「むすぶ」目次(2024年10月号) ― 2024/10/21 17:10
■ 今月を視る /「国防」の名による戦争にNO! 全国の地域から声を!
■ オピニオン / 今こそ無防備地域宣言運動の再起動を(その1) 東京 矢野秀喜
■ 寄稿 / このままでは上関町は破綻するのか? 元 今立町議会議員 山崎隆敏
■ 沖縄レポート / 対中戦争の日米統合演習反対 否戦の思想を今こそ
沖縄国際大元講師 西岡信之
■ 図書あんない / 東邦定 写真集『ウチナーンチュの貌かお』 事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / 毎月11日、堺東駅前で続けるウラワーデモ 堺市 前東萩子
■ Information & Editorial Peace Note
■ オピニオン / 今こそ無防備地域宣言運動の再起動を(その1) 東京 矢野秀喜
■ 寄稿 / このままでは上関町は破綻するのか? 元 今立町議会議員 山崎隆敏
■ 沖縄レポート / 対中戦争の日米統合演習反対 否戦の思想を今こそ
沖縄国際大元講師 西岡信之
■ 図書あんない / 東邦定 写真集『ウチナーンチュの貌かお』 事務局 豆多敏紀
■ 読者つうしん / 毎月11日、堺東駅前で続けるウラワーデモ 堺市 前東萩子
■ Information & Editorial Peace Note
今月を視る(「むすぶ」 2024年10月号) ― 2024/10/21 17:08
「国防」の名による戦争にNO! 全国の地域から声を!
「武力による威嚇」の共同軍事演習
映画「戦雲(いくさふむ)」(三上智恵監督)に登場する「国境の島」与那国の糸数健一町長の言動には嘆息しか出ない。「北朝鮮の軍事偵察衛星発射に備える」と称して、自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を与那国島へ初めて展開した際、PAC3を「撤収しないでほしい」「常駐を望む」、県に対しては、港湾や空港の「使用許可を速やかに出してほしい」と発言。PAC3「受け入れ」表明をいち早く行った石垣の中山義隆市長と同様に、先島への自衛隊配備、増強の水先案内人として振舞っている。糸数は、東京で開かれた改憲集会に招かれ、声高に「9条廃棄、自衛隊明記」を訴えたり、対中国を念頭に「全国民がいつでも日本国の平和を脅かす国家に対しては、一戦を交える覚悟が今、問われているのではないか」と発言したりしている。「糸数町長と同じ考えの人は与那国に1%もいない」(映画中での同町議の証言)のは確かだろうが、防衛庁・自衛隊にとっては、住民の「安全」「自治」を気にもかけない糸数や中山のような首長の存在は、どれほどありがたい存在なのかは想像に難くない。
防衛省・自衛隊はこんな「とんでも」首長を最大限に利用しながらミサイル基地をはじめ琉球列島全域の軍事要塞化を強引に進めてきた。基地建設と並行して年々強化してきたのが演習(軍事訓練)だ。
特に日米共同統合演習は、回を重ねるごとに大規模化、実戦化させてきた。最近では、仮想敵国を「中国」と明示し、シナリオの柱を「台湾有事」としている。まさに「実戦間近」を想起させる日米共同統合実働演習「キーン・ソード25」が、10月23日~11月1日に実施される。過去最大規模で自衛隊、米軍のみならず全国の空港や港湾など民間施設が、この軍事訓練に動員される。これは、「演習」名目の武力による威嚇に他ならない。明らかに挑発であり、際限のない軍拡と一発触発の緊張激化を招く危険極まりない「演習」である。
沈黙する自治体
この危険な動きについて、大手メディア(新聞、テレビ等)はほとんど報道しない。それ以上に危惧するのは、この「演習」に直接組み込まれている全国の自治体が沈黙していることである。北海道から沖縄まで、日米基地はもとより、空港、港湾など「演習」に使用される民間インフラ施設が所在する自治体はかつてなく多い。自治体は住民の安全と平和な暮らしに直接責任を負っている。にもかかわらず、「防衛、外交は国の専管事項」との政府の「解説」に従うのみかのように、防衛省の「お知らせ」をホームページ等で広報しているだけである。
戦争準備へ突き進む政府の暴走を止めるのは、戦争で最大の犠牲を強いられる住民の声である。全国の地域、自治体から大きく声をあげることが必要だ。与那国、石垣の「とんでも」首長はもちろん、沈黙しかしない首長は、変えなければない。
映画「戦雲」で、与那国に駐屯する自衛隊の幹部が、ミサイル配備に関する説明会で「住民は逃げられない」と懸念することに対して、「沖縄戦の教訓も踏まえ、自衛隊は真っ先に住民を守る」と強調する場面がある。この幹部にとって、その言葉は単なる詭弁ではないかもしれないが、彼個人の「願望」に過ぎない。沖縄戦を深く知り、学ぶなら、軍事作戦と住民保護が決して両立しえないことは明確だ。事実、自衛隊は、沖縄戦当時の旧日本軍の行動が「間違いだった」と公式に認めたことは一度もない。
また、これほど大規模で綿密な共同演習であれば、そのシナリオには、この事態で何人の日米軍人が死に、何人の住民、民間人が死ぬのかを想定しているはずだ。だが、それは決して公表されない。
沖縄戦の実相を多くの全国の市民に知らせること。軍拡と戦争挑発に対抗する確かな手だてである。
「自衛戦争」「防衛のための武力行使」の正体
国連の独立調査委員会は10月10日発表した報告書で、医療従事者や医療機関に「容赦なく意図的な攻撃」を続けるイスラエル軍の行為は、戦争犯罪と特定の集団を絶滅させる人道に対する罪にあたると非難。イスラエル軍はガザの医療関係者を故意に殺害、拘束、拷問しているとも指摘した。
米国など一握りの大国だけが擁護する「テロに対する自衛戦争」の正体がここにある。その米国とともに「国防」の名で戦争が行われることになれば、どれほどの住民の死が待ち受けているのか。世界の人々とむすんで「自衛」戦争も「防衛」戦争も拒否しよう。抵抗の声を強める時だ。
「武力による威嚇」の共同軍事演習
映画「戦雲(いくさふむ)」(三上智恵監督)に登場する「国境の島」与那国の糸数健一町長の言動には嘆息しか出ない。「北朝鮮の軍事偵察衛星発射に備える」と称して、自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を与那国島へ初めて展開した際、PAC3を「撤収しないでほしい」「常駐を望む」、県に対しては、港湾や空港の「使用許可を速やかに出してほしい」と発言。PAC3「受け入れ」表明をいち早く行った石垣の中山義隆市長と同様に、先島への自衛隊配備、増強の水先案内人として振舞っている。糸数は、東京で開かれた改憲集会に招かれ、声高に「9条廃棄、自衛隊明記」を訴えたり、対中国を念頭に「全国民がいつでも日本国の平和を脅かす国家に対しては、一戦を交える覚悟が今、問われているのではないか」と発言したりしている。「糸数町長と同じ考えの人は与那国に1%もいない」(映画中での同町議の証言)のは確かだろうが、防衛庁・自衛隊にとっては、住民の「安全」「自治」を気にもかけない糸数や中山のような首長の存在は、どれほどありがたい存在なのかは想像に難くない。
防衛省・自衛隊はこんな「とんでも」首長を最大限に利用しながらミサイル基地をはじめ琉球列島全域の軍事要塞化を強引に進めてきた。基地建設と並行して年々強化してきたのが演習(軍事訓練)だ。
特に日米共同統合演習は、回を重ねるごとに大規模化、実戦化させてきた。最近では、仮想敵国を「中国」と明示し、シナリオの柱を「台湾有事」としている。まさに「実戦間近」を想起させる日米共同統合実働演習「キーン・ソード25」が、10月23日~11月1日に実施される。過去最大規模で自衛隊、米軍のみならず全国の空港や港湾など民間施設が、この軍事訓練に動員される。これは、「演習」名目の武力による威嚇に他ならない。明らかに挑発であり、際限のない軍拡と一発触発の緊張激化を招く危険極まりない「演習」である。
沈黙する自治体
この危険な動きについて、大手メディア(新聞、テレビ等)はほとんど報道しない。それ以上に危惧するのは、この「演習」に直接組み込まれている全国の自治体が沈黙していることである。北海道から沖縄まで、日米基地はもとより、空港、港湾など「演習」に使用される民間インフラ施設が所在する自治体はかつてなく多い。自治体は住民の安全と平和な暮らしに直接責任を負っている。にもかかわらず、「防衛、外交は国の専管事項」との政府の「解説」に従うのみかのように、防衛省の「お知らせ」をホームページ等で広報しているだけである。
戦争準備へ突き進む政府の暴走を止めるのは、戦争で最大の犠牲を強いられる住民の声である。全国の地域、自治体から大きく声をあげることが必要だ。与那国、石垣の「とんでも」首長はもちろん、沈黙しかしない首長は、変えなければない。
映画「戦雲」で、与那国に駐屯する自衛隊の幹部が、ミサイル配備に関する説明会で「住民は逃げられない」と懸念することに対して、「沖縄戦の教訓も踏まえ、自衛隊は真っ先に住民を守る」と強調する場面がある。この幹部にとって、その言葉は単なる詭弁ではないかもしれないが、彼個人の「願望」に過ぎない。沖縄戦を深く知り、学ぶなら、軍事作戦と住民保護が決して両立しえないことは明確だ。事実、自衛隊は、沖縄戦当時の旧日本軍の行動が「間違いだった」と公式に認めたことは一度もない。
また、これほど大規模で綿密な共同演習であれば、そのシナリオには、この事態で何人の日米軍人が死に、何人の住民、民間人が死ぬのかを想定しているはずだ。だが、それは決して公表されない。
沖縄戦の実相を多くの全国の市民に知らせること。軍拡と戦争挑発に対抗する確かな手だてである。
「自衛戦争」「防衛のための武力行使」の正体
国連の独立調査委員会は10月10日発表した報告書で、医療従事者や医療機関に「容赦なく意図的な攻撃」を続けるイスラエル軍の行為は、戦争犯罪と特定の集団を絶滅させる人道に対する罪にあたると非難。イスラエル軍はガザの医療関係者を故意に殺害、拘束、拷問しているとも指摘した。
米国など一握りの大国だけが擁護する「テロに対する自衛戦争」の正体がここにある。その米国とともに「国防」の名で戦争が行われることになれば、どれほどの住民の死が待ち受けているのか。世界の人々とむすんで「自衛」戦争も「防衛」戦争も拒否しよう。抵抗の声を強める時だ。
目次(「むすぶ」2024年9月号 ― 2024/09/19 16:29
■ 今月を視る /「攻撃は最大の防御」という大軍拡政治に対抗する運動を!
■ 報告 / 市民生活の場に混在する「横浜ノースドック」(続)
住民無視の危険な作戦拠点に ノースドックいいんかい 金森裕之(川崎市)
■ 沖縄レポート / 沖縄・南西諸島から米軍は出て行け 沖縄国際大元講師 西岡信之
■ オピニオン / 日本原電敦賀原発2号機は廃炉にすべき 事務局 岡本 誠
■ 図書あんない /『眉屋私記』を読む 千葉県印西市 若谷政樹
■ 読者つうしん /「中途半端貧乏」の私-せめて安心して暮らせる住宅を!
堺市 井原紀子
■ Information & Editorial Peace Note
■ 報告 / 市民生活の場に混在する「横浜ノースドック」(続)
住民無視の危険な作戦拠点に ノースドックいいんかい 金森裕之(川崎市)
■ 沖縄レポート / 沖縄・南西諸島から米軍は出て行け 沖縄国際大元講師 西岡信之
■ オピニオン / 日本原電敦賀原発2号機は廃炉にすべき 事務局 岡本 誠
■ 図書あんない /『眉屋私記』を読む 千葉県印西市 若谷政樹
■ 読者つうしん /「中途半端貧乏」の私-せめて安心して暮らせる住宅を!
堺市 井原紀子
■ Information & Editorial Peace Note
今月を視る(「むすぶ」2024年9月号) ― 2024/09/19 16:27
「攻撃は最大の防御」という大軍拡政治に対抗する運動を!
自民党の軍拡政治と闘おう
過去異例の9人が立候補した自民党総裁選。ここ連日、メディアはこの総裁選をトップニュースとして扱っているが、結果が日本の政治状況に何らかの変化を与えるものではない。だれが総裁になろうと、特に大軍拡と改憲推進の自民党既定路線には何の変化もないことは明らか。強弱の差が多少あるとはいえ、9人の立候補者のだれもが大軍拡と改憲推進を表明しているからだ。
8月7日、自民党憲法改正実現本部は、緊急事態条項の創設と自衛隊の明記について検討する二つのワーキングチーム(WT)を新設することを決定した。岸田首相は「論点整理は8月末を目指して議論を加速していただきたい」と語り、退陣後も改憲の「着実な前進」に期待を表明している。自民党政治を変えるのは、総裁選後の衆議院解散、10月末から11月はじめとされる総選挙がその重要な一歩となる。軍拡と改憲を止める平和運動構築で総選挙に臨もう。
辺野古大浦湾側杭打ち工事着工を許さない
総裁選が賑やかに報じられる裏で、政府・自民党の傲慢さが極みに達している。8月20日には辺野古大浦湾側杭打ち工事着工を強行し、8月22日には安和桟橋の事故で54日間停止していた辺野古への土砂搬出を再開した。悲惨な事故がなぜ発生したのか、再発防止には何が必要なのかなど、真摯な議論や話し合いを欠いたままの強行だ。いずれも増強した機動隊の暴力によって住民の合法かつ正当な非暴力による抗議活動を制限、排除するという違法行為を伴って強行された。
また、沖縄県が「事前協議は継続中」であるとし、協議に応じるよう再三要請していることに対して、沖縄防衛局は8月28日、「事前協議は十分に尽くした」と県に回答、一方的に協議の打ち切りを通告した。水質汚濁による生態系への影響など、県が求めるデータ提供にはまともに応じていない。
県は今年2月以降、防衛局に環境保全などについて計7回、290項目にわたって質問したが、疑問点が解消されていないことから、事前協議が調うまで工事を中止するよう8月22日に防衛局に行政指導していた。防衛局はこれ以上の協議継続を否定し「環境に配慮しながら工事を進める」と県に通告、「問答無用」の傲慢な姿勢を露わにした。
真っ先に踏みにじられる沖縄
辺野古だけではない。南西諸島をはじめ、自衛隊ミサイル基地問題でも住民無視の強行姿勢が目立つ。
政府・自民党の住民無視の軍拡強行政治と対決する多くの地域での闘いが求められている。最前線の沖縄で、米軍基地撤去の闘いの中心として存在する「オール沖縄」の立て直しに関し、指導者の一人である山城博治さんはこう述べる。「辺野古が一丁目一番地であることは間違いない。だが、既に二丁目にも三丁目にも自衛隊増強という火が燃え広がっている。この問題を放置するならオール沖縄は大衆運動からも見捨てられてしまうだろう。逆に、もう一度思いを共有できれば前進できる」。
8月11日に沖縄市で開催された、『台湾有事NO ! 沖縄・九州・西日本から全国に広がる戦争準備 報告意見交換会』で、映画『戦雲』の監督である三上智恵さんは「全国を回っていて『何かあるとしても沖縄でしょう』といわれることが多かった。沖縄が先に踏みにじられて、軍事要塞化されているだけです。戦場になるのは日本全体です。そのことがだんだん明らかになってきた。沖縄、西日本の人々がまず立ち上がって、関東、東北や北海道へと運動が広がっていく。」と発言した。
「防衛」と「攻撃」はセットというまやかしを拒否
「攻撃は最大の防御なり」という言葉がよく使われる。この理屈を軍事に当てはめれば、必ず「防衛」と「攻撃」の境目がなくなってしまう。イスラエルは「自衛」と称してガザ住民虐殺を行い、ロシアはNATOからの脅威を口実にウクライナに軍事侵略を行った。今度は、ウクライナが「防衛のために」ロシアへの越境攻撃に踏み切っている。「専守防衛」の日本も「敵基地攻撃能力」保有を宣言した。これは、軍事による「防衛」が「攻撃」とセットであることを暴露している。軍事を拒否することが、人間の安全保障であることをはっきりと宣言しよう。日本国憲法が77年前にすでに宣言しているように。
自民党の軍拡政治と闘おう
過去異例の9人が立候補した自民党総裁選。ここ連日、メディアはこの総裁選をトップニュースとして扱っているが、結果が日本の政治状況に何らかの変化を与えるものではない。だれが総裁になろうと、特に大軍拡と改憲推進の自民党既定路線には何の変化もないことは明らか。強弱の差が多少あるとはいえ、9人の立候補者のだれもが大軍拡と改憲推進を表明しているからだ。
8月7日、自民党憲法改正実現本部は、緊急事態条項の創設と自衛隊の明記について検討する二つのワーキングチーム(WT)を新設することを決定した。岸田首相は「論点整理は8月末を目指して議論を加速していただきたい」と語り、退陣後も改憲の「着実な前進」に期待を表明している。自民党政治を変えるのは、総裁選後の衆議院解散、10月末から11月はじめとされる総選挙がその重要な一歩となる。軍拡と改憲を止める平和運動構築で総選挙に臨もう。
辺野古大浦湾側杭打ち工事着工を許さない
総裁選が賑やかに報じられる裏で、政府・自民党の傲慢さが極みに達している。8月20日には辺野古大浦湾側杭打ち工事着工を強行し、8月22日には安和桟橋の事故で54日間停止していた辺野古への土砂搬出を再開した。悲惨な事故がなぜ発生したのか、再発防止には何が必要なのかなど、真摯な議論や話し合いを欠いたままの強行だ。いずれも増強した機動隊の暴力によって住民の合法かつ正当な非暴力による抗議活動を制限、排除するという違法行為を伴って強行された。
また、沖縄県が「事前協議は継続中」であるとし、協議に応じるよう再三要請していることに対して、沖縄防衛局は8月28日、「事前協議は十分に尽くした」と県に回答、一方的に協議の打ち切りを通告した。水質汚濁による生態系への影響など、県が求めるデータ提供にはまともに応じていない。
県は今年2月以降、防衛局に環境保全などについて計7回、290項目にわたって質問したが、疑問点が解消されていないことから、事前協議が調うまで工事を中止するよう8月22日に防衛局に行政指導していた。防衛局はこれ以上の協議継続を否定し「環境に配慮しながら工事を進める」と県に通告、「問答無用」の傲慢な姿勢を露わにした。
真っ先に踏みにじられる沖縄
辺野古だけではない。南西諸島をはじめ、自衛隊ミサイル基地問題でも住民無視の強行姿勢が目立つ。
政府・自民党の住民無視の軍拡強行政治と対決する多くの地域での闘いが求められている。最前線の沖縄で、米軍基地撤去の闘いの中心として存在する「オール沖縄」の立て直しに関し、指導者の一人である山城博治さんはこう述べる。「辺野古が一丁目一番地であることは間違いない。だが、既に二丁目にも三丁目にも自衛隊増強という火が燃え広がっている。この問題を放置するならオール沖縄は大衆運動からも見捨てられてしまうだろう。逆に、もう一度思いを共有できれば前進できる」。
8月11日に沖縄市で開催された、『台湾有事NO ! 沖縄・九州・西日本から全国に広がる戦争準備 報告意見交換会』で、映画『戦雲』の監督である三上智恵さんは「全国を回っていて『何かあるとしても沖縄でしょう』といわれることが多かった。沖縄が先に踏みにじられて、軍事要塞化されているだけです。戦場になるのは日本全体です。そのことがだんだん明らかになってきた。沖縄、西日本の人々がまず立ち上がって、関東、東北や北海道へと運動が広がっていく。」と発言した。
「防衛」と「攻撃」はセットというまやかしを拒否
「攻撃は最大の防御なり」という言葉がよく使われる。この理屈を軍事に当てはめれば、必ず「防衛」と「攻撃」の境目がなくなってしまう。イスラエルは「自衛」と称してガザ住民虐殺を行い、ロシアはNATOからの脅威を口実にウクライナに軍事侵略を行った。今度は、ウクライナが「防衛のために」ロシアへの越境攻撃に踏み切っている。「専守防衛」の日本も「敵基地攻撃能力」保有を宣言した。これは、軍事による「防衛」が「攻撃」とセットであることを暴露している。軍事を拒否することが、人間の安全保障であることをはっきりと宣言しよう。日本国憲法が77年前にすでに宣言しているように。
「むすぶ」目次(2024年7・8月号) ― 2024/08/05 14:33
■ 今月を視る /「軍民分離こそ住民の確かな安全保障」の声を広げよう!
■ 報告 / 市民生活の場に混在する「横浜ノースドック」
ノースドックいいんかい 金森裕之(川崎市)
■ 沖縄レポート / 迫りくる戦時体制-軍事要塞化の次は民意の管理統制
沖縄国際大元講師 西岡信之
■ 読者つうしん / アフガンからシャミームさんがやって来た! 東大阪市 桐生隆文
■ 映像あんない /『コザ騒動 ~燃えさかる炎の行方~』 NHK 印西市 若谷政樹
■ Information & Editorial Peace Note
■ 報告 / 市民生活の場に混在する「横浜ノースドック」
ノースドックいいんかい 金森裕之(川崎市)
■ 沖縄レポート / 迫りくる戦時体制-軍事要塞化の次は民意の管理統制
沖縄国際大元講師 西岡信之
■ 読者つうしん / アフガンからシャミームさんがやって来た! 東大阪市 桐生隆文
■ 映像あんない /『コザ騒動 ~燃えさかる炎の行方~』 NHK 印西市 若谷政樹
■ Information & Editorial Peace Note
今月を視る(2024年7・8月号より) ― 2024/08/05 14:32
「軍民分離こそ住民の確かな安全保障」の声を広げよう!
基地があるゆえの性暴力犯罪事件や事故の徹底追及を
6月の県議選での結果(議席数でデニー与党が過半数を大きく下回った)を受けて、沖縄防衛局は新基地建設で大浦湾側での本格的な埋め立て工事を8月1日から開始すると通告していたが、7月31日、着手時期を「台風による影響で」延期すると沖縄県に正式に伝えた。延期時期や新たな着工時期は明示していないが、旧盆明けの8月19日以降に着手することを検討しているとの情報も報道されている。
これに対して玉城デニー知事は、沖縄防衛局が「事前協議」を曲解し、無視する中、「協議が調うまで工事を始めるべきではないということが、われわれの一貫した要請だ。しっかり厳守していただきたい」と主張した。自治体としてのこのあたり前の要求を無視することは、地方自治を破壊し、軍事を最優先する暴挙であり、到底許されるものではない。
「台風による延期」というが、県議選後に発覚した米軍兵士による相次ぐ性暴力犯罪と日米政府による隠ぺい事実の他、安和港ゲートで発生した土砂搬入トラックに抗議中の女性と警備員の男性がダンプカーに巻き込まれた痛ましい死傷事故などが「延期」の背景にあるとみて間違いない。現在、この事故を受けて土砂運搬作業が中止となっているが、玉城知事が「今後、事故の詳細などもしっかり確認していく必要がある」という通り、事故の原因や当時の詳細な状況が解明されない限り、土砂搬入や大浦湾埋め立てが許されるはずはない。米軍兵士による性暴力犯罪の徹底追及も最重要課題の一つである。いずれも軍事基地あるがゆえの、軍事基地を無理やり作ろうとする上で引き起こされた事件、事故であるからだ。
「住民の安全」眼中にない軍拡政策
他方、日本政府の軍拡暴走が止まらない。仮想敵国・中国などと明日にでも一戦を交えるかの勢いだ。
政府や大手メディアの多くが「厳しさを増す安全保障環境」と口を揃えるが、「厳しさ」を増幅させているのは中国などの一方的軍拡だけではない。日米などの共同演習に対抗して中国が軍事演習やデモをぶつけるという繰り返しが実態だ。今、双方にとって必要なのは、緊張を和らげ、軍事衝突を絶対避けるという政治意志であり、軍縮政策だ。そして何よりも住民の安全を最優先するという強い政治意志だ。
日米両政府が7月28日開かれた安全保障協議委員会(2プラス2)で行った共同発表は緊張緩和や軍縮とは真逆の方向だ。自衛隊が2024年度末までに部隊運用を一元的に担う「統合作戦司令部」を創設するのに合わせ、米側は在日米軍を新たに「統合軍司令部」として再構成し(これまで在日米軍部隊の運用・作戦指揮権はハワイ・ホノルルのインド太平洋軍が有していた)、運用を強化する。さらにミサイルなどの兵器(「装備品」)の共同生産についても、種類や生産能力を拡大する方針を決定している。
「日米安保の一体化」、つまり、中国との戦争において実戦の体制を整えようという内容だ。
国際法に基づく「軍民分離」を主張
住民の安全を全く考慮することのないこうした全国総基地化は、住民の不安と警戒、反撥を呼びおこさざるをえない。一方で、沖縄・大東島の自衛隊レーダー基地計画の「受け入れ」などがあるものの、うるま市陸自訓練場計画を断念させた闘いや京都祝園弾薬(ミサイル)庫増計画や大分県敷戸弾薬庫増設計画に反対する住民ぐるみの取り組み、運動が広がっている。
陸上自衛隊のオスプレイを佐賀空港に配備する計画に対しても、配備に反対する佐賀などの住民245人が7月29日、空港隣接地で建設が進む佐賀駐屯地(仮称)の工事差し止めを国に求める訴訟を佐賀地裁に起こした。すでに、佐賀駐屯地の工事は2023年6月に着工したが、配備に反対する地元漁師ら4人が同12月、地権者として工事差し止めを求め、同地裁に提訴し、審理が続いている。この訴訟を支援するため「オスプレイ裁判支援市民の会」などが「広く市民にかかわる問題だ」として今回の訴訟への参加を呼びかけたものだ。訴状で、佐賀駐屯地が完成すれば攻撃目標になる恐れがあり「近隣地域の住民が戦争に巻き込まれる被害が切迫している」、「(オスプレイが)墜落すれば住民らの生命・身体、財産などへ甚大な被害が生じる。生命を守り、生活を維持する人格権の根幹を侵害する恐れがある」と主張した。まさに軍民分離こそ住民の安全、「命と暮らし」を守るというジュネーブ条約など国際法に基づく主張だ。「生活の場に軍備は不要だ」。この声と主張を沖縄、全国、世界に広げよう。
基地があるゆえの性暴力犯罪事件や事故の徹底追及を
6月の県議選での結果(議席数でデニー与党が過半数を大きく下回った)を受けて、沖縄防衛局は新基地建設で大浦湾側での本格的な埋め立て工事を8月1日から開始すると通告していたが、7月31日、着手時期を「台風による影響で」延期すると沖縄県に正式に伝えた。延期時期や新たな着工時期は明示していないが、旧盆明けの8月19日以降に着手することを検討しているとの情報も報道されている。
これに対して玉城デニー知事は、沖縄防衛局が「事前協議」を曲解し、無視する中、「協議が調うまで工事を始めるべきではないということが、われわれの一貫した要請だ。しっかり厳守していただきたい」と主張した。自治体としてのこのあたり前の要求を無視することは、地方自治を破壊し、軍事を最優先する暴挙であり、到底許されるものではない。
「台風による延期」というが、県議選後に発覚した米軍兵士による相次ぐ性暴力犯罪と日米政府による隠ぺい事実の他、安和港ゲートで発生した土砂搬入トラックに抗議中の女性と警備員の男性がダンプカーに巻き込まれた痛ましい死傷事故などが「延期」の背景にあるとみて間違いない。現在、この事故を受けて土砂運搬作業が中止となっているが、玉城知事が「今後、事故の詳細などもしっかり確認していく必要がある」という通り、事故の原因や当時の詳細な状況が解明されない限り、土砂搬入や大浦湾埋め立てが許されるはずはない。米軍兵士による性暴力犯罪の徹底追及も最重要課題の一つである。いずれも軍事基地あるがゆえの、軍事基地を無理やり作ろうとする上で引き起こされた事件、事故であるからだ。
「住民の安全」眼中にない軍拡政策
他方、日本政府の軍拡暴走が止まらない。仮想敵国・中国などと明日にでも一戦を交えるかの勢いだ。
政府や大手メディアの多くが「厳しさを増す安全保障環境」と口を揃えるが、「厳しさ」を増幅させているのは中国などの一方的軍拡だけではない。日米などの共同演習に対抗して中国が軍事演習やデモをぶつけるという繰り返しが実態だ。今、双方にとって必要なのは、緊張を和らげ、軍事衝突を絶対避けるという政治意志であり、軍縮政策だ。そして何よりも住民の安全を最優先するという強い政治意志だ。
日米両政府が7月28日開かれた安全保障協議委員会(2プラス2)で行った共同発表は緊張緩和や軍縮とは真逆の方向だ。自衛隊が2024年度末までに部隊運用を一元的に担う「統合作戦司令部」を創設するのに合わせ、米側は在日米軍を新たに「統合軍司令部」として再構成し(これまで在日米軍部隊の運用・作戦指揮権はハワイ・ホノルルのインド太平洋軍が有していた)、運用を強化する。さらにミサイルなどの兵器(「装備品」)の共同生産についても、種類や生産能力を拡大する方針を決定している。
「日米安保の一体化」、つまり、中国との戦争において実戦の体制を整えようという内容だ。
国際法に基づく「軍民分離」を主張
住民の安全を全く考慮することのないこうした全国総基地化は、住民の不安と警戒、反撥を呼びおこさざるをえない。一方で、沖縄・大東島の自衛隊レーダー基地計画の「受け入れ」などがあるものの、うるま市陸自訓練場計画を断念させた闘いや京都祝園弾薬(ミサイル)庫増計画や大分県敷戸弾薬庫増設計画に反対する住民ぐるみの取り組み、運動が広がっている。
陸上自衛隊のオスプレイを佐賀空港に配備する計画に対しても、配備に反対する佐賀などの住民245人が7月29日、空港隣接地で建設が進む佐賀駐屯地(仮称)の工事差し止めを国に求める訴訟を佐賀地裁に起こした。すでに、佐賀駐屯地の工事は2023年6月に着工したが、配備に反対する地元漁師ら4人が同12月、地権者として工事差し止めを求め、同地裁に提訴し、審理が続いている。この訴訟を支援するため「オスプレイ裁判支援市民の会」などが「広く市民にかかわる問題だ」として今回の訴訟への参加を呼びかけたものだ。訴状で、佐賀駐屯地が完成すれば攻撃目標になる恐れがあり「近隣地域の住民が戦争に巻き込まれる被害が切迫している」、「(オスプレイが)墜落すれば住民らの生命・身体、財産などへ甚大な被害が生じる。生命を守り、生活を維持する人格権の根幹を侵害する恐れがある」と主張した。まさに軍民分離こそ住民の安全、「命と暮らし」を守るというジュネーブ条約など国際法に基づく主張だ。「生活の場に軍備は不要だ」。この声と主張を沖縄、全国、世界に広げよう。
「むすぶ」目次(2024年6月号) ― 2024/06/24 06:50
■ 今月を視る /「自分たちのことは自分で決められる沖縄にしたい」
■ 解説 / 戦争国家づくりを推進する地方自治法改悪 滋賀県大津市議 中川哲也
■ 沖縄レポート / 沖縄戦後79年・安里英子共同代表逝去・土地購入
その中で迎えた恨之碑追悼会 沖縄国際大元講師 西岡信之
■ アピール / 長生炭鉱坑口を開けるクラファン・サポーターに登録を!
長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 上田慶司
■ 図書あんない /『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』 川満彰・林博史 著
事務局 湯川 恭
■ 読者つうしん / 中村哲さんの本を読んで・・・素晴らしい日本国憲法を学んだ
宇治市 中川清子
■ Information & Editorial Peace Note
■ 解説 / 戦争国家づくりを推進する地方自治法改悪 滋賀県大津市議 中川哲也
■ 沖縄レポート / 沖縄戦後79年・安里英子共同代表逝去・土地購入
その中で迎えた恨之碑追悼会 沖縄国際大元講師 西岡信之
■ アピール / 長生炭鉱坑口を開けるクラファン・サポーターに登録を!
長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 上田慶司
■ 図書あんない /『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』 川満彰・林博史 著
事務局 湯川 恭
■ 読者つうしん / 中村哲さんの本を読んで・・・素晴らしい日本国憲法を学んだ
宇治市 中川清子
■ Information & Editorial Peace Note
今月を視る(「むすぶ」2024年6月号より) ― 2024/06/24 06:47
「自分たちのことは自分で決められる沖縄にしていきたい」
早々に辺野古着工の暴挙
6月16日投開票の沖縄県議選は私たちにとってなんとも重苦しい結果となった。
今後、玉城デニー県政に対する激しい攻撃で、県政に様々な困難を強いられることになることが予想される。軍事化に向けた政府のより強硬な姿勢も露骨になることも予想される。
早速、県議選2日後の6月18日、沖縄防衛局は、辺野古新基地建設を巡り、8月1日、大浦湾側の軟弱地盤に杭を打ち込む本格工事に着手することを県に通告した。これまで、当然の正式手続きとして続けていた県との事前協議を、事実上打ち切る暴挙だ。
「デニー与党」候補の得票は大きく減った?
それにしても、自民やメディアの多くが「これで潮目が変わった」と盛んに宣伝することは実態を表しているのか、注意深くみる必要がある。議席数の大きな変化はそのとおりであり、得票率も2020年の県議選から野党(自民党)・中立(公明・維新)が大きく増加している(46・47%→53・76)ことは地元紙を含むメディアによって公表されている。だだし、得票率は、前回無投票の選挙区が4(名護、うるま、浦添、石垣、今回は石垣のみ)あったことから、得票合計数による単純比較は支持率の増減について正確な実態を表していないこともあることを前提に見ていかなければならない。
実際、各選挙区の落選者を含めた「デニー与党」候補の得票を細かく見ていくと、ほとんどの選挙区で前回と比べて大幅に合計得票数が減少しているケースは見られない。例えば、立憲と社民の調整ができず競合した結果、ともに落選した宜野湾選挙区でも前回(2020年)17633票から今回18366票へと増加、共産党現職を失った沖縄市区でも前回23716票から23510票とほとんど変わらず。自民新人の当選で自民が2になったと騒がれている中頭郡選挙区では、前回34955票から37454票へと逆に増加している。しかも、これらは投票率が低下した中での得票である。また、多くの選挙区で「デニー与党」候補が軒並み上位当選していることも今回選挙の特徴の一つということができる。
では、得票率の大きな変化の要因は何だろうか。要因の一つとしてあげることができるのは、公明党が前回から10000票余を増加させていることだ。公明党は前回候補者を2に絞り(コロナ禍で公明が得意とする個別訪問等の組織戦が十分できないためと言われる)、今回元に戻す形で4の立候補者を立て全員当選させた。つまり、公明党の10000票余の増加は「劇的な変化」ではなく、元に戻したという話だ。
こうして見ると、数字に表れた「得票率の減」とのマイナス印象にかかわらず、県民の多くがデニー玉城県政を「見放し」たり、「離れた」という実態は見られないのではないか。
とはいえ、相手側の自失状況(裏金問題など)の中でなぜ得票に大きな変化(大幅増)につなげることができなかったのかをはじめ課題は山積だ。
展望と希望はしっかりとある
今は、落ち着いて状況に向き合い、ともに考え、しっかり話し合ことが求められている。
議席を奪われたことで、「デニー県政」の運営は極めて困難になることは明らだが、今後の展望で希望がないわけではない。それは「デニー与党」の女性候補者7人全員が、しかも上位当選したことだ。 反基地、平和を含め、環境問題、人権、ジェンダー平等、福祉、そして新自由主義に対抗し、「公共」を取り戻す地域の諸課題を地域に密着しで取り組みながら、女性候補者を住民の取り組みの中からつくりあげることができるなら、「オール沖縄」を立て直すことができるのではないかと思える。自戒を込めてそう思う。なぜなら、この課題は、自らの住む地域を含む全国共通の課題に他ならないからだ。
国頭郡区(名護市を除く県北部町村 定数2)で、トップ当選を果たした玉城知事を支持する無所属新人の儀保唯さん(39)は、「弁護士として10年以上働き、住民の貧困や福祉、医療、子育て支援不足などの問題を目の当たりにしてきた。こうした課題解決に取り組み、女性や多様な人材が力を発揮できる社会をつくる-などとした訴えが、女性や若い層を中心に浸透し」(沖縄タイムス)勝利をつかみ取った。
「自分たちのことは自分で決められる沖縄にしていきたい」。彼女のこの決意を私たちみんなのものとしていこう。困難をはね返す基盤はここにある。
早々に辺野古着工の暴挙
6月16日投開票の沖縄県議選は私たちにとってなんとも重苦しい結果となった。
今後、玉城デニー県政に対する激しい攻撃で、県政に様々な困難を強いられることになることが予想される。軍事化に向けた政府のより強硬な姿勢も露骨になることも予想される。
早速、県議選2日後の6月18日、沖縄防衛局は、辺野古新基地建設を巡り、8月1日、大浦湾側の軟弱地盤に杭を打ち込む本格工事に着手することを県に通告した。これまで、当然の正式手続きとして続けていた県との事前協議を、事実上打ち切る暴挙だ。
「デニー与党」候補の得票は大きく減った?
それにしても、自民やメディアの多くが「これで潮目が変わった」と盛んに宣伝することは実態を表しているのか、注意深くみる必要がある。議席数の大きな変化はそのとおりであり、得票率も2020年の県議選から野党(自民党)・中立(公明・維新)が大きく増加している(46・47%→53・76)ことは地元紙を含むメディアによって公表されている。だだし、得票率は、前回無投票の選挙区が4(名護、うるま、浦添、石垣、今回は石垣のみ)あったことから、得票合計数による単純比較は支持率の増減について正確な実態を表していないこともあることを前提に見ていかなければならない。
実際、各選挙区の落選者を含めた「デニー与党」候補の得票を細かく見ていくと、ほとんどの選挙区で前回と比べて大幅に合計得票数が減少しているケースは見られない。例えば、立憲と社民の調整ができず競合した結果、ともに落選した宜野湾選挙区でも前回(2020年)17633票から今回18366票へと増加、共産党現職を失った沖縄市区でも前回23716票から23510票とほとんど変わらず。自民新人の当選で自民が2になったと騒がれている中頭郡選挙区では、前回34955票から37454票へと逆に増加している。しかも、これらは投票率が低下した中での得票である。また、多くの選挙区で「デニー与党」候補が軒並み上位当選していることも今回選挙の特徴の一つということができる。
では、得票率の大きな変化の要因は何だろうか。要因の一つとしてあげることができるのは、公明党が前回から10000票余を増加させていることだ。公明党は前回候補者を2に絞り(コロナ禍で公明が得意とする個別訪問等の組織戦が十分できないためと言われる)、今回元に戻す形で4の立候補者を立て全員当選させた。つまり、公明党の10000票余の増加は「劇的な変化」ではなく、元に戻したという話だ。
こうして見ると、数字に表れた「得票率の減」とのマイナス印象にかかわらず、県民の多くがデニー玉城県政を「見放し」たり、「離れた」という実態は見られないのではないか。
とはいえ、相手側の自失状況(裏金問題など)の中でなぜ得票に大きな変化(大幅増)につなげることができなかったのかをはじめ課題は山積だ。
展望と希望はしっかりとある
今は、落ち着いて状況に向き合い、ともに考え、しっかり話し合ことが求められている。
議席を奪われたことで、「デニー県政」の運営は極めて困難になることは明らだが、今後の展望で希望がないわけではない。それは「デニー与党」の女性候補者7人全員が、しかも上位当選したことだ。 反基地、平和を含め、環境問題、人権、ジェンダー平等、福祉、そして新自由主義に対抗し、「公共」を取り戻す地域の諸課題を地域に密着しで取り組みながら、女性候補者を住民の取り組みの中からつくりあげることができるなら、「オール沖縄」を立て直すことができるのではないかと思える。自戒を込めてそう思う。なぜなら、この課題は、自らの住む地域を含む全国共通の課題に他ならないからだ。
国頭郡区(名護市を除く県北部町村 定数2)で、トップ当選を果たした玉城知事を支持する無所属新人の儀保唯さん(39)は、「弁護士として10年以上働き、住民の貧困や福祉、医療、子育て支援不足などの問題を目の当たりにしてきた。こうした課題解決に取り組み、女性や多様な人材が力を発揮できる社会をつくる-などとした訴えが、女性や若い層を中心に浸透し」(沖縄タイムス)勝利をつかみ取った。
「自分たちのことは自分で決められる沖縄にしていきたい」。彼女のこの決意を私たちみんなのものとしていこう。困難をはね返す基盤はここにある。
「むすぶ」目次 (2024年5月号) ― 2024/05/20 20:49
■ 今月を視る / ガザ住民大虐殺を止め、平和に生きる権利を求め闘う人々とともに
世界から植民地主義を終わらせよう!
■ 報告 / 日鉄呉跡地の軍事拠点化を許すな! ZENKO広島 日南田成志
■ 沖縄レポート / 80年前の沖縄全島要塞化と重なる対中国ミサイル・弾薬庫強靭計画
沖縄国際大元講師 西岡信之
■ アピール /『強制動員被害者運動記録写真展』に行きましょう!
植民地歴史博物館と日本をつなぐ会 矢野秀喜
■ 図書あんない / イスラエル軍元兵士が語る非戦論 ダニー・ネフセタイ 著
富田林市 五十子幸光
■ 読者つうしん / 市民運動の仲間と参加した「能登地震災害ボランティア」
堺市 豆多敏紀
■ Information & Editorial Peace Note
世界から植民地主義を終わらせよう!
■ 報告 / 日鉄呉跡地の軍事拠点化を許すな! ZENKO広島 日南田成志
■ 沖縄レポート / 80年前の沖縄全島要塞化と重なる対中国ミサイル・弾薬庫強靭計画
沖縄国際大元講師 西岡信之
■ アピール /『強制動員被害者運動記録写真展』に行きましょう!
植民地歴史博物館と日本をつなぐ会 矢野秀喜
■ 図書あんない / イスラエル軍元兵士が語る非戦論 ダニー・ネフセタイ 著
富田林市 五十子幸光
■ 読者つうしん / 市民運動の仲間と参加した「能登地震災害ボランティア」
堺市 豆多敏紀
■ Information & Editorial Peace Note
今月を視る (「むすぶ」2024年5月号より) ― 2024/05/20 20:48
ガザ住民大虐殺を止め、
平和に生きる権利を求め闘うパレスチナと世界の人々とともに
世界から植民地主義を終わらせよう!
今も続くナクバ
日本に住み、平和に関心を持つものにとって、「5・15」と言えば沖縄の「施政権返還の日」を思い浮かべる。一方、パレスチナの人々にとって、「5・15」は「ナクバ(大惨事、大災厄)の日」であることを知るようになったのは、「ガザ虐殺やめろ!」の取り組みに、少なくない人々が関心を寄せ参加するようになったこの間のことである。
1948年、イスラエル建国にともなって、パレスチナの人々のほとんどが、家、土地から強制的に追い出され財産を失った。ナクバでは、シオニストの民兵によって531のパレスチナ人の村が地図から消され、70以上の虐殺が行われた結果、1947年から1949年の間に15,000人以上のパレスチナ人が死亡した。それ以来、故郷の村や町、都市に戻る権利を否定された結果、パレスチナ人の約80万人が難民となり、土地に残った人の4分の1が国内避難民となった(日本YWCAのHPより)。この「ナクバの日」の出来事こそ、70年以上続くイスラエルによるパレスチナ人に向けられた暴力と抑圧の出発点だ。
10月7日以降、7カ月以上にわたって繰り広げられているイスラエルのガザ住民抹殺攻撃はこの延長線上にある。すでに、公式に確認されただけでも3万5千人以上のガザ住民が殺された。さらに、瓦礫に埋もれたままの犠牲者も1万人を上回ることが推定される。犠牲者のうちの7割が女性と子供であり、イスラエルが「自衛権行使」の名のもとにすすめる武力行使に一片の正当性もないことは明らかである。
世界から「即時停戦」の声が高まる中、イスラエルはなお「停戦」を拒み続けている。仲介国の「停戦案」をハマスが受諾すると表明したにもかかわらず、この「停戦案」の条件に難癖をつけ、150万人が避難、密集する南部ラファへの総攻撃を準備していることが報じられた。絶対に許してはならない。
植民地主義による民族浄化戦争を終わらせよう
世界の「今すぐ停戦を」の圧倒的な声を無視して、イスラエルがパレスチナ抹殺戦争を止めないのは、欧米や日本などの大国が、世論に押されて「やり過ぎ」との「イスラエル批判」を口にしつつも、イスラエルの「自衛権」を容認、擁護し、武器援助を含む交流、連携を止めようとしないからだ。それは、これらの国々が、いずれも植民地主義による戦争や抑圧、支配を行い、今なおその清算を行っていないからだ。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツはいずれも植民地大国として、先住民を強大な暴力で抹殺し、支配してきた歴史を持っている。日本もまた、アジアへの侵略戦争、植民地支配、そして、アイヌ、琉球を暴力によって抑圧、支配してきた歴史を持ち、清算されることもなく、この植民地主義的政策は維持、継続されている。今、入植者が支配するイスラエルという国家の政府が先住民であるパレスチナの人々に対して行っていることは、アメリカ大陸に入植したヨーロッパ人が、抵抗する先住民のネイティブ・アメリカンを暴力で駆逐、抹殺したのとまったく同じことだ。住んでいた地から追われたパレステチナの人々が求めているのは「ユダヤ人の抹殺」などでなく、故郷に帰る自由、人らしく平和に生きる権利だ。この当たり前の権利を否定する植民地主義を世界から一掃する時だ。
沖縄のあらたな5・15
5月15日、辺野古をめぐる訴訟において住民側の勝利があった。辺野古周辺の住民が、埋め立てを認めた国土交通相の裁決を違法と訴えた裁判で、福岡高裁那覇支部は「原告適格」がないとした一審判決を取り消し、審理を差し戻す判決を言い渡した。今後の予断は許さないが、実質審理を通じて、新基地建設阻止に向けた新たな展開をつくり出す可能性が生まれた。
今年の「5・15平和行進」は、5月18日、2コースに分かれ行進し、普天間基地を包囲する形で取り組まれ、基地撤去の声を高らかに響かせた。沖縄の反戦・反基地の闘いは、パレスチナの人々の平和に生きる権利を求める闘いに連帯し、世界から植民地主義を終わらせる闘いでもある。
平和に生きる権利を求め闘うパレスチナと世界の人々とともに
世界から植民地主義を終わらせよう!
今も続くナクバ
日本に住み、平和に関心を持つものにとって、「5・15」と言えば沖縄の「施政権返還の日」を思い浮かべる。一方、パレスチナの人々にとって、「5・15」は「ナクバ(大惨事、大災厄)の日」であることを知るようになったのは、「ガザ虐殺やめろ!」の取り組みに、少なくない人々が関心を寄せ参加するようになったこの間のことである。
1948年、イスラエル建国にともなって、パレスチナの人々のほとんどが、家、土地から強制的に追い出され財産を失った。ナクバでは、シオニストの民兵によって531のパレスチナ人の村が地図から消され、70以上の虐殺が行われた結果、1947年から1949年の間に15,000人以上のパレスチナ人が死亡した。それ以来、故郷の村や町、都市に戻る権利を否定された結果、パレスチナ人の約80万人が難民となり、土地に残った人の4分の1が国内避難民となった(日本YWCAのHPより)。この「ナクバの日」の出来事こそ、70年以上続くイスラエルによるパレスチナ人に向けられた暴力と抑圧の出発点だ。
10月7日以降、7カ月以上にわたって繰り広げられているイスラエルのガザ住民抹殺攻撃はこの延長線上にある。すでに、公式に確認されただけでも3万5千人以上のガザ住民が殺された。さらに、瓦礫に埋もれたままの犠牲者も1万人を上回ることが推定される。犠牲者のうちの7割が女性と子供であり、イスラエルが「自衛権行使」の名のもとにすすめる武力行使に一片の正当性もないことは明らかである。
世界から「即時停戦」の声が高まる中、イスラエルはなお「停戦」を拒み続けている。仲介国の「停戦案」をハマスが受諾すると表明したにもかかわらず、この「停戦案」の条件に難癖をつけ、150万人が避難、密集する南部ラファへの総攻撃を準備していることが報じられた。絶対に許してはならない。
植民地主義による民族浄化戦争を終わらせよう
世界の「今すぐ停戦を」の圧倒的な声を無視して、イスラエルがパレスチナ抹殺戦争を止めないのは、欧米や日本などの大国が、世論に押されて「やり過ぎ」との「イスラエル批判」を口にしつつも、イスラエルの「自衛権」を容認、擁護し、武器援助を含む交流、連携を止めようとしないからだ。それは、これらの国々が、いずれも植民地主義による戦争や抑圧、支配を行い、今なおその清算を行っていないからだ。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツはいずれも植民地大国として、先住民を強大な暴力で抹殺し、支配してきた歴史を持っている。日本もまた、アジアへの侵略戦争、植民地支配、そして、アイヌ、琉球を暴力によって抑圧、支配してきた歴史を持ち、清算されることもなく、この植民地主義的政策は維持、継続されている。今、入植者が支配するイスラエルという国家の政府が先住民であるパレスチナの人々に対して行っていることは、アメリカ大陸に入植したヨーロッパ人が、抵抗する先住民のネイティブ・アメリカンを暴力で駆逐、抹殺したのとまったく同じことだ。住んでいた地から追われたパレステチナの人々が求めているのは「ユダヤ人の抹殺」などでなく、故郷に帰る自由、人らしく平和に生きる権利だ。この当たり前の権利を否定する植民地主義を世界から一掃する時だ。
沖縄のあらたな5・15
5月15日、辺野古をめぐる訴訟において住民側の勝利があった。辺野古周辺の住民が、埋め立てを認めた国土交通相の裁決を違法と訴えた裁判で、福岡高裁那覇支部は「原告適格」がないとした一審判決を取り消し、審理を差し戻す判決を言い渡した。今後の予断は許さないが、実質審理を通じて、新基地建設阻止に向けた新たな展開をつくり出す可能性が生まれた。
今年の「5・15平和行進」は、5月18日、2コースに分かれ行進し、普天間基地を包囲する形で取り組まれ、基地撤去の声を高らかに響かせた。沖縄の反戦・反基地の闘いは、パレスチナの人々の平和に生きる権利を求める闘いに連帯し、世界から植民地主義を終わらせる闘いでもある。