今月を視る (「むすぶ」2013年10月号より)2013/10/24 15:17

―「戦争できる国」へ軍事法制の整備 ―
「特定秘密保護法」「国家安全保障会議設置法」は許さない!

「96条改定」が内外の強い批判の中で「立ち往生」の状態にあり、明文改憲の道が一旦遠ざかる中、安倍政権は、当面の目標を改憲(自民党改憲草案)の先取り、内実化に置いている。「解釈改憲」と「立法化」が手法の中心となる。安倍政権が10月15日開会の今国会(第185回臨時国会)で成立をねらう「特定秘密保護法」と「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」は、その「立法化」の第1弾である。強い批判を受けて、「来年3月以降」とした「集団的自衛権行使合憲解釈」を念頭に置いた軍事法制の整備である。

「集団的自衛権行使解禁」の実際の狙いは何か。政府は「行使できないと日米同盟の信頼関係が損なわれる」と説明するが、それは口実にすぎない。実際、米国が日本の「集団的自衛権行使解禁」の必要性を感じていない実情を、北沢俊美元防衛相が次のように証言している。「米国は行使容認の必要性は感じていませんよ。防衛相在任中に当時のゲーツ米国防長官と8回会談したほか、米政府やシンクタンクの多くの要人に会ったけれど、公式・非公式を問わず『日本政府は集団的自衛権を容認すべし』との意見は全く聞かなかった」(毎日新聞10/7)。そもそも、「集団的自衛権」の実態は、これまで、「行使された」という実例を見れば明らかなように、米国、旧ソ連邦をはじめとした軍事大国による軍事侵攻、侵略の口実以外にない。石破官房長官は、「国連憲章の(条文の)ど真ん中に集団的自衛権が記載されていることの意味を考えなければならない」ともっともらしく「集団的自衛権」の「普遍性」を説明してみせるが(10月21日、国会での答弁)、上述の侵略行動に足かせをはめられては困ると、米国などがねじ込んだ条文であることを完全に伏せている。米国が自国以外の他国が「いつでもどこでも武力行使」にフリーハンドを与えるような「集団的自衛権行使すべき」との要求を突きつける理由などどこにもない。現状でも米国は日本政府に必要な財政的支援、「後方支援」など軍事的支援を求め、実施させることができるからである。「いつでもどこでも武力行使」のフリーハンドを求めているのは、日本政府自身であることは間違いない。

さて、来年3月以降に政府が「「集団的自衛権行使解禁」(解釈変更)を強行した後のシナリオとして、準備している立法(軍事法制)の柱は、「国家安全保障基本法案(概要)」(自民党2012年7月6日発表)である。この法案は、集団的自衛権の行使を全面的に認める(第10条)、多国籍軍や有志連合による戦争や武力行使に参加する(第11条)、自衛隊の存在を認め、交戦権の行使を認める(第8条)、安全保障政策の遂行を内政の最優先事項として、教育を始めとした各分野に介入(第2条、第3条)、国民、地方自治体を戦争に動員する(第3条、第4条)、軍事産業の保持・育成と武器輸出入を奨励(第12条)するなど自民党改憲草案(2012年4月発表)の中味を丸っきり先取りした違憲法であり、軍事法制の根幹をなす最も危険な法である。

実は「特定秘密保護法」は、「国家安全保障基本法案(概要)」の第3条3項に求められている軍事法制の整備の一つである。「特定秘密保護法」の問題点は広範で多様だが、戦争政策をすすめるうえで、欠かせない体制づくりの一環であることを忘れてはならない。さらに、この「特定秘密保護法」とセットである「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法」が姿を現してきた。日本版NSCは、憲法に違反する「集団的自衛権行使」を柱にした「国家安全保障」政策を立案、遂行する「司令塔」として位置づけられ、軍事法制の整備・立法化を含む体制整備のための方針作成が主要な役割とされている。そのため、国家安全保障局には自衛官の参加が予定されているという。日本版NSCが立案、遂行する「国家安全保障」政策は「いつでもどこでも武力行使」「戦争のできる国」をめざす軍事大国路線に基づく政策であることは間違いない。また、この日本版NSCが実際に機能するために、「特定秘密保護法」が用意されたということも見逃してはならない。憲法破壊のこんな軍事法制の整備は絶対認めてはならない。「特定秘密保護法」も「国家安全保障会議設置法」も、軍事法制の本体ともいえる「国家安全保障基本法」が登場する前に葬り去らねばならない。

コメント

トラックバック