今月を視る(「むすぶ」2013年5月号)2013/07/16 10:35

―橋下の「慰安婦制度必要」発言―
露呈した壊憲勢力の醜い正体を徹底追及へ

「計算高い」はずの橋下徹大阪市長が大きな計算間違いをした。米国政府からも「強硬な国家主義者」「歴史修正主義者」として警戒される自民党安倍首相を「壊憲パートナー」として擁護し、「援護射撃」で自民党に恩を売ろうとしたのか、「自民党よりも徹底しているぞ」という姿勢を見せ、参議院選で「右翼票」をかすめとろうとしたのか、定かではない。だが、この「計算間違い」は、国の内外から大きな批判を呼び、無責任、でたらめな本性を、さらに浮き上がらせる結果となった。

問題の会見(5月13日)での発言は大よそ次のようなもの。「侵略のきちんとした定義はなく、敗戦の結果として侵略である。反省とお詫びはしなければならないが、日本が不当に侮辱されている。なぜ日本の慰安婦問題だけが世界的に取り上げられるのか。国をあげて強制的に慰安婦を拉致し、職業に就かせたと世界は非難しているが、違うところは違うというべき。当時はいろんな軍で慰安婦制度を活用していた。銃弾が飛び交う中での猛者集団はどこかで休息をあげようと思ったら、慰安婦制度は必要なのは、誰だってわかる。今のところ、2007年の閣議決定(第1次安倍内閣)では(強制連行の)証拠がないとなっている。(沖縄司令官に対して)風俗業を活用してもらわないと海兵隊の猛者の性的なエネルギーをきちんとコントロールできない。」

米国を含む世界からの徹底批判で、この発言が国際社会で全く通用しないことがわかると、空々しい「弁明(詭弁)」「言い逃れ」に汲々とする醜態ぶりである。「ぼくは、一度も(いま「慰安婦制度」が)必要だとは言っていない。当時の人が必要と思っていたという客観的事実を言っただけ。」(沖縄の海兵隊の性犯罪に関しては)「買春など法律で禁止されている『風俗』ではなく、日本で法律で認められている『風俗』の活用を言った」「敗戦の結果として、侵略、植民地支配について反省、謝罪が必要」等々。結局、余計なこと(ただのデマ)を言ってトカゲの尻尾切りのように「維新」から除名された西村慎吾や放言、妄言だけが売りの石原慎太郎以外に、だれも「橋下発言」を擁護できない状況になっている。壊憲勢力のパートナーである「みんなの党」からは選挙協力の「白紙撤回」を突きつけられ、最も頼りにすべき壊憲の盟友である安倍首相からも「立場が異なる」と突き放される始末である。

ところで「橋下発言」の根底にあるのは、侵略と植民地支配に言及した村山談話と「慰安婦」への日本軍の関与を認めた河野談話の否定である。強制連行の否定、「慰安婦」は「売春婦」にすぎず性奴隷ではないという考えは、安倍自民党や維新の会に共通した考え方である。橋下の奇妙な言い回しである「敗戦の結果として、侵略、植民地支配について反省、謝罪」は「戦争に負けたのだから、勝った方が言う侵略、植民地支配は認めざるを得ず、反省、謝罪は仕方ない」というものであり、日本による侵略と植民地支配を史実として認めるものでないことは明らかであり、この歴史認識においては、安倍首相や日本による侵略、植民地支配を一切認めない石原慎太郎らの連中とも何ら違いはない。

さらに、このような勢力の政治家が持つ致命的な欠陥は、国際社会による奴隷制の廃絶、人種差別の撤廃、性暴力や女性差別の撤廃をめざす努力を理解しようともせず、完全に無知のままであり、そして、何よりも被害者の人権擁護、尊厳回復、救済に全く無関心なことである。基地被害に苦しむ沖縄の市民の人権など眼中にないからこそ、平気で米軍に「風俗の活用を」と言うのである。

最近の世論調査で、維新の支持が急落していることが報じられている。だが、安倍自民を含め、しばらくは様子を伺いながらも参議院選後の改憲の機会を伺っていることに変わりはない。自民党憲法改正草案は、こんな勢力が共通して持つ「歴史修正主義」を根底に、「公益及び公の秩序」の名で、国家システム全体をグローバル資本の権益のために、根本から作り変えようとするものだ。橋下の犯罪的とも言える今回の発言を徹底的に追及することで、壊憲勢力の正体を市民に広く暴いていこう。

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