今月を視る(「むすぶ」2026年5月号) ― 2026/05/17 21:59
「自衛隊明記」の改憲を阻止する取組みをあらゆる領域で!
改憲発議へスピード・アップ
「時は来た。改憲に向け総力を挙げ、国会で議論を進める。発議に何とか目途が立ったと言える状態で、来年の党大会を迎えたい」。高市首相は、4月12日の自民党大会で改憲への意気込みをこうぶち上げた。ゴールデン・ウイーク中には、小泉防衛相とともに、アジア太平洋地域の国々をそれぞれ歴訪(高市はベトナム、オーストラリア、小泉はインドネシア、フィリピン)し、中国に対抗する軍事的連携強化と、武器供与、売り込みの「トップセールス」を精力的に行った。この歴訪に向けて、政府は、すでに4月21日の閣議と国家安全保障会議(NSC)で、武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定。完成品輸出を非戦闘目的に限る「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出をほぼ全面解禁。「死の商人」国家たることを堂々と宣言している。そして、この歴訪で、フィリピンに海自の中古護衛艦(駆逐艦)を武器輸出解禁第一号として供与することを発表した。
さらに、高市首相は憲法記念日の5月3日、改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、「議論のための議論であってはなりません。私たち政治家が国民の皆様の負託に応えるために行うべきなのは、決断のための議論です」、「憲法は、時代の要請に合わせて本来、定期的な更新が図られるべきだ」など、いつものとおり何の根拠も示さず、説明もなしにさらりと改憲に向けてスピード・アップすることを訴えた。「決断のための議論」とは、条文の改変で社会や市民の生活がどう変わるのかという具体的論議はもはや必要ではなく、どの条文をいつ変えるのかの論議だけでよいということだ。いわば改憲そのものを目的とする論議でよいと言っているに等しい。すでに、高市は来年春までに改憲発議の目途を立てたいと明言し、国会での「決断に向けた議論」のスピード・アップを求めている。
改憲派の集会には、改憲へのアクセル役を自認する日本維新の会の議員や、野党から国民民主党の玉木代表らも出席し、与野党一体となった改憲布陣を整えようとしている。
現状では、「どの条文をいつ」については一様ではないらしい。自民党は9条の1項・2項を維持しつつ自衛隊を明記する案を掲げるが、日本維新の会は9条2項削除と「国防軍」明記を主張。国民民主党は緊急事態条項や合区解消を優先課題とし、参政党は国際情勢を踏まえた改憲(国益や反グローバリズムの観点から一つひとつ判断)を支持するとしている。
何を優先すべきかの多少の違いはあるにせよ、これら改憲派は「9条」の改変と「改憲そのもの」で一致していることは確かだ。
自衛隊を明記しても何も変わらない?
2月の衆議院選挙での自民大勝の結果、衆議院議員の90%が改憲に賛成、反対はわずか4%という恐ろしい状況がつくられ、メディアの世論調査でもあらかた改憲に賛成が反対を上回るという懸念すべき状況も生まれている。「緊急事態条項」は23年、24年の調査とは逆の結果となっているが、「自衛隊明記」に関しては、23年、24年に続いて今回も賛成が反対を大きく上回っており、安定した支持が維持されているとされる(5月3日毎日新聞)。当然、世論誘導も周到に行われているはずだが、中でも「自衛隊明記」で現状がどう変わるのかの具体的論議も見せない中、安倍晋三が主張した「自衛隊を憲法に明記しても、『現状を認める』だけで『何も変わらない』」に世論が大きく誘導されていっていることが調査結果に表れていると考えられる。
事実は大きく異なる。憲法9条に「自衛隊明記」の条項が加えられれば、社会の状況は、『何も変わらない』どころか一変する。そのことを具体的に明らかにし、世論に働きかけることが求められる。
「自衛隊明記」で「徴兵制」も合憲
実際に、憲法に「集団的自衛権行使」や世界中での戦闘を可能にした安保法制を前提とした自衛隊明記が実現した場合、「戦争放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を内容とした従前の9条は死文化し、自衛隊が世界中で戦闘を行うことも憲法上問題なしとなる可能性は高い。
最も悪影響が懸念されるのは、徴兵制に関する問題である。憲法に自衛隊が明記された場合、「憲法上の組織である自衛隊の維持は政府の憲法上の責務」という理屈で、政府が徴兵制を実施しても、「それは違憲だ」という法理が簡単に排斥される可能性が高くなる。「まさか徴兵制までは」との見方もあるが、ウクライナ戦争などを背景に世界で一旦停止していた徴兵制が次々と復活、再開している世界の実例をみれば、あながち「日本ではありえないこと」とは言えない。リトアニア(2015年再開)、スウェーデン(2018年再開)、オーストリア(2013年の国民投票で継続決定)、ラトビア(2023年再開決定、2024年1月から実施)、ノルウェー(2024年4月、募集人数拡大を発表)、デンマーク(2026年から女性に対象拡大)、ドイツ(2026年1月復活)というのが世界の現実だ。
「憲法9条に自衛隊が明記され、合法化したら徴兵制を導入しやすくなるでしょう」、「かつて私は隊員募集の幹部自衛官から『昔の日本みたいに赤紙1枚で徴兵ができればよいのにな~、いずれ近い将来、隊員不足を補うために徴兵する時代が来る』と聞いたことがあります」と、元自衛隊員の実名での証言もある。
もし自衛隊が実際に戦闘に参加するようになれば、真っ先に取りかかるのは隊員の補充ということになる。命を落とす危険な業務には、補充できる人を使うのが軍隊の常識。お金をかけて、十分な訓練をした隊員は温存しておくというのが軍隊組織の鉄則でもある。実際の訓練でも、自衛隊の車両が走行しているのを見ればわかるように、大抵、曹士隊員(旧軍で言えば軍曹以下の下級兵士)が乗った大型トラックが先頭を走り、幹部が乗った小型車(ジープ等)はその後を走る。これは、危険な場所を走行するときには、まず補充が容易にできる兵士を先に行かせる、つまり曹士隊員を盾にして幹部が生き残れるようにするという軍隊の基本的な作戦である。
また、自衛隊明記の改憲は、民間人(医師・看護師・薬剤師・建築・土木・運送・通信・港湾・空港に関わる民間業者等)の戦地派遣が憲法上も正当化される可能性が高くなる。
社会の軍事化に拍車がかかるのは必至だ。自衛隊が地域行事や学校行事に「普通」に参加するようになるだけでなく、学問の軍事利用が常態化することになる。
すでに、『「戦う」自衛隊』へのアピール活動が頻繁に行われている。2月27日、陸自第32普通科連隊(大宮駐屯地)が埼玉県内(吉川市)で行進訓練を実施。地元自治体がHPで「隊員への激励、声掛け」を促し、保育園での園児とのふれあいを演出。5月30日には、兵庫・加西市で県内初の陸自の市中パレード(陸自青野原駐屯地創設50周年祝福)が予定されるなど、各地で基地外での活動が活発化。
さらに、政府は、自衛隊の階級名の変更(1佐→大佐、2佐→中佐等)や、職種の呼称変更(普通科は「歩兵科」、特科は「砲兵科」、施設科は「工兵科」など)を方針化している。
現場自衛隊員と家族の悲痛な声
世論調査で、自衛隊明記の改憲に賛成が反対を上回るという状況がある一方、当の自衛隊員や家族の切実な声に耳を傾ける必要がある。元海上自衛隊員であった西川末則さんは、「9条があったおかげで、私たち自衛隊は戦争に行かずに済みました。日本は憲法の平和主義に基づき、戦争している国々の調整役になるべきです」、「自衛隊を憲法に明記する憲法改正には反対です」と述べている。幹部自衛隊員以外の実際に戦場に行かされる曹士隊員たちの多くは、「自衛隊の海外派兵」や「自衛隊明記の改憲」に反対しているのが実態ではないだろうか。公然とは声をあげ難いが、高市が首相になったことを悲しんでいる隊員や家族がかなりいることは間違いない。
世界中での自衛隊の武力行使を可能にし、「徴兵制」、「民間人の戦地派遣」なども可能にする「自衛隊明記の改憲」に反対する主権者は、「不断の努力」(憲法12条)でもって、国内外のあらゆる領域に取組みを広げ、「戦争する国」に日本を変える高市自民党の改憲を必ず阻止しよう。
改憲発議へスピード・アップ
「時は来た。改憲に向け総力を挙げ、国会で議論を進める。発議に何とか目途が立ったと言える状態で、来年の党大会を迎えたい」。高市首相は、4月12日の自民党大会で改憲への意気込みをこうぶち上げた。ゴールデン・ウイーク中には、小泉防衛相とともに、アジア太平洋地域の国々をそれぞれ歴訪(高市はベトナム、オーストラリア、小泉はインドネシア、フィリピン)し、中国に対抗する軍事的連携強化と、武器供与、売り込みの「トップセールス」を精力的に行った。この歴訪に向けて、政府は、すでに4月21日の閣議と国家安全保障会議(NSC)で、武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定。完成品輸出を非戦闘目的に限る「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出をほぼ全面解禁。「死の商人」国家たることを堂々と宣言している。そして、この歴訪で、フィリピンに海自の中古護衛艦(駆逐艦)を武器輸出解禁第一号として供与することを発表した。
さらに、高市首相は憲法記念日の5月3日、改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、「議論のための議論であってはなりません。私たち政治家が国民の皆様の負託に応えるために行うべきなのは、決断のための議論です」、「憲法は、時代の要請に合わせて本来、定期的な更新が図られるべきだ」など、いつものとおり何の根拠も示さず、説明もなしにさらりと改憲に向けてスピード・アップすることを訴えた。「決断のための議論」とは、条文の改変で社会や市民の生活がどう変わるのかという具体的論議はもはや必要ではなく、どの条文をいつ変えるのかの論議だけでよいということだ。いわば改憲そのものを目的とする論議でよいと言っているに等しい。すでに、高市は来年春までに改憲発議の目途を立てたいと明言し、国会での「決断に向けた議論」のスピード・アップを求めている。
改憲派の集会には、改憲へのアクセル役を自認する日本維新の会の議員や、野党から国民民主党の玉木代表らも出席し、与野党一体となった改憲布陣を整えようとしている。
現状では、「どの条文をいつ」については一様ではないらしい。自民党は9条の1項・2項を維持しつつ自衛隊を明記する案を掲げるが、日本維新の会は9条2項削除と「国防軍」明記を主張。国民民主党は緊急事態条項や合区解消を優先課題とし、参政党は国際情勢を踏まえた改憲(国益や反グローバリズムの観点から一つひとつ判断)を支持するとしている。
何を優先すべきかの多少の違いはあるにせよ、これら改憲派は「9条」の改変と「改憲そのもの」で一致していることは確かだ。
自衛隊を明記しても何も変わらない?
2月の衆議院選挙での自民大勝の結果、衆議院議員の90%が改憲に賛成、反対はわずか4%という恐ろしい状況がつくられ、メディアの世論調査でもあらかた改憲に賛成が反対を上回るという懸念すべき状況も生まれている。「緊急事態条項」は23年、24年の調査とは逆の結果となっているが、「自衛隊明記」に関しては、23年、24年に続いて今回も賛成が反対を大きく上回っており、安定した支持が維持されているとされる(5月3日毎日新聞)。当然、世論誘導も周到に行われているはずだが、中でも「自衛隊明記」で現状がどう変わるのかの具体的論議も見せない中、安倍晋三が主張した「自衛隊を憲法に明記しても、『現状を認める』だけで『何も変わらない』」に世論が大きく誘導されていっていることが調査結果に表れていると考えられる。
事実は大きく異なる。憲法9条に「自衛隊明記」の条項が加えられれば、社会の状況は、『何も変わらない』どころか一変する。そのことを具体的に明らかにし、世論に働きかけることが求められる。
「自衛隊明記」で「徴兵制」も合憲
実際に、憲法に「集団的自衛権行使」や世界中での戦闘を可能にした安保法制を前提とした自衛隊明記が実現した場合、「戦争放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を内容とした従前の9条は死文化し、自衛隊が世界中で戦闘を行うことも憲法上問題なしとなる可能性は高い。
最も悪影響が懸念されるのは、徴兵制に関する問題である。憲法に自衛隊が明記された場合、「憲法上の組織である自衛隊の維持は政府の憲法上の責務」という理屈で、政府が徴兵制を実施しても、「それは違憲だ」という法理が簡単に排斥される可能性が高くなる。「まさか徴兵制までは」との見方もあるが、ウクライナ戦争などを背景に世界で一旦停止していた徴兵制が次々と復活、再開している世界の実例をみれば、あながち「日本ではありえないこと」とは言えない。リトアニア(2015年再開)、スウェーデン(2018年再開)、オーストリア(2013年の国民投票で継続決定)、ラトビア(2023年再開決定、2024年1月から実施)、ノルウェー(2024年4月、募集人数拡大を発表)、デンマーク(2026年から女性に対象拡大)、ドイツ(2026年1月復活)というのが世界の現実だ。
「憲法9条に自衛隊が明記され、合法化したら徴兵制を導入しやすくなるでしょう」、「かつて私は隊員募集の幹部自衛官から『昔の日本みたいに赤紙1枚で徴兵ができればよいのにな~、いずれ近い将来、隊員不足を補うために徴兵する時代が来る』と聞いたことがあります」と、元自衛隊員の実名での証言もある。
もし自衛隊が実際に戦闘に参加するようになれば、真っ先に取りかかるのは隊員の補充ということになる。命を落とす危険な業務には、補充できる人を使うのが軍隊の常識。お金をかけて、十分な訓練をした隊員は温存しておくというのが軍隊組織の鉄則でもある。実際の訓練でも、自衛隊の車両が走行しているのを見ればわかるように、大抵、曹士隊員(旧軍で言えば軍曹以下の下級兵士)が乗った大型トラックが先頭を走り、幹部が乗った小型車(ジープ等)はその後を走る。これは、危険な場所を走行するときには、まず補充が容易にできる兵士を先に行かせる、つまり曹士隊員を盾にして幹部が生き残れるようにするという軍隊の基本的な作戦である。
また、自衛隊明記の改憲は、民間人(医師・看護師・薬剤師・建築・土木・運送・通信・港湾・空港に関わる民間業者等)の戦地派遣が憲法上も正当化される可能性が高くなる。
社会の軍事化に拍車がかかるのは必至だ。自衛隊が地域行事や学校行事に「普通」に参加するようになるだけでなく、学問の軍事利用が常態化することになる。
すでに、『「戦う」自衛隊』へのアピール活動が頻繁に行われている。2月27日、陸自第32普通科連隊(大宮駐屯地)が埼玉県内(吉川市)で行進訓練を実施。地元自治体がHPで「隊員への激励、声掛け」を促し、保育園での園児とのふれあいを演出。5月30日には、兵庫・加西市で県内初の陸自の市中パレード(陸自青野原駐屯地創設50周年祝福)が予定されるなど、各地で基地外での活動が活発化。
さらに、政府は、自衛隊の階級名の変更(1佐→大佐、2佐→中佐等)や、職種の呼称変更(普通科は「歩兵科」、特科は「砲兵科」、施設科は「工兵科」など)を方針化している。
現場自衛隊員と家族の悲痛な声
世論調査で、自衛隊明記の改憲に賛成が反対を上回るという状況がある一方、当の自衛隊員や家族の切実な声に耳を傾ける必要がある。元海上自衛隊員であった西川末則さんは、「9条があったおかげで、私たち自衛隊は戦争に行かずに済みました。日本は憲法の平和主義に基づき、戦争している国々の調整役になるべきです」、「自衛隊を憲法に明記する憲法改正には反対です」と述べている。幹部自衛隊員以外の実際に戦場に行かされる曹士隊員たちの多くは、「自衛隊の海外派兵」や「自衛隊明記の改憲」に反対しているのが実態ではないだろうか。公然とは声をあげ難いが、高市が首相になったことを悲しんでいる隊員や家族がかなりいることは間違いない。
世界中での自衛隊の武力行使を可能にし、「徴兵制」、「民間人の戦地派遣」なども可能にする「自衛隊明記の改憲」に反対する主権者は、「不断の努力」(憲法12条)でもって、国内外のあらゆる領域に取組みを広げ、「戦争する国」に日本を変える高市自民党の改憲を必ず阻止しよう。