<読者つうしん> 猫の恩返し? 「動物保護優先住宅」2023/10/23 15:14

東大阪市  尾田清一

今夏、命の危険を感じる猛暑の中、僕はエアコンのない長屋の一室で、黙々と段ボール箱に荷物を詰め、引越し準備をしていました。何度も暑さで手が止まり、扇風機の唸る音とべたつく熱風に急かされながらの作業でした。築60年越えのこの長屋は、戦後の住宅難の時代に建てられたもので、間口も間取りも小さく、今はほとんど空き家です。ここにかつて家族6人で暮らしていたこともあるのですが、今は僕ひとりと猫3匹(だんご三兄弟…僕はそう呼んでいる)だけの暮らしとなりました。
おふくろがエアコン嫌いで、室外機も朽ちた物干しにあり危険だったので、10数年前に撤去。僕は「エアコンなんかなくても、日本の夏くらい・・・」とずっと豪語してきたのですが、「地球沸騰」の今夏、それはもう通用しなくなっていました。僕自身もさることながら、だんご三兄弟が、連日室温35度を超える中で、寝ているのか、死んでいるのか、あるいは気を失っているのか、分からない状態に度々陥りました。でも、僕にしてやれることといえば、玄関の引き戸の前にコンパネを立てかけて影をつくること、裏の坪庭の庇にホースで水をかけることぐらい。このままではヤバイ! 危険! 何とかしなくては・・・

7月の末、そんな窮状を、昨年知り合った「むすぶ会」のMさんに話したところ、Mさんはふと思い出したように「ちょうどいい物件がある」って、一緒に地域猫の世話をしているFさんを紹介してくれました。
Fさんは美容師さん。Mさんのマンションの隣で美容室を経営しているのですが、副業にささやかな賃貸業もやっていて、名刺には「不動産賃貸 動物保護優先住宅」の肩書きが。もちろん「動物保護優先住宅」は、Fさんの造語です。なんでも犬や猫を保護し飼っている人たちが、そのためにアパートやマンションを借りにくいという事情に心を痛め、なんとかサポートしたいと今年から始めた事業とのこと。格安の中古物件を買取り、最小限のリフォームをして、そういう人たちに優先入居してもらうという賃貸業です。
とはいえ、気になるのは家賃。聞いてみると、2軒のうちまだ1軒空いていて「一般の方は月●万円ですが、保護動物を飼っておられる方は5000円引き。さらに複数匹飼っておられる方は、そこから1匹につき1000円引きします。」とのこと。僕の場合は、8000円引き。助かります。このせち辛い世の中に、こんな賃貸システムがあるなんて・・・ 命を大切にしたいという家主さんのやさしい情熱を感じました。
かくして、年金一人暮らしの僕が、猫3匹連れて、長屋からの脱出を決断! 8月初めのことでした。
そこから、冒頭に書いた猛暑と熱風の中での地獄の作業が、一カ月間続いたのです。もとより僕の荷物は少なかったのですが、何しろ戦後間もない親の代からの家財道具にガラクタ・・・ これまでずいぶん処分してきたつもりが、優柔不断を思い知らされました。
それでも何とか必死に頑張って、9月上旬、ついに引越し! 新居は長屋から直線距離で約5キロ、駅から徒歩6分の好立地。築40年のこじんまりした二階建てで、入居に先がけエアコンも設置しました。
この物件で一番気に入ったのは、2階の南北両側にベランダがあること。Mさんと見に来たときから、この両ベランダに鉄製のしっかりした脱出防止ネットを張ったら、三兄弟を室内から開放し、外の景色を眺めたり日光や風にあたったりさせてやれると、これまで叶わなかった夢を描いていました。

14年前のある夜、お風呂屋さんに行く途中、道にだんごが3つ落ちていると思ったら、仔猫3匹でした。野良と分かり連れ帰り、トム、カミン、ツレと名付けて家族にしました。そのころすでに我家には、事情で飼えなくなった人から引き取った先住猫が1匹いたし、決して余裕のある暮らしではなかったのですが、そのまま道路上の小さな命を見捨てることはできなかったのです。
今回、思いがけずこのような「動物保護優先住宅」に恵まれたのは、命にやさしい地域の人たちの暖かい心を介して、だんご三兄弟からの「猫の恩返し」だったのでしょうか? ふとそんなことを思ったりします。
10月に入り、ようやくエアコンの要らなくなった部屋で、今、高齢猫となった三兄弟は、のびのびと風に吹かれ、気持ちよさそうに寝ています。僕にとって、この上なく幸せで平和なひとときです。

今月を視る (「むすぶ」2022年2月号より)2022/02/24 08:56

日中国交回復50年-「沖縄返還」50年
   緊張激化と軍拡ではなく、軍縮の新たな秩序を!

ウクライナと台湾をめぐる危機
「ロシアが今週中に軍事侵攻の可能性が高い」、「数日中にも軍事侵攻」、そして、2月18日にはバイデン米大統領が「現時点で、彼(プーチン大統領)が(軍事侵攻の)決断を下したと確信している。そう信じる理由がある」と述べた。侵攻は数日中にも計画されており、首都キエフも標的になるとの見方を示したと報道されている。一方、ウクライナ東部の反政府武装勢力(ロシアが支援)が実効支配する地域では「ウクライナ軍侵攻の恐れ」があるとしてロシアへの避難を呼びかけ、すでに大規模な避難が始まっている。ウクライナをめぐる軍事緊張がこのままエスカレートするとしたら大きな世界的危機であり、悲惨な結果を招きかねない重大な事態だ。それにもかかわらず、前述のバイデン発言のように危機感をあおるばかりで米ロ政府双方に「何としても戦争を避ける」という姿勢が全く見られない。
「強い姿勢」が相手の譲歩を引き出すとした旧態依然とした「力の論理」が相変わらず幅を利かせている。このような「力の論理」がかつて戦争へと突き進む道を掃き清めたことを忘れてはならない。ウクライナ問題の根底には東部ドンバス地方(ルガンスク州、ドネツク州)の分離独立問題など複雑で解決が難しい問題が存在している。だが、すぐさま必要な措置は、ドンバス地方の「停戦合意」の実効と当事者間の誠実な履行だ。そして、軍事衝突を回避するための外交交渉の場を作ることだ。日本政府は、米国、NATO支持を一早く打ち出すが、軍事威圧で応酬し合う一方を支持する立場を明らかにすることではなく、戦争を回避し、住民の命を救うためにはいかなる「譲歩」も恐れてはならことを訴え、国際社会に働きかけることだ。
 台湾をめぐる米中対立も、全く同じ構図だ。「中国の台湾進攻があるとすれば、今後6年以内だろう」(フィリップ・デービッドソン前米インド太平洋軍司令官)との根拠のない発言をもとに、対中国日米共同作戦が拍車をかけて実行されている。この作戦は、中国海軍の艦艇や大型商船を西太平洋に出させないための自衛隊主体による東中国海(東シナ海)の海峡・水道封鎖であり、これを突破しようとする中国軍との海洋限定戦争に対応する作戦だ。この作戦が想定する事態は、双方がミサイル攻撃を主軸に展開する激しい攻撃の応酬となる戦闘だ。この作戦には、激しい戦闘にさらされる島民の命を救うという観点は全くない。

「戦争するな」「命を救え」の世界的な声と行動を!
 こうした危機的状況を解くカギは、「強い姿勢」と相手に対抗できる「力」以外にないと信仰する米ロ中他日本を含む軍事大国の「交渉力」ではない。「戦争するな」「命を救え」の世界的な声と行動こそが軍事衝突を止める最大の力となる。全米でも反戦団体による米政府の「軍事介入やめろ」「軍事挑発やめろ」の声と行動が広がっている。
こうした中、1月31日、南西諸島軍事化に反対し琉球弧を戦場にするなと訴える広範な運動ネットワーク「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」が発足した。昨年末、台湾有事の際に自衛隊と米軍が敵を攻撃できるよう、南西諸島を軍事拠点化する日米共同作戦計画が明らかになったことを踏まえ、これに反対することが最大の目的だ。基本方針は「沖縄の島々が再び戦場になることに反対する」ことに主張を絞り活動する。
 共同代表には石原昌家さん(沖縄国際大名誉教授)、ダグラス・ラミスさん(国際政治学者)、具志堅隆松さん(遺骨収集ボランティア)、宮城晴美さん(沖縄女性史研究家)、山城博治さん(沖縄平和運動センター顧問)らが就いた。
この活動を全国に、アジアに広げることが必要だ。日本政府は、核禁条約に対して、核保有国と非保有国の「橋渡し」の役目を果たすと言ってきたが、いまだ具体的には何一つしていない。日中国交回復50周年にあたっても、米中の「橋渡し」をするとは言わないし、それどころか、米側支持を一切の配慮なく打ち出し、軍事的威嚇に加担するという普通の「金持ち国」の振る舞いに徹している。
さらに今年は、「沖縄返還50年」。この節目の年に沖縄を米中、日中対立の最前線に差し出すという歴史的差別政策を実行するという政府の不誠実さ。軍拡と緊張激化に抗し、「戦争するな」「軍拡でなく軍縮を」が住民の切実な声であることを訴えよう。

今月を視る (「むすぶ」2022年1月号より)2022/01/28 09:46

それでも「反対する意志は1ミリもぶれない」
辺野古新基地反対の声を名護、沖縄から全国へ!

「止められる」と沖縄の市民が実感できる全国の闘いを
2022年最初の「むすぶ」で、名護、南城市長選挙の残念な結果を直視しなければならないことは、ほんとうに悲しい。
4年前の名護市長選では、「辺野古新基地建設に反対」の有権者が60%を超えていたにもかかわらず、辺野古の「へ」も語らなかった自公推薦の渡具知候補(当時)に、揺れながらも投票した人が少なくなかったと報道されている。その結果、悔しくも市政を奪われた。投票先を変えた人々の多くは、「辺野古に新基地反対に変わりはない。だが反対の市長や知事であっても国の強行は止められなかったし、これからも止められないのでは」「国がばらまく金がいかに道理のないものであったとしても、市民の暮らしに役立つものであれば許される選択ではないか」と迷いながら投票先を変えたのではないだろうか。
そして、今回、状況に大きな変化がない中で市長選を迎えた。知事や市長が「新基地建設は許さない」と声を大にしても、県民投票で反対の意思をはっきりと示しても、国は「新基地建設工事に影響はない」とうそぶき、強行を続けてきた。新基地建設には口をつぐむ渡具知市政には、年間15億円もの「基地再編交付金」をばらまき、この金で保育、給食、こども医療無料が実現できたと大宣伝してきた。こうした中、市政奪還は必ずしも容易ではない状況で「市長権限の行使や地元から基地反対の声を発信して全国に広げ、新基地建設を止める」「基地の金によってではなく、市民みんなの参加で小さい世界都市名護のまちづくりを!」と訴えて立ち上がったのが、市長候補岸本ようへいさんだ。勝利を得ることはできなかったが、勇気をもって闘い抜いた岸本ようへいさんと名護市民の闘いに、改めて敬意と共感、感謝の意を表したい。
現職が勝ったことで自民県連幹部は「辺野古問題の潮目が変わった。知事選ではもう辺野古を争点に闘うことは無理だ」(沖縄タイムス)と威勢を張る。
だが、名護、沖縄の人々の「辺野古新基地反対」の意思に変化はない。選挙期間中に地元2紙などが合同で実施した電話世論調査でも「どちらかといえば」を含め「反対」が62.1%に上り、「どちらかといえば」を含め「容認」の33.3%を大きく上回った。玉城デニー知事も「相手候補を応援した方の中にも辺野古は反対と思っている方もいる」、「反対する意志は1ミリもぶれない」と述べた。
岸本候補が「地元から基地反対の声を発信して全国に広げ、新基地建設を止める」と訴えたように、名護や沖縄だけでなく、全国に広げることが辺野古新基地を止める確実な展望だ。今回、「新基地はいらない」と思いながらも相手候補を選択せざるを得なかった名護市民にも、はっきりと実感できる「全国への広がり」が早急に求められる。この課題を真っ先に担わなければならないのは、首都圏や関西圏など中央政府の直下に住む私たちだ。あきらめない沖縄からの発信を受けとめ、自分事として自らの地域に「辺野古新基地はいらない」の声を大きく広げ、政府を包囲しよう。

「オブザーバー参加を!」の声を高めるとき
1月22日、核兵器禁止条約が発効して1年を迎えた。核兵器禁止条約に署名・批准・参加した国は86か国になった(21年12月24日現在)。日本国内で核兵器禁止条約に参加するよう求める意見書が採択された自治体議会は627議会となった(22年1月12日現在)。核兵器禁止条約への参加を求める国際世論の持続的な高まりは、核兵器保有国や「核の傘」国への強烈なプレッシャーとして作用し、保有国の行動にも確実に影響を与え始めている。米露英仏中の核保有5大国は、1月3日、核戦争や軍拡競争の防止が重要だとして「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」と確認する共同声明を発表した。再延期されたが1月4日に予定されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の前日の声明である。具体的行動が示されていないことなど極めて不十分であり、保有国の核軍縮サボタージュへの批判をかわすという狙いも見えるが、3月に開催予定(オーストリア・ウィーン)の核兵器禁止条約締約国会議を前に、何らかの対応を求められての「声明」であることは間違いない。日本政府は今なお締約国会議へのオブザーバー参加に否定的だ。「橋渡し役」が本気ならオブザーバー参加は絶好のチャンスであり、不可欠だ。ドイツとノルウエーは参加の意向を明らかにしている。「オブザーバー参加を!」の声を高めるときだ。

今月を視る (「むすぶ」2021年7・8月号より)2021/08/05 08:54

地域から世界の軍縮世論に連動しよう!
辺野古設計変更「不承認」へ! 知事決定を支える取組みを!

世論は軍縮を求めている
毎年、軍拡のための口実とネタ探しの作文である「防衛白書」。今年2021年度の「防衛白書」は7月13日の閣議で報告、発表された。「台湾有事」を目玉に「対中国軍事緊張」一辺倒の内容である。「米国と連携し、長射程ミサイルなどを導入する方針」を明記。また、敵基地攻撃能力に関連し「抑止力強化について、引き続き検討を行う」と保有論に含みを残した。さらに、20年版までは記載した旧3要件が削除され、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認めた新3要件のみを記した。これは「中国による台湾への武力行使または軍事的威嚇」は集団的自衛権行使の範疇という宣言だ。
他方、日本世論調査会(新聞社などが多数加盟)が実施した「平和」に関する全国郵送世論調査が発表された(7月31日)。被爆76周年の原水禁世界大会を前に、焦点となる核兵器禁止条約(今年1月22日発効)に日本が「参加するべきだ」と答えた人が71%に上った。第1回締約国会議にオブザーバーとして「出席するべきだ」とした人は85%。また、自衛隊の在り方は「憲法の平和主義の原則を踏まえ、『専守防衛』を厳守」の74%に対し「9条を改正して『軍』として明記」は21%にとどまった。さらに、辺野古新基地建設を進める政府の姿勢を「支持しない」は57%であった。世論は軍縮だ。

辺野古新基地設計変更申請の不承認へ
 軍縮を求める世論の流れは辺野古新基地建設をめぐる司法の判断にも反映され始めている。7月6日、最高裁は沖縄県の「国がサンゴ移植申請を許可しない沖縄県に是正指示したことは違法」との訴えを却下したが、5人の判事のうち2人の判事が「軟弱区域の設計変更が沖縄県に拒否されれば工事全体の実現に支障が生じ、サンゴ移植は無駄になる」「設計変更申請に対する承認の見通しを考慮する必要がある」と反対意見を述べ、判決に付された。これは、沖縄県の主張にそった意見であり、これまで辺野古新基地建設をめぐる国との係争で出された司法判断で一度もなかったことだ。玉城デニー知事が語るとおり「画期的な反対意見が付された」判決である。
 さらに、6月には全国知事会が、国が自治体の判断を直接否定できる「裁定的関与」の見直しを盛り込んだ国への提言書をまとめた。提言書では「地方自治体が『自らの判断と責任で行政を運営する』という原則に立ち、国と都道府県、市町村のそれぞれが対等な立場で責任を果たすよう見直すこと」と明記した。これは、玉城デニー知事の『裁定的関与について「地方自治体の判断を直接否定することもできるため、地方自治の保障の観点から極めて大きな問題がある」と指摘。全国の知事に対して「地方自治を実現するため、裁定的関与の見直しを強く求めていただきたい」』との要望を受けて実現したものだ。
 辺野古新基地建設をめぐる政府との闘いは、いよいよ激しく、緊張を伴う局面を迎えている。玉城デニー知事は7月28日、「じくじたる思い」で一旦サンゴ類移植を許可したが、許可条件((高水温期や繁殖期(5~10月ごろ)を避ける等))を国が無視したため、7月30日、沖移植許可を撤回した。
辺野古設計変更承認申請に対し、「玉城デニー知事が8月中旬にも不承認と判断する方向で調整していることが分かった」(琉球新報)と報道されている。

知事の「不承認」を全国、世界から支えよう
 ついに知事による「不承認」の時が来る。国、防衛省はこれまでのように「不承認」を覆すための裁判提訴をはじめあらゆる策を弄してくることは間違いない。この国、防衛省の攻撃を跳ね返し、知事の「不承認」を不動のものにする全国の声と取組みが必要だ。その一つは、「辺野古新基地建設の埋め立て工事で、沖縄戦の戦没者の遺骨を含む土砂を使用しないよう求める意見書」運動を全国に広げることだ。すでに、沖縄県外でも、奈良県議会、金沢市、大阪府茨木市、吹田市、東京都小金井市などで次々と可決されている。沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんも全国の全ての地方議会議長あてに意見書の採択を求める要請書を送った。もう一つの当事者である米議会でもDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)やプログレッシブ(進歩的)議員団とともに辺野古を止める賛同運動(ZHAP)も広がろうとしている。全国から、世界とともに、自らの地域で取組みをすすめよう。

「むすぶ」目次 (2021年6月号)2021/06/24 16:01

■ 今月を視る / 戦争体制づくりの人権抑圧、民主主義破壊の“悪法”強行成立に抗議!
危険な中身を広く市民に! 取組み継続・強化で無効化を!
■ Q&A <NO.118> / 稀代の悪法「重要土地規制法」は廃案しかない!
■ 寄稿 / 6月20日は「世界難民の日」
      日本の難民受け入れと入管収容の問題について  RAFIQ 田中恵子
■ Music Corner / 海勢頭豊さんの歌 1『コザキチロック』  印西市 若谷政樹
■ 読者つうしん / 大地に根差した現場から  長野県大鹿村 北川誠康
■ おしらせ & 編集後記

今月を視る (「むすぶ」2021年6月号より)2021/06/24 16:00

戦争体制づくりの人権抑圧、民主主義破壊の“悪法”強行成立に抗議!
危険な中身を広く市民に! 取組み継続・強化で無効化を!

反対運動の正念場はこれから!
政府・与党は“改憲手続き法”(「国民投票法改定」、6月11日採決)に続いて、6月18日に “重要土地規制法”の採決を強行、成立させた。5月12日に強行成立させた“デジタル監視法”も含めいずれも人権と平和をめぐる極めて深刻な内容の重大法であるにもかかわらず、内容、時間ともまともな審議もないままのゴリ押し成立である。日本の国会内民主主義はもはや風前の灯火といえる状況となった。
だが、民主主義や政治は、国会内の力関係(議員の数)だけで全てが決まってしまっていいわけではなく、また、そんなことを許してはならない。政府・与党や改憲「野党」が「これは第一歩」と位置付けるように、これから狙っているものに近づけようと本格的な作業が始まる。これから、肉づけしようとする具体的内容を徹底的に知らせることで、「第一歩」を押し戻すことができるのではないか。政府・与党が異常なほどスピード採決に突き進んだのは、法案の中身が広く市民に知られるようになれば、“入管法改正”のように成立が危ぶまれると考えたからだ。残念ながら成立させられた今回の法律は、反対する運動の側から言えば、市民にこれらの法案の危険な内容を広く知らせる十分な取り組みが追いつかなかったということだ。“重要土地規制法”などは、今後具体的中身について国会論議なしに「閣議決定」で決められる可能性が高いが、閣議決定にむけてあげられる内容を逐一暴露し、広く市民に知らせることができるなら法の内実である人権抑圧、弾圧の狙いを阻止し、無効化はできる。その意味で反対運動の正念場は、これからである。

 “国民投票法”は、これまで放置され、やがて「なかったことに」が狙われる“最低投票率”や“CM規制”など本質的問題点の解決ぬきに、「改憲内容」の国会審議、論議が行われることは許されないことを広く市民に訴え、本質的な問題解決を徹底的に要求しよう。
 
“デジタル監視法”は、対決の舞台が自治体に移った。自治体の個人情報保護条例のレベルダウンによる“国並み平準化”を許さず、個人情報コントロール権の確立をめぐる闘いはこれからが勝負だ。“マイナンバーカード”(全住民総背番号化)による住民支配の危険性を知らせ、「たった5000円(マイナポイント)であなたの情報売りますか?」など市民への働きかけも工夫をこらして取り組みを強めることが必要だ。自治体現場の取り組みが今後の行方を決定することは間違いない。

“重要土地規制法”は、そもそも立法事実(この法律が必要となった具体的事例)が全くない。(基地周辺の)土地所有者や住民にとっては、「基地機能を阻害する」具体的事実がなかったにもかかわらず、知らない間に調査されたり、土地使用が規制されたりするなど利益は全くない。今後、中味が詰められていく段階になれば、次々と矛盾と住民にとっての不都合が噴出することになる。戦前の“要塞地帯法”と同様の軍国主義的本質が露出してくる。政府の動きを見過ごさず、危険性の徹底暴露で実質無効へと追い込もう。

沖縄県知事は辺野古新基地設計変更申請に不承認を!
 “重要土地規制法”の先取りともいえる市民弾圧が沖縄で行われた。鳥類研究家・宮城秋乃さんの非暴力抗議行動を「威力業務妨害」とこじつけ、家宅捜査や取り調べなど宮城さんへの嫌がらせと活動への威嚇を繰り返した。だが沖縄の人々の闘いはこんな脅かしに決して怯まない。
 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんらが「遺骨の混じる南部の土砂を辺野古の埋め立てに使うな」「辺野古新基地建設の設計変更申請の不承認」を知事に求める2度目の座り込みを6月20日から開始、21日からは平和祈念公園にハンスト会場を移し、23日の「慰霊の日」に要請書を知事に渡す。この沖縄の人々の叫びと行動に全国から応答しよう。

「むすぶ」目次 (2021年5月号)2021/05/22 13:52

■ 今月を視る / 衆院での国民投票法改正案の採決強行、可決に抗議!
“CM規制”も“最低投票率”もない「国民投票法」はペテンだ!
■ Appeal / 群馬『「記憶 反省 そして友好」の追悼碑』を守ろう!  矢野秀喜
■ Q&A <NO.117> / 市民の権利・生活を破壊する「土地規制法案」にNO!
■ Book Corner /『私が原発を止めた理由』 樋口英明 著  堺市 堤 淳雄
■ 読者つうしん / 「姉と話した」-ふるさと沖縄(2)    宇治市 中川清子
■ おしらせ & 編集後記

今月を視る (「むすぶ」2021年5月号より)2021/05/22 13:51

重大な欠陥を持つ国民投票法
 政府、与党が5月6日、衆院憲法審査会で、5月11日、衆院本会議で国民投票法改正案の採決を強行、可決させた。強硬な改憲派であり、実態は完全な与党である維新はもちろん、立憲民主、国民民主を引き入れての暴挙である。「安倍政権下での改憲反対」を掲げてきた立憲民主が、「国民投票実施時のCM規制について3年後の『見直しを検討』を「修正として認めさせた」ことを理由に容認に転じた。こんな「修正内容」で改憲暴走に歯止めをかけられるとはだれも思わない。立憲の責任投げ出しは、とうてい許容できるものではなく、情けないかぎりである。

一貫してサボタージュされた論議
 そもそも、今回の改正案(2018年提出)をめぐる最大の争点は、「国民投票を、公選法に合わせた形にする」ことではない。国民投票法は2007年の成立時にテレビなどのスポットCM規制や最低投票率などを検討課題とし、先送りし、今日に至るも何の論議も行われていない。与党はこの重要点について具体的に論議することを一貫してサボタージュしてきた。憲法は先の大戦の反省の上に国家の権力行使を規制し、市民の自由と権利を保障する法制の根幹として存在してきた。改憲内容の是非の前に、日本の法制度の根幹である憲法を変えるかもしれない手続きの一つである国民投票が、「公選法並み」であっていいのかどうかがまず厳しく問われなければならず、根本的な論議が必要なのだ。
 テレビやラジオでの政党のスポットCMは、今の国民投票法では投票前の14日間を除いて規制がなく、費用制限や罰則すらない。カネを大量投入して多数派を握ろうとするやり方は公平ではなく、カネで世論を動かそうとする行為は民主主義に反する。ましてや憲法の是非を問う国民投票の場に持ち込まれることが、あってはならない。CM規制は国民投票法の最も重要な問題の一つである。
 最低投票率もその一つである。一定の投票率に達しなかった場合に、投票そのものを不成立とする最低投票率は絶対に必要だ。例えば投票率3割の国民投票で、賛成が6割を占めても有権者全体では2割に届かない。これでは、有権者の意志が明確に示されたものとはとうてい言えないことは明らかだ。公選法適用の一般の選挙や投票は、一定の期間で改選されるため、その都度有権者の意思が一定反映される。だが、国民投票の結果はほぼ半永久的なものとなる。半永久的な性格を持つ憲法の是非を問う国民投票がCM規制も最低投票率もない「公選法並み」であっていいはずはない。最低投票率は、ずばり5割が合理的だ。改憲派は反対派のボイコットを理由に「ハードルが高すぎる」と拒否するが、投票ボイコットを乗り越えて、有権者の5割以上の人々が賛成し、「現憲法を変えなければ生活がたちいかなくなる」との強く熱い意志が明確に示されて初めて「改憲」の正統性を獲得できる。憲法を一般法並みに格下げしようとする企みを許さず、現在国会で行われている欺瞞的で内容のない「論議」ではなく、公正で民主的な論議を国会の内外につくりあげよう。
コロナ禍で、感染防止に全エネルギーを注がなければならない時に、“不要不急”そのものである「改憲準備」に奔走する。こんな自公と維新による“惨事便乗型政治”を運動の力でストップだ。

イスラエルによるパレスチナへの無差別攻撃、虐殺やめろ!の声を
 イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への無差別攻撃による死者は5月18日現在、子ども61人を含む212人に上った(イスラエル側の死者は子供1人を含む10人)。これはマスメディアがいう「報復の連鎖」や「暴力の応酬」という次元のものではない。国際法違反の無差別攻撃、虐殺行為である。このやり方は、レジスタンスによるドイツ兵殺害に対してその何十倍もの住民の命を奪うというナチスのやり方と同じだ。米バイデン政権は、「イスラエルに自衛権がある」と言い、イスラエルによる虐殺行為を止めようとはしない。国連等による積極的「介入」にも妨害の役割しか担わない。日本政府は、いつものようにダンマリを決め込んでいる。中国政府による「ウイグル・香港の人権侵害」非難とは大違いである。世界では、「パレスチナに自由を」「ガザを支持するのにイスラム教徒になる必要はない、人間になるだけだ」と市民の行動が広がっている。日本からも、“命と人権守れ”の声と行動を広げよう。

◆イスラエル大使館 TEL:03-3264-0911 FAX:03-3264-0791
E-mail:information@tokyo.mfa.gov.il

「むすぶ」目次 (2021年4月号)2021/04/22 10:30

■ 今月を視る/ 平和築かない日米首脳会談と共同声明
軍拡競争でなく、軍縮提案こそ必要だ!
■ 報告 / 3・13 大阪空襲76年 朝鮮人犠牲者追悼集会 大阪市 赤松 竜
■ 寄稿 / 堺から引きつぎ成功させた神戸での辺野古・署名運動 元神戸市議 井上 力
■ 映像あんない /『生きろ 島田叡 -戦中最後の沖縄県知事』  印西市 若谷正樹
■ 読者つうしん/ 「姉と話した」-ふるさと沖縄(1)   宇治市 中川清子
■ おしらせ & 編集後記

「むすぶ」目次 (2021年」3月号)2021/03/19 14:02

■ 今月を視る/ 政府・防衛省の辺野古新基地建設強硬路線は孤立している!
当事者の一人として全国・世界から声をあげ、行動を!
■ Appeal /「ジュゴンの鳴き声公開を求めるネット署名」にご協力を  松島 洋介
■ Q & A <NO.116>/ 今、巨大軍事基地への変貌を迫られる馬毛島(鹿児島県)
■ Peace Column /「愛知県知事リコール署名」の偽装・不正に怒り  佐藤謙司
■ 読者つうしん/ 二上山のふもとより、世界の人々とつながりたい 太子町 湯川 恭
■ おしらせ & 編集後記