「むすぶ」目次(2025年10月号)2025/10/21 06:07

■ 今月を視る / 停戦は、ジェノサイドを終わらせるための最も重要な第一歩
■ オピニオン / 与那国町長選「小さな島の大きな変化」に思うこと 東京 矢野秀喜
■ ドキュメンタリー / 長生炭鉱-ついにご遺骨発見、収集!
長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 上田慶司
■ 沖縄レポート / 謀られた宮古島での陰謀     元沖縄国際大講師 西岡信之
■ 映像あんない / 小説『宝島』と映画『宝島』 真藤順丈 作   事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / 自衛隊を災害救助隊に!   堺市 堤 淳雄
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年10月号2025/10/21 06:05

停戦は、ジェノサイドを終わらせるための最も重要な第一歩

原発・軍拡推進の「連立」は許せない
 安倍政治の継承者であり、極右政治家である高市早苗が自民党総裁に選ばれた。公明党が連立解消に踏み切る中、新たな連立をめぐる「政権枠組み協議」なる取引が目まぐるしく行われている。国民民主の玉木代表が言うとおり「基本政策(安保軍事、原発、憲法認識)においては、自民党に近い」国民民主や維新はまぎれもない右派政党である。立憲、民主、維新3党による「政権交代」も「立憲とは基本政策にかなりの隔たりがある」(国民民主・玉木代表)と早くも頓挫の状況だ。自民党との「連立」が維新であれ、国民民主であれ、原発、軍拡推進に変わりなく、到底容認できないものだ。権力の「椅子取りゲーム」にしか興味のない連中は、退陣を余儀なくされた石破首相が意地で出した「戦後80年所感」(歴史認識には全く踏み込まず、「抑止論を否定する立場には立ちえない」など不十分そのものだが、斉藤隆議員の「反軍演説」や「総力戦研究所」が出した「敗戦必死」の研究結果にもかかわらず、「なぜあの戦争を避けることができなかったのか」と問うている)には見向きもしない。世界や国連でパレスチナ虐殺を止め、和平合意を守り、どう発展させるかが論議されているのに、興味すら示さない。「連立」政権がどんな形にせよ、脱原発、軍拡ストップの基本政策を軸に社会保障、賃上げをはじめとした市民の生活改善を求める運動を現場から積み上げていく運動を強めるときである。

停戦を守り、恒久停戦へ ― ここからが闘い
 パレスチナ・ガザの和平計画の「第1段階」となる戦闘停止と人質解放等について合意が成立し10月10日、正式発効した。一刻も早くガザ住民虐殺が止まることを願ってきた世界の大多数の人々にとって、戦闘停止は深い安堵と喜びをもたらした。トランプ主導の「和平計画」がいくつもの重大な問題点を孕んでいる。トランプやネタニヤフの狙いは邪悪であることは間違いないが、今大事なことは、世界中の願いと運動が押し上げた今日の停戦を守り、恒久停戦、恒久平和へ発展させることだ。
 これまでも停戦破りを繰り返してきたイスラエルが、早速停戦破棄の口実探しに動き出した。すでにハマスは人質の生存者20人全員を解放し、イスラエルは拘束しているパレスチナ人2000人近くを釈放した。しかし、イスラエルは「いちゃもん」でしかない無理難題を押しつけている。人質28人の「遺体引き渡しが遅い」という理由で、ガザ境界のすべての検問所を制限し、人道援助の流入を半減させるという暴挙を強行している。白旗を掲げて救出を求めた人質がイスラエル軍に射殺された他、死亡した人質の多くは、ガザ住民もろともイスラエル軍の空爆、攻撃によって殺されたものと思われる。ガザ保健省の発表によれば、確認された死亡者は6万7千人を超え、今なお多くの犠牲者が瓦礫などに埋まったままで、死亡者は大幅に増える可能性が高い。ガザ住民もろとも自国民である人質を無慈悲に殺し、瓦礫に埋もれたままにしている非道で無責任な行為には頬かむりしたまま、人質遺体の「引き渡し遅れ」をハマスの合意違反とこじつけ、攻撃再開の機会を伺うというイスラエルの理不尽な態度を許してはならない。
さらに驚くべきは、イスラエルから引き渡された90体のパレスチナ人の遺体の多くに、拷問の痕が残っていると報じられたことだ。「セル病院の法医学チームは、遺体を調べた結果、身体的暴行を示唆する痕があると説明した。中には足かせを付けられたり、首にロープを巻き付けられたりした状態で搬送されてきた遺体もあったという」(CNN)。イスラエルの戦争犯罪は膨大であり、停戦合意は、戦争犯罪を免罪するものではない。
「停戦は、不法に占領され包囲されているガザ地区における230万人のパレスチナ人に対するジェノサイドを終わらせるための最も重要な第一歩」(BDS全国委員会)である。新たな闘いに合流しよう。

「むすぶ」目次(2025年9月号)2025/09/23 15:13

■ 今月を視る / 大量虐殺を止める闘いは世界中の平和に生きる権利を求める闘い
■ 解説 / 日韓首脳会談-問われているのは日本側の対応 強制連行・全国ネット 矢野秀喜
■ 沖縄レポート / 現場は抗い続ける 前のめりの日米政府の戦争準備を止めよう!
          元沖縄国際大学非常勤講師 西岡信之                     
■ オピニオン / 原子力、未来を奪うエネルギー  ZENKO関電前プロジェクト 八木浩一 
■ 映像あんない / 「木の上の軍隊」 監督・脚本 平 一紘  事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / 音楽は人を励ます Swing MASAさんとともに  SDCC 松島洋介
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年9月号)2025/09/23 15:12

大量虐殺を止める闘いは世界中の平和に生きる権利を求める闘い

今すぐ、パレスチナ国家承認を
イスラエルがジェノサイド(大量虐殺)を止めない。国連の諸機関、加盟国の大多数が非難と即時停戦要求を繰り返しても、さらに、当初は「イスラエルの自衛権」を容認していた英仏などG7の西側大国が次々とパレスチナ国家承認を表明する中にあっても、イスラエル政府は、「反ユダヤ主義」と「ハマスを利するだけの愚かな決定」と徹底的に無視。そんな不遜な態度を続けられるのは、世界の暴君である米トランプ政権がネタニヤフ政権の「後ろ盾」を続けているからである。とはいえ、この両者は確実に孤立し、追い詰められている。さらなる、批判の広がりが求められるが、日本政府は、ニューヨークで開かれるパレスチナに関する首脳級会合で、パレスチナの国家承認表明(すでに150カ国が国家承認)を行わない方針を固めたと報道されている。米政府から「イスラエルを硬化させて逆効果となる」と説得されたという。こんな奇妙な理屈はありえない。「逆効果」というなら、イスラエルを「軟化」させ、ジェノサイドを止めさせる効果的な方策を示せと問わねばならない。それも示さず、パレスチナ国家承認を今行わないのは、ジェノサイドへの加担でしかない。「将来」ではなく、今すぐ、「パレスチナ国家承認を行え」の声を政府にぶつけ、要求しよう。

露骨なICCつぶしの攻撃
ネタニヤフとトランプにとって最大の邪魔者は「法の支配」に基づく戦後の国際秩序であり、国際法に基づいて戦争犯罪者を裁くICC(国際刑事裁判所)である。ICCは昨年11月、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相に戦争犯罪者として逮捕状を発付したが、それに対する報復としてトランプ政権がICCつぶしの本格的な攻撃をしかけている。日本の検事出身で、初のICC所長となった赤根智子さんが6月に出版した著書(「戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない」文春新書)で、その攻撃の凄まじい実態を知らせ、「世界中のすべての国に対して、ICCを擁護するために団結してほしい」と訴えている。ロシアのプーチン大統領によって、赤根所長を含む検察局のカーン主任検察官ら職員の何人かはロシア国内での逮捕状が発付されたが、トランプ政権の攻撃はその比ではない。
今年2月6日、トランプ大統領は、ICCへの制裁(特に職員や関係者への制裁)を可能にする大統領令に署名した。ICCの全職員員に対して、アメリカ国内の資産凍結、アメリカへの渡航禁止、アメリ企業との取引禁止を科すことができるだけでなく、近親者、代理人ICCの捜査に協力した者、制裁対象者に商品やサービスを提供した者にまで何らかの制裁を加えることを視野に入れた規定になっている。
「ICCそのものが制裁対象になった場合、世界中のあらゆる銀行や企業がICCとの取引をストップさせる可能性があり、職員に給料が払えなくなり、組織のあらゆる機能がマヒするかもしれない。ウクライナやアフリカに設置している捜査や公判のための事務所にも送金できなくなる。ICCのITCシステムはアメリカ企業によるものだから、これが維持できなくなり、電子データーの保管にも問題が生じかねない。
そうなれば、武装組織などから危害を加えられないようICCで保護している被害者や証人たちの個人情報が洩れ、彼ら・彼女たちの安全を確保できない心配。裁判自体に支障が出るようなことがあれば、拘束している被疑者や受刑者を釈放せざるを得なくなるかもしれない。過去に出した逮捕状も、実質的に意味のないものになる。もはやICCはつぶされたも同然になる。」と、赤根所長は危機感を募らせている。

誰もが、平和に生きる権利を持っている
ICCに象徴される「法の支配」を力づくでねじ伏せようとするトランプ政権。「世界中のすべての国に対して、ICCを擁護するために団結してほしい」との訴えに、世界の隅々から市民が自国政府に正しい選択を迫る闘いで応えよう。
ネタニヤフ政権とトランプ政権の暴虐に怒り、即時停戦を求める世界中の声は、反イスラエルでもなく、親パレスチナでもない。根源にあるのは、誰もが、平和に生きる権利を持っていることへの共感であり、それが今日世界の常識だという信念である。その権利を奪われた人々とともに前進しよう。

「むすぶ」目次(2025年7・8月号)2025/07/28 10:26

■ 今月を視る / 今こそ「ミサイルより米を!」「人権ファースト」の声を!
■ 解説 / 柏崎刈羽原発再稼働 県民投票は否決されても正念場はこれから
           東京都足立区 山根昭平 
■ 報告 / 継承と裾野の広がりが強く感じられた
2025年度「沖縄恨之碑の会」追悼会   事務局 豆多敏紀      
■ 沖縄レポート / 尊い命を捧げたのではなく、国体護持のために奪われた命
元沖縄国際大講師 西岡信之  
■ オピニオン / 天皇の広島訪問に異議あり    ZENKO 広島 日南田成志                   
■ 読者つうしん /「欲しがりません 勝つまでは」に思う    堺市 中川經子 
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年」7・8月号)2025/07/28 10:24

今こそ 「ミサイルより米を!」 「人権ファースト」 の声を!

最悪の参議院選結果
2025年参議院議員選挙。気分で言えば最悪の結果だった。「善きこと」をあえて探せば、沖縄選挙区で「オール沖縄」が議席を守ったこと、社民党が比例で1議席獲得し2%の政党要件をクリアしたことぐらいか。だが、沖縄選挙区では極右の参政党が12万票も獲得。これは右翼票が自民党側から流れた結果であった。また社民党では、これまで人権・平和の闘いに率先して取り組んできた現職の大椿ゆうこ議員の再選を果たせなかった。そんなことを考えると手放しでは喜べない。
 他方、石破自公政権の過半数割れ、「大敗」という結果も、単純には喜べない側面がある。自民党がここまで落ち込んだのには、旧安倍派など極右的勢力の票が参政党や保守党という極右政党に、さらに極右とまでは言えないまでも排外的で反共の右派政党、国民民主党に流れ込んだことが一因として挙げられる。日本のメディアの多くは、旧安倍派勢力や参政党、保守党を「保守的」政党と呼ぶが、彼らは明らかに極右であり、露骨な戦争勢力である。日頃、日本のメディアはフランスの「国民連合」、オランダの「自由党」、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」などを「極右」と呼ぶが、旧安倍派勢力、参政党、保守党は、欧米基準で言えば明確な極右である。メディアが旧安倍派や参政党、保守党を極右として批判せず曖昧な態度をとっていることが、彼らの跳梁跋扈を許している一因でもある。

あらゆる領域で「人権ファースト」を対置して闘おう
石破おろしの政局へと事態が移っている。石破は「反安倍」であり、いわば常識的な保守であった。その石破を「許しがたい」存在として危険な極右勢力が一斉攻撃を始めているのが現局面だ。
選挙期間中、唯一「参政党」の危険で極右的実態を正面から取り上げた「報道特集」(TBS)が「偏向報道」だと参政党などから攻撃されている。昨年の兵庫県知事選をめぐる報道でも、立花らのデマの実態を徹底的に批判する報道を行った「報道特集」に対して、極右勢力が「スポンサー降りろ」など一斉攻撃を仕掛け、広告スポンサーとなっていた大手家電量販店が撤退するという事態になった。
今回の参議院選挙で初めて気づいたわけではないが、日本の社会、政治状況は明らかに危険な方向に傾いている。放置すれば、戦争とファシズムにますます近づいていく。この危険な流れを食い止め、「奴らを通すな!」の声を広げる努力が求められている。あらゆる分野で生活の場で、「日本人ファースト」に「人権ファースト」を対置する闘いが求められている。

自衛官の戦死を間近に想定
この状況を見て、意を強くしているのが、自衛隊上層部だ。自衛隊の幹部は、もはや「戦死は決してあってはならないもの」とは見ていない。戦死は間近な現実ととらえている。6月25日付毎日新聞の「論点 靖国と自衛隊」に登場した火箸芳文(元陸上幕僚長、旧陸軍将校や退職幹部自衛官で構成する陸修偕行社理事長、靖国神社崇敬者総代)は、もはや旧陸軍との連続性を否定もしなければ隠そうともしない。「一命を賭して国を守る任務にあたるのは旧陸軍も陸自も同じです。我々は陸軍の末裔だと自任しています」「A級戦犯については肯定も否定もしません。東京裁判は平和に対する罪という事後法で弁明の機会も与えないで見せしめのような形で裁き、軍部が悪かったという歴史観を米国が押し付けました。そこに私は疑問があります」。ここまで、明け透けに公然と語ったことはなかった。自民党西田昌司参議や参政党神谷代表が語ったのは、この自衛隊上層部の思いに他ならない。「旧軍を礼賛するのはけしからんという気持ちが国民の中にずっとあったことは否定しません。ただ、我々の任務についてわかってもらえる時期なのではないかと思います」。自衛隊上層部や戦争勢力は、「国を守る」ためには自衛官の戦死も住民の犠牲も当然だとする軍事優先社会に踏み込もうとしている。

だが、「世の中すべてが最悪である必要はない」。これは、ニューヨーク市長選挙(11月)に向けた民主党予備選挙において歴史的勝利を収めたDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)のゾーラン・マムダニ候補への祝賀連帯メッセージの一節だ。また、「ジェノサイドに反対し、パレスチナ人の人間性を認めることは、選挙における致命的リスクではないと証明された」の一節にも勇気づけられる。
日本でも「ミサイルより米を!」。ベタに見えるがシンプルで真っ当なスローガン。これを人間らしい生活を奪われ傷ついたすべての人に届けてゆこう。そのための闘いをここから始めよう。

「むすぶ」目次(2025年6月号)2025/06/16 07:40

■ 今月を視る / イスラエル政府の戦争拡大、ガザ虐殺を止めるため
         今こそ、日本政府に外交交渉など積極関与を要求しよう!
■ 沖縄レポート / 政府に突きつけた「戦争するな!」
        「台湾有事」に抗う各地の市民団体が繋がった6/6・7東京行動  西岡信之                     
■ オピニオン / 万博と原子力 「いのち輝く未来」と「核ゴミ・被曝労働」の矛盾撞着
元越前市議 山崎隆敏                       
■ 追悼 / 箕面忠魂碑違憲訴訟元原告 古川佳子さん   事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / ミサイル弾薬庫問題を議論できる議会へ 京都府精華町議 神田たかひろ
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(2025年6月号)2025/06/16 07:38

イスラエル政府の戦争拡大、ガザ虐殺を止めるため
今こそ、日本政府に外交交渉など積極関与を要求しよう!

ネタニヤフ政権とトランプ政権は「テロ政府」
どう見ても、凶暴、残虐、非道と言う以外にない。イスラエルによるガザ攻撃のことである。イスラエル・ネタニヤフ政権と一部極右勢力、米トランプ政権と取りまき連中は、もはや、隠したり、取り繕ったりもしない。武器を持つはずのない赤ん坊、子ども、女性、老人をどれほど殺しても、「ハマスのせいだ(ハマスから離れないからだ)」と居直ってきた。最近では、公然と「ガザに罪のない人間などいない」とまで言う。ナチスが「害のないユダヤ人などいない」とユダヤ人虐殺、絶滅行為を行ったのと全く同じだ。この虐殺を止めようと声上げれば「反ユダヤ主義」のレッテルを張り、弾圧を行う。イスラエル・ネタニヤフ政権と米トランプ政権は「ならず者政府」であり、「テロ政府」である。

ネタニヤフ政権は孤立し、追い詰められている
 だが、彼らは確実に孤立し、追い詰められている。6月10日、英国とカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーの5カ国は、イスラエルの2名の極右閣僚に対し入国禁止と資産凍結の制裁を科した。声明では、「パレスチナ人の強制移住や新たな(ユダヤ人)入植地の建設を主張する過激な言動は危険で容認できない」とした、さらに、今回の措置は、「ガザでの惨事と切り離してみることはできない」とも付言し、即時停戦などに向けて尽力すると表明している。
 国連の場でも、この動きは続いている。6月4日、国連安全保障理事会でパレスチナ・ガザ地区での「無条件かつ恒久的な」即時停戦を求める決議案の採決があり、米国が拒否権を行使したため否決されたものの、理事国15カ国のうち14カ国が賛成した。
 さらに、国連は6月12日、ガザの事態を巡って緊急特別会合を開き、即時の無条件かつ恒久的な停戦を求め、イスラエルに対し、人道支援物資の搬入制限を直ちに解除することなどを求める決議を圧倒的多数(日本を含む149カ国)の賛成で採択した。決議には、「民間人の飢餓」を紛争の手段として使うことや、人道支援を拒絶することを強く非難する内容も盛り込まれている。米・トランプ政権が様々な「外交的措置を講ずる」との脅迫を行ったにもかかわらず、反対は米国やイスラエルなど12カ国、棄権は19カ国にとどまった。

イラン空爆の暴挙
 こうした中、驚くべきことに、イスラエル軍が6月13日、イランを空爆した。イスラエルはイラン中部にある「ウラン濃縮施設や各地の軍関連施設を標的に攻撃を加えた」と発表。軍幹部や国会議員、大学教授、民間人らも多数殺害されたとの報道もある。イランの「報復攻撃」を想定した挑発行動であることは明らかだ。イスラエルは自ら核兵器保有国であることは隠したまま、イランの核開発は「イスラエルの存続にとって明確で差し迫った脅威だ」と主張し、攻撃を正当化しているが、欺瞞でしかない。
イスラエルのイラン攻撃の本当の目的は、戦争の拡大によってガザ攻撃の凶悪な犯罪から目を反らさせることにある。イスラエルのガザ攻撃が明確に戦争犯罪であり、国際法違反の暴挙であること、「即時停戦、恒久停戦」で国際社会が結束を固めつつある状況に攪乱を持ち込み、「イスラエルが本当に戦っているのはパレスチナの背後にいるイランだ」とガザの現状から世界の関心を反らせようとしているのだ。なりふり構わず暴走するイスラエル・ネタニヤフ政権は世界から追放されなければならない。

日本政府も外交的措置をとるべきだ
 世界の多くの市民が非暴力のBDS(ボイコット・投資撤収・制裁)運動などの行動によって、南アを先頭にした多くの国々が国連など国際機関で声をあげ、イスラエル政府を追い詰めている。こうした運動が、英国、カナダなど米国の強い同盟国でさえ、イスラエル批判を強め、貿易協定の停止など「外交的措置」に踏み込む状況をつくり出した。
日本政府は、国連での「停戦決議」などには賛成はするが、それ以外は何の意見表明もしない。また外交的措置などのいかなる行動も起こさない。日本政府は、イスラエルに影響力を与える関係にある。日本政府に「外交的措置」に踏み込むよう求める行動が、日本の私たちの最も重要な課

「むすぶ」目次(2025年5月号)2025/05/19 18:23

■ 今月を視る / ノーモア沖縄戦 - ナクバ(大惨事)を終わらせよう!
■ 沖縄レポート / 沖縄戦から80年 
        「台湾有事」で沖縄・琉球を再び捨て石にはさせない 西岡信之                     
■ オピニオン / 使用済み核燃料「搬出計画」の欺瞞    越前市 山崎隆敏          
■ アピール? /「東大阪でヘイト問題を考える会」スタート  東大阪市 桐生隆文
■ 図書あんない /『原発と司法』 樋口英明 著  関電前プロジェクト 八木浩一
■ 読者つうしん / 厳しい地方の衰退 民主主義が私を離さない 豊岡市 判田明夫                           
■ Information & Editorial Peace Note

今月を視る(「むすぶ」2025年5月号)2025/05/19 18:17

ノーモア沖縄戦 - ナクバ(大惨事)を終わらせよう!

沖縄の5・15
沖縄は、1972年5月15日の施政権返還(米軍政から日本政府へ)から53年となった。沖縄の人々が施政権返還(「復帰」)に託した願いは、人権尊重と平和主義を基本精神とする日本国憲法の厳格な適用であったが、ことごとく無視され、沖縄に憲法が実現することはなかった。米軍基地は縮小どころか強化され続け、在日米軍専用施設の70%が沖縄に集中する過酷な現実が押し付けられたままだ。米軍関係者による性暴力をはじめとした人権侵害が日常となり、沖縄の人々の平穏で人らしい生活は破壊され続けている。自民党を軸にした歴代の政権は、一貫して日本国憲法の破壊、無力化を進めてきているが、沖縄では、施政権返還の当初から「日本国憲法下の沖縄」などなかったのである。
 今年の「5.15平和行進」は5月11日、宮古島市から始まった。メインスローガンの一つは「軍事の島にしない」である、米軍基地だけでなく、対中国戦争のための自衛隊ミサイル基地設置、自衛隊部隊増強など南西諸島・沖縄への軍備強化・軍事要塞化が急ピッチに進められていることに対抗するためである。軍事要塞化を止め、平和な沖縄をめざすことが、東アジアの平和構築に直結する。この取り組みの新たな出発点として、今年の5・15がある。

パレスチナの5・15
中東地域の5・15は、1948年の「イスラエル建国」=パレスチナ占領で約70万人が難民となったナクバ(大惨事)の日である。77年を迎えた今年は、14日、ヨルダン川西岸ラマラで「ナクバはまだ終わっていない」と訴え、ガザでの戦闘終結と故郷への帰還権を求める大規模なパレードが行われた。パレードには子どもから年配まで多数の住民が参加し、即時停戦と占領、封鎖止めろと声をあげた。
48年当初から、国連機関や国際社会がイスラエルの国際法違反、戦争犯罪を何度も指摘し、速やかに違法行為を止めるよう求めてきたが、イスラエルの無法ぶりは今日、ますます激しさを増している。
 現在、イスラエルは、それまでの停戦合意を一方的に破棄し、3月18日から始まった再攻撃で、ガザそのものの消滅作戦を強めている。3月18日の攻撃再開後の2カ月で3000人近くの住民が殺害され、7,680人が負傷した。一昨年10月以降の死者累計は53000人を超えた。さらに、イスラエルが2か月以上にわたって支援物資の搬入を認めず、搬入を阻止、妨害しているため、国連機関を含め地元支援団体による炊き出しは3分の1が停止を余儀なくされ、子どもたちが飢えや死の危険に直面している。
 今回のイスラエル軍のガザ完全破壊、軍事占領、住民追放作戦は最悪の暴挙であり、戦争犯罪の最たるものである。イスラエル政府はガザ破壊、占領作戦の真の狙いをもはや隠そうともしない。イスラエル極右のベザレル・スモトリッチ財務相は、ガザ地区は半年以内に完全に破壊され、一部地域を除く多くの地域から住民は退去し、無人化することになると発言。スモトリッチ財務相は、パレスチナの住民は移住するしかないとして、「彼らはガザ地区で、希望もなく期待することもないことを理解し、完全に絶望するだろう。他の場所で新たな人生を始めるために、移住を模索するようになるだろう」と述べたことが報道されている。この発言を含むこの間のイスラエル政府の言動には、さすがのトランプ本人だけでなく、政権の、閣僚、高官からも「ネタニヤフ政権と距離を置かざるを得ない」状況が生まれ始めているともいう。イスラエル国内においても、70%以上の人々が、ネタニヤフと極右勢力による停戦破棄、軍事強行作戦に「人質の解放につながらない」と反対の意思を示している。

「このままではいけない。ヨーロッパはイスラエルへの武器供給を停止しなければならない。占領を支えるすべての貿易協定を停止しなければならない。国際法に基づき、加害者たちに責任を取らせなければならない。パレスチナとの連帯はラディカルな立ち位置ではない。道徳上の義務だ。パレスチナ人民の正義と尊厳そして解放は、譲歩の余地がない。ありきたりの発言をする時代は終わった。今こそ行動を起こす時だ。」(DiEM25=ヨーロッパ民主主義運動2025)。この呼びかけに直ちに呼応しよう。