岩国の今 (「むすぶ」2011年4月号)2011/04/22 17:41

仕組まれた愛宕山の「米軍住宅化」計画に市民の怒り新た!

『岩国市が一部公開した「市長協議報告書」によると、2年前に、民間空港と愛宕山の米軍住宅化に関する裏取引が行われていたことも判明しています。目先の借金や責任逃れのために愛宕山を米軍基地に売り飛ばすことは、最悪の選択です。愛宕山は一等地であり、地元業者の手で住宅開発や福祉施設の建設を行えば、大きな経済効果も期待でき、また、将来にわたって固定資産税(岩国市の収入)も入ります。米軍基地になってしまえば、何の経済効果もなく、税金も取れません。事実を隠し法律まで侵して、市街地の真ん中に東京ドーム15個分にも相当する広大な米軍基地を作るなど、市民に対する重大な背信行為であり、絶対に許されません。』(「草の根ネットワーク岩国」ホームページ・2011年あいさつ)

「米軍および自衛隊の機動的な展開を図る」ための「米軍再編計画」の一環として、米海軍厚木基地の空母部隊(空母キティーホーク艦載機)の57機を岩国にそっくり移転させるという計画が正式に発表されたのは「日米同盟:未来への変革・再編(役割・任務・能力と兵力態勢の再編)平成17年(2005年)10月 防衛庁」によってである(沖縄の名護新基地建設に関して、辺野古沿岸案(L字型)の決定もこの文書によって明らかにされた)。この計画がすすむと、すでに岩国基地に駐留している海兵隊の航空機約60機に加えて、さらに騒音の大きいスーパーホーネットなどの艦載機部隊が加わり総数は約130 機という一大拠点基地が出現することになる。

こんな無謀で勝手な計画に、岩国市民は黙っていなかった。井原勝介市長(当時)が発案した住民投票条例に基づき2006年3月12日に行なわれた「米空母艦載機移転」の是非を問う岩国市の住民投票では、当初の「投票率50%以上は難しい」の「予想」をはね返し、投票率58%で、有効投票の 87.42%、全有権者の過半数(51.30%)が「移駐ノー」の意思を見事示し、政府に突きつけた。

だが、政府にとっては、沖縄でもそうしたように、住民意思は政策決定の重要なファクターではなかった。住民投票直後の周辺町村合併を受けての市長選(2006年4月)でも圧倒的に支持を得た井原勝介市長(当時)に対し、議会内「移駐」容認勢力と結託し、基地交付金の削減や補助金ストップ(市庁舎建替えの補助金。元々は沖縄からのKC130の受け入れに約束した補助金なのに、空母艦載機部隊の移駐を認めないという理由で補助金をストップ)で財政的締め付けを行い、市長提案の予算案を何度も否決、ついには市長辞任と引き換えに提案した予算案をも否決したあげく、その後の市長選挙では、悪質なデマと中傷、選挙の争点を「空母艦載機移駐問題」を「財政問題」に巧妙にすり替える戦術で僅かの票差で市長の座を奪うことに成功したのだ。

冒頭の「市長協議報告書」は2年前の事実だが、「民間空港と愛宕山の米軍住宅化」に関する策動は、2005年の空母艦載機部隊岩国移駐計画の当初からセットとして織り込まれていたものだ。滑走路の増設工事と連動してすすめられた213㌶の埋め立てで基地敷地は1.4倍になった。その埋立て用山土採取で進められた「愛宕山地域開発事業」が破綻、250億円余の負債が残ることになった。そこにつけ込んでもう一つの地元が要望する課題「軍民共用空港」化(これとて部隊の兵員や家族を厚木や横田に運ぶために米軍にとっては好都合)をアメに開発跡地の米軍住宅化を求めて来るというあきれるほど巧妙な策略だった。しかし、政府や移駐容認の勢力が市民を欺き続けてきたことへの怒りは大きい。愛宕山開発地の米軍住宅化反対の取り組みは、開発地周辺の住民で立ち上がった「愛宕山を守る会(岡村寛代表)」や、9つの市民運動団体が団結してサポ-トする「愛宕山を守る市民連絡協議会」へと発展し大きく盛り上がっている。沖縄とともに、全国から岩国の闘いへの注目と連帯が必要だ。  (事務局 豆多)