今月を視る(「むすぶ」2019年11・12月号より)2019/12/05 17:44

GSOMIA破棄は実現しなかったが…
  「朝鮮半島平和プロセス」を開く闘いは続く!

“ローソク市民”が切り開いた地平に立って
11月22日、韓国政府は「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)の破棄を凍結する」ことを失効寸前になって日本政府に通告した。韓国政府は「1年延長ではなく、破棄はいつでもできる」と強調しているが、GSOMIAの破棄が実現しなかったのは東アジアの平和を希求する人々にとって極めて残念なことである。日本のメディアが宣伝する「日韓の安全保障にとって不可欠な協定」とは全く逆にGSOMIAは朝鮮半島のみならず東アジアの平和と安全にとって百害あって一利なしの存在だからである。そもそも日本と韓国のGSOMIAは韓国の進歩勢力や市民が一貫して反対してきたものであり、執拗で威圧的な日米の圧力を背景に朴槿恵政権が妥協して2016年11月に強行成立させた協定である。
現在の韓国世論調査でも51%が破棄を支持し、破棄に反対はわずか28%という民意とかけ離れた軍事協定である。したがって、GSOMIAの破棄、失効は朝鮮半島と東アジアの平和の危機などではなく、平和を築く新たなチャンスであった。米国や日本の介入の余地を極力減らし、朝鮮半島平和プロセスをすすめるうえでGSOMIAは不要であるだけでなく、障害である。本質的には緊張関係を持続させたい日米の勢力がGSOMIAの破棄、失効に強い危機感を持ち、韓国政府に強烈な圧力をかけたことは疑いない。とくに米上院の決議は韓国政府の強い姿勢を怯ませることに効果的となった。
 文在寅政権が米国の圧力を跳ね返すことができず、朝鮮半島平和プロセスが困難につきあたらざるを得ない状況にどう立ち向かうか。被害者の人権回復を軸にした「元徴用工問題」の解決など日本の植民地支配責任の清算を求める闘いと朝鮮半島の非核化、東アジアの平和構築の闘いは一体である。“ローソク市民”の闘いが切り開いたこの地平に立ち、後退することなく、日韓市民の声をよりいっそう強め広げよう。それが文在寅政権に米国や日本の不当な圧力に立ち向かわせる唯一の力となる。

沖縄と朝鮮半島の闘いは一体
 もし、日韓のGSOMIA破棄が実現していれば、在韓米軍や在日、在沖米軍にも少なからぬ影響が及んだと思われる。今回、それは叶わなかったがそれぞれの地での闘いは続く。沖縄では、県の埋め立て承認の撤回を、取り消した国土交通相の裁決は違法だとして、県が国を相手に裁決取り消しを求める「抗告訴訟」の第1回口頭弁論が11月26日、那覇地裁で始まった。司法の独立がほとんど失われたとはいえ、辺野古現地での埋め立て阻止行動と合わせ、あきらめない闘いの重要性は一段と増している。韓国では、被害者の戦後補償を求める持続した闘いが韓国司法を動かし、大法院の画期的な判決を引き出したことを忘れてはならない。
 
石垣では自治基本条例廃止の動き 
 沖縄・南西諸島での自衛隊ミサイル基地建設強行に対する闘いも力強く展開されている。宮古島では
山城博治沖縄平和運動センター議長も参加し、連日工事強行に抗議し、阻止の座り込みが取り組まれている。
 石垣市では陸上自衛隊配備計画に対し、市住民投票を求める会が昨年12月、有権者の約4割に当たる署名を集め、基本条例を根拠として住民投票の実施を市に直接請求した。市議会は今年2月、市提案の住民投票条例案を否決したが、求める会が市を提訴し係争中となっている。
 石垣市の自治基本条例は2010年、県内で初めて石垣市で施行された。条例には住民投票に関する規定があり、有権者の4分の1以上の連署で市長に住民投票の実施を請求できるとしている。請求があったとき、市長は「所定の手続を経て、住民投票を実施しなければならない」とも明記している。
 今や、安倍応援団と化した中山市長と市議会与党は、住民投票を何としても阻止するために、自治体の憲法ともいうべき自治基本条例を「廃止すべき」とまで言い出したのだ。
 基地推進・容認勢力がいかに民主主義の実現や民意の尊重に恐怖しているかがよくわかる事態だ。
韓国、沖縄、宮古、石垣で力強くすすめられる闘いに注目し、この闘いを自分の住む地域に知らせることから始めよう。それが連帯の第一歩となる。

「むすぶ」目次(2019年11・12月号)2019/12/05 17:45

■ 今月を視る/ GSOMIA破棄は実現しなかったが・・・・
「朝鮮半島平和プロセス」を開く闘いは続く! 
■ 寄稿/ アフガニスタンからサラさんがやって来た RAWAと連帯する会 桐生佳子 
■ Q & A/ 東電・原発事故「無罪判決」と関電・原発マネー「不正還流」
■ Book Corner/『パンプキン! 模擬原爆の夏』 令丈ヒロ子 作  堺市 石黒一郎                         
■ 読者つうしん/ 骨裁判を傍聴して 心ゆさぶる意見陳述 大阪府・太子町 湯川 恭
■ おしらせ & 編集後記