今月を視る (「むすぶ」2021年9月号より)2021/09/16 10:30

アフガン戦争20年から世界が学ぶこと
脱軍事こそ、差別、貧困、人権問題解決の唯一の選択肢

アフガニスタン民衆を全力で支援しよう!
2001年9月11日に端を発したアフガン戦争から20年が経った(2003年からはイラク戦争が起こされた)。米国主導の「対テロ戦争」によって莫大な被害が生じた。少なく見積もっても、アフガニスタンでは4万6000人以上、イラクでは18万人以上の市民が犠牲になった。米兵は7057人がこの20年の戦闘で死亡した。決して少なくないが、それ以上に深刻なのは、自死に追い込まれた現役兵士と退役軍人の合計が、戦闘による死亡の4.2倍超の3万177人に上っているという事実だ(米ブラウン大ワトソン研究所報告)。結局、この20年間の「対テロ戦争」は被害の側に止まらず留まらず、加害の側にも膨大な命の略奪しか生み出さなかった。そして、数えきれない市民の負傷、生活破壊と人権侵害が引き起こされた。何一つ解決できなかっただけでなく、すでに逃亡した腐敗のガニ政権と、市民の暴力的支配と抑圧をめざすタリバンなどの軍閥の再台頭を許したまま、米軍はアフガニスタン撤退を完了した(8月31日)と公表した。米軍と「有志連合軍」の無責任な介入と逃亡で、アフガニスタン民衆には困難と混乱が残されただけだ。だが、この困難な局面にあっても、民主主義と人権の確保をめざして、RAWA(アフガニスタン女性革命協会)などアフガニスタンの女性、市民は、タリバン支配、制圧下でも勇敢にそれに反対して声をあげ、デモを行うなど行動を開始している。
アフガニスタンに平穏と秩序を回復し、女性、子供、マイノリティーの権利を守るため、国連、国際社会、周辺諸国は率先して援助の手を差し伸べるべきである。
「RAWAに学び、連帯する活動を続けてきた私たちは、政権の如何にかかわらず、今後もRAWAとともに歩みを続けていく。アフガニスタンに平和と正義を回復し、女性、子供、マイノリティーの権利を守るため、私たちはRAWAとの連帯を強化する。」(RAWAと連帯する会声明2021年8月22日)。
「声明」のとおり、アフガニスタンの現状を直視し、この困難な局面を切り開くため勇敢に闘うアフガニスタン民衆を全力で支援しなければならない。

自民党総裁選の論点に「敵基地攻撃」?
日本政府はこの「対テロ戦争」の一員として、アフガン戦争に加担してきた。今こそ、アフガニスタンをめぐる戦争政策が何をもたらしたか、(もしくは何も解決しなかったか)を直視し、その責任に真摯に向き合わなければならない。だが、米軍撤退に伴う日本政府の態度は余りにも無責任であり、犯罪的というべきものに終始している。「戦争を紛争解決の手段として行使してはならない」という日本国憲法によって明示された76年前の敗戦による教訓に学ぼうとせず、歴史の真実を葬り去ろうと躍起になっている。コロナ禍で人々が苦しんでいる中にあっても、5兆4797億円の防衛予算(2022年度)の概算要求を計上。憲法違反が明確な国会開催拒否の中で強行されている自民党総裁選挙では、喫緊の課題とは到底思えない「敵基地攻撃」が、候補者の「重要争点」の一つとして浮上している(もっとも「敵基地攻撃」をきっぱりと否定する候補者はいないが・・・)。「コロナ」対策には予算を投入せず、軍事増強に血まなこになる政権に、来るべき衆議院選では「さよなら」を告げなければならない。

「沖縄本島南部からの埋め立て用土砂採取計画」断念の意見書の採択を全国の議会で!
「コロナ」の爆発的な感染拡大に苦しむ沖縄の窮状を顧みるどころか、「この時だ」とばかりに辺野古新基地建設の埋め立て工事を強行し続ける政府、防衛省に怒りが広がっている。この埋立用に沖縄本島南部から遺骨混じりの土砂を採取するという計画は、なお一層広範な怒りに拍車をかけている。「ガマフヤー」の具志堅隆松さんらは、全国の市区町村議会に「要請書」を送り、「沖縄戦で亡くなった全国の戦没者の尊厳の問題だ」と、各々の議会でこの計画を断念するよう国に求める意見書の採択を呼びかけた。9月議会での採択をめざして多くの自治体で市民の取組みが広がっている。独自の陳情、請願書を提出する取組み、「ガマフヤー」の要請書について議会や議員に問い合わせし、プッシュする取組み、様々な取り組みがある。9月議会での意見書採択の動きに注目し、広がりに期待したい。沖縄現地の闘いに連動する全国の地域の市民による多様な取り組みが、今何よりも必要だ。

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