今月を視る(「むすぶ」2019年9月号より)2019/09/16 10:22

ろうそく市民 VS 安倍改憲勢力
植民地支配責任の清算こそ真の解決への道筋だ!

冷戦反共体制の枠組みから脱皮-GSOMIA破棄
 日本製鉄など日本企業に対して元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決に端を発した
日韓両政府による政治的対立が厳しさを増し、戦後最悪という事態に陥っている。日本政府による「輸出手続き優遇措置国」から韓国を除外するという報復措置によって対立はエスカレート。韓国政府は7月22日、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄することを決定。この決定に対して、日本政府はもちろんのこと米国政府も激しく反撥非難の声をあげている。日本のメディアのほとんども「朝鮮半島の平和と安定を損なう愚かな決定」と声をそろえている。
だが、朝鮮や中国に対する日米韓の軍事的優位こそが東アジアの確かな安全保障とするのは、古い冷戦体制の発想でしかない。そもそも日韓のGSOMIAは韓国市民の強い反対を押し切って、朴槿恵政権が2016年に締結したものである。もともと文在寅大統領は選挙公約にGSOMIAの見直しを掲げていたし、8月15日にソウル光化門広場で開催されたキャンドル市民集会にはGSOMIA破棄のスローガンが掲げられていたように、ろうそく市民の意思は明確にGSOMIA破棄である。今回の韓国政府のGSOMIA破棄の決定は単に日本の輸出管理手続き優遇国から韓国を除外するという報復措置への対抗措置にとどまらず、かつての冷戦反共体制の枠組みから脱皮し、新たな朝鮮半島非核化、東アジア平和構築への新たな枠組みへの第一歩となる可能性がある。米国と日本は軍事的関与ではなく、対話による朝鮮半島非核化と東アジアの平和構築への選択を迫られている。

ろうそく革命が生み出した文在寅政権への敵意
以下は、週刊ポストの韓国ヘイト特集に対する毎日新聞の9月4日付け「週刊ポストの特集 嫌韓におもねるさもしさ」を標題とする社説の一部である。
「徴用工問題や慰安婦合意をめぐる文在寅(ムンジェイン)政権の対応は、確かに国家間の信義にもとる点がある。民主国家だから政治的な批判の自由は、最大限保障されなければならない。
 ただ、その範囲を超えて相手国民への差別につながるような言論は、メディアの責任として排除する必要がある。差別は人間存在の根源を傷つける暴力であるからだ。」
  週刊ポストの特集がヘイト・クライム(憎悪犯罪)であることの指摘、断罪すべきであることは論を待たないが、問題は「徴用工問題や慰安婦合意をめぐる文在寅政権の対応は、確かに国家間の信義にもとる点がある。」と論証もなしにさらりと言ってのけている点である。『悪いのは文在寅政権であり、韓国や韓国人に責任はない』ということか。だが、今回の大法院判決も、「慰安婦合意」の「癒し財団」解散も、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄も、そして、何よりも植民地支配責任の清算を求める要求は韓国のろうそく市民がめざす民主主義運動の過程にある要求であることを忘れてはならない。今日の日韓関係をめぐる対立の本質は、韓国ろうそく市民の行く手を阻もうとする安倍改憲勢力の文在寅政権への攻撃と言っても過言ではない。

「二国間合意が絶対」でなく「人権に勝る国益も公益もない」が世界の常識
反共軍事独裁の朴正煕政権だったから植民地支配責任をあいまいにした「日韓請求権協定」が締結されたのであり、父の軍事独裁を容認し、権力による不正を行ってきた朴槿恵政権だったから、被害者を排除した「慰安婦合意」がなされ、反共冷戦思考の日韓GSOMIAが締結されたのである。文在寅政権は、軍事独裁と対決し、民主化を求めて闘い続けてきた民衆がつくりあげた政権であり、安倍改憲勢力にとって都合のいい政権ではない。文在寅政権を攻撃し、ろうそく革命の行く手を阻むことが彼らの目的だ。
日本政府は、廬武鉉政権下で文在寅氏も参加する政府機関が「元徴用工問題は韓国政府に責任がある」ことを認めていたと攻撃するが、これは事実に反する。2005年4月27の第2次民官共同委員会会議で当時の文在寅民政首席秘書官は“個人の参加や委任のない状態で、国家間の協定によって個人の請求権をどのような法理で消滅させることができるのか検討が必要だ”という意見を提示している。
国家間の協定によって個人の請求権を消滅させることなどできない。「人権に勝る国益も公益もない」が世界の常識だ。

「むすぶ」目次(2019年9月号)2019/09/16 10:23

■ 今月を視る / ろうそく市民 VS 安倍改憲勢力
植民地支配責任の清算こそ真の解決への道筋だ! 
■ OPINION / 中距離核戦力(INF)廃棄条約失効と核兵器禁止条約 東京 高瀬晴久 
■ Q & A <NO.102> / 「イラン核合意」の危機をつくり出したトランプ政権
■ BOOK CORNER / 『漂流するトモダチ アメリカの被ばく裁判』 事務局 岡本 誠                        
■ 読者つうしん / 沖縄一坪反戦地主運動の今     堺市 豆多敏紀
■ おしらせ & 編集後記