今月を視る (「むすぶ」2014年4月号より)2013/05/05 16:53

朝鮮半島の危機打開の鍵は、軍事挑発合戦の即刻中止!

東アジアの平和と安定が大きく揺らいでいる。朝鮮人民民主主義共和国(以下、朝鮮)による昨年12月に行った長距離弾道ミサイル(朝鮮政府は「人工衛星」と主張)の発射、今年2月に強行した3度目の核実験に続いて、中距離弾道ミサイル「ムスダン」を日本海側で発射するための準備とみられる動きを強めるとともに、韓国、米国や日本に対し、「グアムや在日米軍基地も標的に入っていることを自覚すべき」などの言動を繰り返していることによるものである。国連安保理の制裁強化決議(1月)、追加制裁決議(3月)に対し、朝鮮戦争休戦協定の白紙化表明(3月5日)、「韓国との不可侵合意破棄を宣言」(3月8日)、寧辺の核施設の再稼動を表明(4月2日)、韓国在留の外国人に「避難勧告」(4月9日)など次から次へと敵対、緊張激化政策を打ち出し、事態は悪化の一途である。

朝鮮政府の「核には核」「ミサイルにはミサイル」などという時代錯誤の「先軍政治」(軍事至上主義)を擁護する理由など一切ないことは言うまでもない。だが、事態悪化の責任を朝鮮政府の言動と対応だけに押し付け、「妥協はない」と強調するだけで、事態打開にむけた「対話と協調」の具体的行動をとろうとせず、朝鮮住民を含めた各国住民の安全を優先しない日米韓政府の不誠実とうそは批判されなければならない。

事態は冷静に見なければならない。マスメディアのセンセーショナルな報道は、朝鮮のミサイル「発射」が、在日米軍基地を含む「的をしぼった攻撃」であるかのような印象を与えている。だが、実際は「われわれにもこんなすごい核搭載ミサイルがあるぞ」というデモンストレーションであり、発射実験である。もちろん、そんなばかげたデモンストレーションは許されないが、発射が即刻被害につながるかのような宣伝の仕方は、軍備増強に世論を意図的に誘導する悪質なものである。

朝鮮政府に強い影響力を持つという中国政府の対応姿勢は、この問題に関する限り原則的である。「事態がどう変わろうと、対話と協議を堅持することで問題を解決すべきだ」(中国外務省)、「米国は(一方的に制裁を加えるなど)火に油を注いではならず、韓国は(北朝鮮や米国に踊らされて)焦点を見失ってはならず、日本は(この機会に軍備を増大させるなどの)火事場泥棒を働いてはならない」(「人民日報」)。

朝鮮への強い軍事的圧力であり、朝鮮が態度を一気に硬化させた米韓合同機動演習「フォール・イーグル」(3月1日~4月30日予定 韓国軍20万人、米軍1万人が参加)による軍事挑発を米韓はただちに中止すべきである。米軍は、3月11~21日に実施した合同演習「キー・リゾルブ」(韓国軍1万人、米軍3千人が参加)に核爆弾やバンカーバスター搭載可能なB2ステルス爆撃機やB52戦略爆撃機、最新鋭のF22戦闘機を投入した。この米韓の動きに、朝鮮側がさらに大きな警戒心を高めたことはまちがいない。朝鮮のミサイル発射などの動きは、こうした米国の挑発、脅迫行動へのカウンター行動であり、軍事的圧力と「制裁」一辺倒の対応が事態を悪化させるだけであることはもはや明らかである。

日本政府もまた、海上配備型迎撃ミサイル「MS3」を搭載したイージス艦「こんごう」「きりしま」を展開させ、全国に航空自衛隊の地上配備ミサイルPAC3を配置、発射予告もない段階から迎撃のための「破壊措置命令」を出すなど、この機とばかりに日米共同作戦の「演習」を実行している。迎撃できる可能性など極めて低いことを知りながら(「過去3回が小学生の計算ドリルなら、今回は高校の微分・積分ぐらい難しい」自衛隊関係者)、「ミサイル防衛」を展開する目的は朝鮮への軍事的威嚇だけである。

各国の軍事挑発合戦を止めさせ、東アジア住民の「人間の安全保障」を基本にした平和的交渉を求める声を広げよう! 事態打開の道はそこにしかない。

「むすぶ」目次 (2013年4月号)2013/05/05 16:55

■ 今月を視る/ 朝鮮半島の危機打開の鍵は、軍事挑発合戦の即刻中止!         
■ ミニ解説/ 「福島避難者こども健康相談会」開催にむけて 医療問題研究会 森 國悦
■ Q&A/ 環境関連法改定(放射性物質への適用)による
              汚染の規制緩和を許してはいけない!
■ TRIP CORNER/ 八重山・ちらっと1人旅(その2)  堺市 豆多敏紀
■ 読者つうしん/ 卒業式で「君が代」を立って歌えない教師の思い 吹田市 親家智子                         
■ 5.8学習会案内 & おしらせ