今月を視る (「むすぶ」2013年9月号より)2013/10/05 10:24

―戦争NO!世界の市民の声と行動が米軍のシリア攻撃を止めた―
   安倍政権の露骨な戦争路線-自衛隊侵略軍化に反対の行動を!

世界はアフガニスタン、イラクへの米国などの軍事攻撃が何をもたらしたのかをけっして忘れなかった。
奪い去られた膨大な市民の命、生活、人権、そして人間の尊厳。新たに生み出されたものは貧困と抑圧だけ。軍事侵略に参加させられた多くの米兵も肉体的、精神的苦痛に今も苦しめられている。

10年前、世界は米軍などのイラク軍事攻撃を止めることはできなかったが、けっしてあきらめることはなかった。イラク民衆と連帯して占領反対、米軍撤退を求める闘いは世界中で続けられ世界の戦争NO!の声はいっそう広がり、戦争と平和をめぐる世界の力関係を確実に変えていった。

8月31日、オバマ米大統領が「シリア政権を標的に軍事行動を取るべきだと決断した」と声明を発表した時、「軍事決着」路線はすでに完全に孤立していた。政府が狙った「シリア攻撃決議」を否決した英国議会につづき、フランス政府を除くほとんどの国々の政府と議会がシリア攻撃を支持することはなかった。国連事務総長をはじめ国際機関の多くが米仏の国連無視の武力攻撃批判を展開した。

決定的となったのは、足元の米下院で「攻撃決議」が否決される公算が高まったことである。この結果、オバマ大統領は、ついに「外交決着」に舵を切らざるを得ず、軍事攻撃は断念せざるをえない状況となった。9月14日、ケリー米国務長官とラブロフ露外相が、「シリアの保有する化学兵器を国際管理」「来年半ばまでに完全廃棄」などで合意したと発表、米国のシリア武力攻撃、軍事介入計画は破綻した。

各国の議会や議員を動かしたのは、米国内の反戦運動をはじめ、世界の一人ひとりの市民による反戦運動である。今や、戦争路線は明らかな少数派である。

米国のシリア攻撃に反対の姿勢は全くなく、事実上の容認、支持を決め込んでいた安倍政権。国内では改憲の先取りとして、露骨な軍備拡張政策をすすめている。オスプレイを使った日米共同訓練はその象徴的な計画の一つである。

防衛省は9月6日、滋賀、高知両県で10月にオスプレイを使った日米共同訓練を実施すると発表した。小野寺防衛相は「沖縄の負担軽減」と「オスプレイを災害救援に活用」を口実に、沖縄県外のオスプレイの訓練を増やす計画を明らかにした。

滋賀県では10月中旬に陸上自衛隊饗庭野(あいばの)演習場(高島市)で、空中に停止した機体から隊員がロープを伝って降りるなど戦時想定の訓練。高知県では10月下旬に、南海トラフ巨大地震を想定し、海上での被災者捜索や米軍岩国基地(山口県岩国市)から陸自高知駐屯地(香南市)などへ物資を輸送する訓練を実施するという。

饗庭野では、近年、都市型訓練施設の建設とビル突入などの市街戦訓練など「専守防衛」を超えた訓練が続けられてきており、今回の日米共同訓練は自民党防衛大綱の先取りとして、自衛隊が侵略軍へ転化していくための訓練といっても過言ではない。

「沖縄の負担軽減」はペテンである。オスプレイ部隊の「移転・分散」がなければ、「負担軽減」には全くつながらない。数機が数週間、「出張」するだけでは、むしろ、全国展開する拠点基地として普天間基地が強化されるだけ。滋賀県知事の「沖縄県の基地負担軽減」の根拠を示してほしいとの質問に、防衛省は全く答えていない。

政府・防衛省の真の狙いは、2015年度の自衛隊への導入を見越して、各地での飛行を既成事実化することだ。自衛隊に「海兵隊」をつくるとの動きも強まっており、自衛隊の侵略軍化へのステップとなる今回の共同演習やオスプレイの自衛隊導入に反対の声と行動を強めよう。

「むすぶ」目次 (2013年9月号)2013/10/05 10:27

■ 今月を視る/戦争NO! 世界の市民の声と行動が米軍のシリア攻撃を止めた
安倍政権の露骨な戦争路線-自衛隊侵略軍化に反対の行動を!
■ 声明/ シリア攻撃反対声明 9月4日・米国総領事館前行動
■ 平和と生活をむすぶQ&A/ 安倍政権 戦争国家への暴走と軍事産業のねらい
         日本経団連「防衛計画の大綱にむけた提言」
■ TV DRAMA/ 報道ドラマ『生きろ ~戦場に残した伝言~』  中川哲也
■ 読者つうしん/「通勤手当支払え」裁判 ~ なぜ本人訴訟を行ったか  中条吉博
■ おしらせ

今月を視る (「むすぶ」2013年10月号より)2013/10/24 15:17

―「戦争できる国」へ軍事法制の整備 ―
「特定秘密保護法」「国家安全保障会議設置法」は許さない!

「96条改定」が内外の強い批判の中で「立ち往生」の状態にあり、明文改憲の道が一旦遠ざかる中、安倍政権は、当面の目標を改憲(自民党改憲草案)の先取り、内実化に置いている。「解釈改憲」と「立法化」が手法の中心となる。安倍政権が10月15日開会の今国会(第185回臨時国会)で成立をねらう「特定秘密保護法」と「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」は、その「立法化」の第1弾である。強い批判を受けて、「来年3月以降」とした「集団的自衛権行使合憲解釈」を念頭に置いた軍事法制の整備である。

「集団的自衛権行使解禁」の実際の狙いは何か。政府は「行使できないと日米同盟の信頼関係が損なわれる」と説明するが、それは口実にすぎない。実際、米国が日本の「集団的自衛権行使解禁」の必要性を感じていない実情を、北沢俊美元防衛相が次のように証言している。「米国は行使容認の必要性は感じていませんよ。防衛相在任中に当時のゲーツ米国防長官と8回会談したほか、米政府やシンクタンクの多くの要人に会ったけれど、公式・非公式を問わず『日本政府は集団的自衛権を容認すべし』との意見は全く聞かなかった」(毎日新聞10/7)。そもそも、「集団的自衛権」の実態は、これまで、「行使された」という実例を見れば明らかなように、米国、旧ソ連邦をはじめとした軍事大国による軍事侵攻、侵略の口実以外にない。石破官房長官は、「国連憲章の(条文の)ど真ん中に集団的自衛権が記載されていることの意味を考えなければならない」ともっともらしく「集団的自衛権」の「普遍性」を説明してみせるが(10月21日、国会での答弁)、上述の侵略行動に足かせをはめられては困ると、米国などがねじ込んだ条文であることを完全に伏せている。米国が自国以外の他国が「いつでもどこでも武力行使」にフリーハンドを与えるような「集団的自衛権行使すべき」との要求を突きつける理由などどこにもない。現状でも米国は日本政府に必要な財政的支援、「後方支援」など軍事的支援を求め、実施させることができるからである。「いつでもどこでも武力行使」のフリーハンドを求めているのは、日本政府自身であることは間違いない。

さて、来年3月以降に政府が「「集団的自衛権行使解禁」(解釈変更)を強行した後のシナリオとして、準備している立法(軍事法制)の柱は、「国家安全保障基本法案(概要)」(自民党2012年7月6日発表)である。この法案は、集団的自衛権の行使を全面的に認める(第10条)、多国籍軍や有志連合による戦争や武力行使に参加する(第11条)、自衛隊の存在を認め、交戦権の行使を認める(第8条)、安全保障政策の遂行を内政の最優先事項として、教育を始めとした各分野に介入(第2条、第3条)、国民、地方自治体を戦争に動員する(第3条、第4条)、軍事産業の保持・育成と武器輸出入を奨励(第12条)するなど自民党改憲草案(2012年4月発表)の中味を丸っきり先取りした違憲法であり、軍事法制の根幹をなす最も危険な法である。

実は「特定秘密保護法」は、「国家安全保障基本法案(概要)」の第3条3項に求められている軍事法制の整備の一つである。「特定秘密保護法」の問題点は広範で多様だが、戦争政策をすすめるうえで、欠かせない体制づくりの一環であることを忘れてはならない。さらに、この「特定秘密保護法」とセットである「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」が姿を現してきた。日本版NSCは、憲法に違反する「集団的自衛権行使」を柱にした「国家安全保障」政策を立案、遂行する「司令塔」として位置づけられ、軍事法制の整備・立法化を含む体制整備のための方針作成が主要な役割とされている。そのため、国家安全保障局には自衛官の参加が予定されているという。日本版NSCが立案、遂行する「国家安全保障」政策は「いつでもどこでも武力行使」「戦争のできる国」をめざす軍事大国路線に基づく政策であることは間違いない。また、この日本版NSCが実際に機能するために、「特定秘密保護法」が用意されたということも見逃してはならない。憲法破壊のこんな軍事法制の整備は絶対認めてはならない。「特定秘密保護法」も「国家安全保障会議設置法」も、軍事法制の本体ともいえる「国家安全保障基本法」が登場する前に葬り去らねばならない。

「むすぶ」目次 (2013年10月号)2013/10/25 09:33

■ 今月を視る/「戦争できる国」へ軍事法制の整備
「特定秘密保護法」「国家安全保障会議設置法」は許さない!
■ ミニ解説/ 福島第1原発・汚染水問題の危機的状況
■ 平和と生活をむすぶQ&A/ 自衛隊の海外武力行使「全面解禁」ねらう
                   安倍政権の「集団的自衛権」容認
■ 読書案内/『卑弥呼コード 竜宮神黙示録』 海勢頭 豊 著 SDCC松島洋介
■ 読者つうしん/ 避難者や子育てママが気軽に集える場に  奈良 辻本 誠
■ おしらせ