄したわけではないこと、2006年ロードマップの基本に変更がないことを強調している。

だが、この「強調」は、米側にとっては、もはや建前にすぎず、パッケージの放棄による辺野古移設の棚上げは、限りなく断念に近いと言われている。「辺野古移設計画を建前として堅持しつつ、しかし現実には、移設が進まなくても不利益にならないよう、事実上、移設を棚上げした」というのが正直なところだろう。

今回の共同発表の背景には、米国の「テロとの戦争」による極端な財政悪化、対中国をにらんで、グアムを拠点とする新たな米軍のアジア太平戦略の再編とその実行を急ぐなど米側の事情によるところが大きいことは間違いない。だが、最大の要因は、「辺野古移設の見通しが全く立たない」ことである。
このことが、「パッケージにこだわって、このままの膠着状態を続けることで、米国の国益を損なう」という見方を米議会や政府の中に生み出してきた。その意味で、地元名護市の強い反対の意思表示と闘いをはじめ、県民ぐるみの名護・辺野古新基地建設阻止の闘いの着実な前進と言える。
こんな状況の中で日本政府が相変わらず辺野古移設の堅持を強調しているのは、かつて「容認」の仲井真知事や佐喜真宜野湾新市長の翻意を期待し、その可能性がある、とみているからであろう。大手マスメディアも「普天間固定化の懸念」をわざわざ印象付けようとしているようだ。
もはや、普天間基地の辺野古移設が「極めて困難」とだれもが認識する状況にある。1995年、少女暴行事件に対する沖縄県民の怒りと闘いは、「普天間返還」を導き出した。政府が期待する知事らの翻意を許さないために、「普天間基地は撤去するしかない」ことを大きな声で要求しよう。今、求められているのは、沖縄からの島ぐるみ闘争規模の意思表示と全国からの連帯である。

「むすぶ」目次(2012年2月号)2012/02/20 13:31

■ 今月を視る/ 命と人権を脅かす基地は撤去しかない!
■ 報告/ 関西の自治体における電力調達と発電実績(その4)
■ Q&A/沖縄の負担軽減とは全く無縁「在日米軍再編ロードマップ見直し」   
■ 読書案内/『ピース・ナウ 沖縄戦 無戦世界のための再定位』 石原昌家 編
■ 読者つうしん/10年間に30回のインドネシア訪問 すっかり現地に同化して 遠山勝博
■ 会計報告 & お知らせ