今月を見る(「むすぶ」2013年11・12月号)2013/12/19 10:19

―「特定秘密保護法」衆議院強行採決糾弾!―
「国民の知る権利」に優先する「国家・国民の安全」などない!

11月26日夜、政府・自民党は、「公明」、「みんな」、「日本維新の会」(採決時は退場)を取り込み、「特定秘密保護法」について、衆議院本会議での採決を強行した。翌27日には、参議院で「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」が可決、成立した。翌日の朝刊には、「『知る権利』懸念残る」「NSCと一体念頭に 改憲への布石」「肥大化する情報統制」「首相明言、中身不明(第三者機関)」「半永久余地残す(秘密指定の期間)」「従属的立場のまま(国会の関与)」「11.26は巨大与党の暴走が始まった日(民主・海江田)」など「秘密法」の問題点を表現する見出しが新聞紙上を飾った(11/27毎日新聞1~3面)。
「秘密法」への広範な批判が高まる中での強行である。政府は、「批判を甘んじて受けつつ、必要なものは必ず実行するのが与党の責務」(小泉信次郎)と居直ってみせた。

では、改憲、戦争勢力にとって、全く国民の支持が無くても今すぐ「必要なもの」とは何か。これまでも明らかにしてきたように、武力行使が実行できる体制である。集団的自衛権行使解禁を前提にした「国家安全保障基本法」を軸に、違憲承知の軍事法制を整備、確立することである。「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」「特定秘密保護法」は一連の違憲の軍事立法のトップバッターとして登場してきたことは明確だ。「特定秘密保護法」はもう一つの狙いがある。すでに、日本国民に一定根付いている「憲法意識」を変えることである。今回の「秘密法」で積極的役割を担ってきた自民党の町村信孝元外相は,11月8日の衆院国家安全保障特別委員会で、国民の「知る権利」に関し、「国家や国民の安全に優先するという考え方は基本的に間違いがある」と述べ、「国家の安全」が最優先されるべき、と露骨に憲法の基本的人権を否定した。「国家優先」思想を国民に強要することは、「特定秘密保護法」に託した彼らのもう一つの大きな狙いでもある。

国会の外でも、「武力行使」に向けた準備がすすんでいる。「尖閣」問題を口実にした南西諸島周辺での日中による軍事挑発合戦のエスカレートは、その危険な実態の一端である。10月下旬から11月はじめ、九州-沖縄-台湾を結ぶ「第1列島線」を中国海軍の「北海」、「東海」、「南海」の3艦隊が初めて同時に「突破」。自衛隊は11月1日~18日、離島奪還を想定した陸海空3自衛隊の統合演習を行った。北海道や東北の対艦・対空戦に関連する部隊を、宮古島や石垣島に展開させ、護衛艦や戦闘機による射撃訓練を初めて行うなど、隊員約3万4000人が参加。対艦ミサイル「88式地対艦誘導弾」や対空ミサイル「改良ホーク」をはじめ車両約900両、艦艇6隻、航空機約380機を投入、大東島での離島奪還訓練では護衛艦、F2戦闘機、陸自ヘリによる射撃訓練を実施するという大規模かつ本格的な軍事行動だ。

日本の自衛隊のこの「統合(離島奪還)演習」に対して、中国は、さらに、尖閣上空を中国の「防空識別圏」(戦闘機のスクランブル発進を行うかどうかの目安となる地理範囲)に設定すると発表、即日施行した。日本政府は、すでに、中国当局に「飛行計画書」を提出していたJAL、ANAに圧力をかけ、提出を止めさせ、緊張は高まるばかりである。もはや南西諸島周辺は、「一発触発」の危険な海となった。この実態を社会に知らせ、軍事挑発合戦をただちに止めさせる取組みを強めなければならない。

中国をにらんで、沖縄・南西諸島に軍事力を大展開したい安倍政権・防衛省が、珍妙な「普天間固定化を避ける」との屁理屈を持ち出し、この地域の拠点として「辺野古新基地」建設を推進する主役として前面に出てきた。県内自民党国会議員5人に圧力をかけ、「容認」姿勢に展開させた。もはや、「辺野古新基地」建設を待ち望んでいるのは、米国政府よりも、日本政府であることがはっきりと見える。県知事に埋立許可を出させず、名護市長選で稲嶺現市長の再選を実現することで、安倍政権の「武力行使ができる体制」を許さない決定的状況をつくりだそう。これからも諦めることのない闘いが続く。

「むすぶ」目次(2013年11・12月号)2013/12/19 10:22

■ 今月を視る/「特定秘密保護法」衆議院強行採決糾弾!
「国民の知る権利」に優先する「国家・国民の安全」などない
■ ミニ解説/ 福島第1原発4号炉 燃料取り出し作業開始
■ 平和と生活をむすぶQ&A/ 「特定秘密保護法案」の衆院強行採決糾弾!
               いま世界の流れは「ツワネ原則」の徹底に
■ 読書案内/『戦士の休息』 落合博満 著  南河内郡太子町 湯川 恭
■ 読者つうしん/ 停職処分の本質をはっきりさせるために  元大阪府教員 松村宣彦
■ おしらせ & お願い