「今月を視る」(「むすぶ」2016年4月号より)2016/05/14 11:12

 2019年2月の「5年以内」期限へ
普天間基地運用停止こそ政府の緊急責務だ!

またしても大震災が熊本・九州を襲った。この震災で犠牲になられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被災された全ての方々の悲しみと困難な生活に心を寄せ、支援の行動を惜しまない世界の人々と共にありたい。

大震災を軍備拡大に政治利用する日本政府
誰もが、こんな気持ちにあるとき、大災害さえ軍備増強に利用する安倍内閣の悪辣さは到底許すことができない。政府は、大規模災害が起こる度に自衛隊が災害救助の「主役」であるかのごときイメージ操作に狂奔してきたが、今回は沖縄普天間基地問題で焦点のMV22オスプレイの「緊急派遣」まで演出した。
安倍首相は当初、米軍による支援に関し「支援の申し出があるが、直ちに必要な状況ではないと考えている」としながら、震災の拡大を理由に「慎重姿勢」を一転させ、すでにオスプレイの被災地入りを実施させた。他にも、米空軍のC130輸送機2機が航空自衛隊千歳基地(北海道)から熊本空港に自衛隊員や車両を輸送。米海軍のUC35輸送機も厚木基地(神奈川県)から自衛隊員を熊本空港に輸送する予定だという。だが、沖縄や北海道、神奈川から米軍機を動員しなければならない理由、国内の民間はおろか消防、警察等の行政組織、自衛隊の装備だけでは災害救援の現在の輸送体制に不足が生じるという合理的説明は一切ない。「オスプレイは陸上自衛隊の輸送ヘリCH47より航続距離や速度は上回るが、搭載できる空間が狭く容積は半分ほど。比較的軽い生活物資ならばCH47の方が一度で多くの物資を運べる」(毎日新聞)という。
また、米国も本当に人道支援を考えるなら、同時期に発生したエクアドルに支援を集中すべきだ。エクアドルは日本よりもインフラ状況、財力が脆弱で、被害も甚大。それだけに支援のニーズは高いからだ。さらに、日本政府は、被災者救援に本気で臨むなら、例えば、約3600億円と言われるオスプレイ購入予算を凍結し、臨時の救援予算をつくるぐらいの実体のある対応をしてしかるべきなのだ。
ポーズだけ「全力対応」の政府の本当の狙いは透けている。沖縄だけでなく全国の自治体でも問題視、懸念されているオスプレイを「オスプレイは大規模災害に対し、高い機動力と空輸力を併せ持っている」(中谷防衛相)と「民生活用」にこじつけ、国民や自治体に「その存在は仕方ない」と許容を迫ることだ。だが、多くのメディアにとって、こんな政府の「震災の軍事利用」を正面切って批判する現状にはない。残念ながら、政府によるメディア規制 の反映と見ざるをえないが、市民が「震災の軍事利用」反対の声を正面切ってあげることは今後も極めて重要な課題となっている。

オスプレイの居場所は「普天間」にも「辺野古」にもない
そのオスプレイは今も普天間基地に居座り続ける。1996年の「普天間基地返還」合意から20年、2013年末、当時の仲井真知事に対し、安倍首相が5年内運用停止について「努力を十二分に行う」と述べてから2年以上が経った。「5年以内」の期限は2019年2月である。だが、政府の努力は、「十二分」どころか何一つない。先の日米首脳会談でも安倍首相は米軍普天間基地の5年内運用停止について全く言及しなかった。ペテンと言う他ない。そして、今になって「普天間の運用停止は県側の協力が前提だ」と居直る。だが、「5年内運用停止」を当時の仲井真知事に対し「約束」した当時、「辺野古新基地完成」には最低でも10年以上かかるとされていたことから、「辺野古新基地」とは切り離してすすめる事案だったはずである。
普天間基地の「5年内運用停止」は政府の義務であることは今も変わりない。もはや、オスプレイの居場所は普天間でも辺野古でもない。沖縄にオスプレイの居場所がないことを政府に認識させよう。沖縄の人々とともに、全国から、この要求を政府に突きつけるときだ。

「むすぶ」目次(2016年4月号)2016/05/14 11:14

■ 今月を視る/ 2019年2月の「5年以内」期限へ
普天間基地運用停止こそ政府の緊急責務だ!
■ OPINION/ 川内原発は直ちに停止!
■ Q&A/ 安倍政権による和解協議の破壊工作 許さぬ闘いを!!
■ 映像案内/ 「最高の花婿」 コメディーだからこそ描けた偏見や本音
  監督:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン   全交 判田明夫
■ 読者つうしん/ 「恨之碑」沖縄の韓国訪問 10周年の取組み
                沖縄恨(ハン)之碑の会 沖本富貴子
■ 市民のための 自由なラジオ & おしらせ

今月を視る(「むすぶ」2016年5月号より)2016/05/27 09:38

オバマ大統領の広島訪問
核兵器廃絶へ原爆投下の過ち認め、謝罪を!

被害者への謝罪は不可欠
オバマ大統領が「伊勢志摩サミット」の終了直後の5月27日に広島を公式訪問することが決まった。
人類史上他に例を見ない無差別大量殺戮として明白な「人道に対する罪」である原爆投下を世界で初めて唯一実行した米国に、その過ちを認めさせ、被害者に謝罪させることは、「核のない平和な世界」への不可欠かつ最も重要な課題である。今なお、核兵器保有世界一の位置を維持するだけでなく、世界の戦争の中心にある米国に過ちを認めさせ、被害者に謝罪させることは容易でないことは確かだが、あいまいにしたり、避けて通ったりすることは許されない問題である。だが、米国はすでに「広島で謝罪しない」と予防線を張り、この問題から世界の目をそらせようと懸命だ。
日米互いの戦争責任不問で「同盟強化」
広島へは安倍首相も同行する。日本政府は、オバマ大統領の広島訪問に際して、過ちを認めることも被害者への謝罪も一切求めない。日米政府の狙いは、そもそも「伊勢志摩サミット」がそうであるように、グローバル資本の権益確保のための「同盟強化」であり、そのために、互いの戦争責任を消し去ることにある。
だが、この狙いを世界はすでに見抜いている。昨年2月、広島の平和市民団体が共同でオバマ大統領に充て、『私たちは、オバマ大統領が広島を訪問される際には、米国大統領として、原爆無差別大量殺戮が人類に対する由々しい犯罪行為であったことをはっきりと認め、米国政府の責任の所在を明らかにした上で、原爆被害者に謝罪し、残り少なくなった米国大統領の任期期間中、「核廃絶」に向けて全力で努力する覚悟を公にされることを要求します。と同時に、日本政府、安倍政権にも、中国・北朝鮮・韓国をはじめアジア太平洋諸国に対して自国の「戦争責任」を真摯に認め、謝罪し、「被害者」、「被害国」が受け入れられるような適切な戦後補償政策を実践していくことを強く求めます。』との手紙を送った。
世界のすう勢は核兵器廃絶と軍縮
ジュネーブで「核兵器のない世界」を実現するための法的な措置を話し合う国連の公開作業部会(核兵器を法的に禁止しようという国際的な潮流の高まりを受けて、昨年の国連総会決議によって設立された)が開催され、「メキシコ、ブラジルなど9カ国が、核兵器禁止条約を念頭に、核兵器を禁止するための法的な措置についての交渉を2017年から開始するよう、踏み込んだ提案をした。核兵器の非人道性を訴え、禁止を求める動きは広がりを見せ、より具体的なものになっている」(毎日新聞)。核保有国はボイコットで対抗しているが、もはや、この流れは止められない。一見、混乱と戦争が支配するかに見える世界も、ヨーロッパでの軍縮が顕著なように軍縮が趨勢だ。
オバマ大統領は被爆者の声に向き合え
オバマ大統領の広島訪問は世界の核廃絶と軍縮との流れの中にある。この流れが「広島訪問」を実現させたとも言える。彼らの思惑がどこにあるにせよ、広島訪問で被爆者の声に触れずにいられることは不可能だ。広島県の湯崎知事は、被爆の実相をしっかりと受け止めるためには「原爆慰霊碑への献花と資料館見学、原爆ドームの視察とともに、被爆者の話を聞くことがフルセットとしてあるのではないか」と指摘し、オバマ米大統領が広島を訪問する際、被爆者と面会する場を設けるよう、安倍晋三首相やケネディ駐日米大使に直接要請する考えを示した。今こそ、被爆者の声に向き合わせなければならない。

「むすぶ」目次(2016年5月号)2016/05/27 09:40

■ 今月を視る/ オバマ大統領の広島訪問 核兵器廃絶へ原爆投下の過ち認め、謝罪を!
■ 寄稿/ 韓国の総選挙結果が日本の市民に問いかけること 日韓共同行動 矢野秀喜
■ Q&A/ 国地方係争委員会-不合理性露出した国の主張
        国連人権委員会・特別報告者~新基地反対運動への過剰警備に警告
■ BOOK CORNER/『私は沖縄の牧師である』 平良 修 著  神戸市 岡本 誠
■ 読者つうしん/「普天間基地閉鎖、辺野古新基地断念」へ
当事者として取り組む自治体決議にトライ! 堺市 豆多敏紀
■ 沖縄「恨之碑」10周年 カンパのお願い & おしらせ