今月を視る(2024年7・8月号より)2024/08/05 14:32

「軍民分離こそ住民の確かな安全保障」の声を広げよう!

基地があるゆえの性暴力犯罪事件や事故の徹底追及を
6月の県議選での結果(議席数でデニー与党が過半数を大きく下回った)を受けて、沖縄防衛局は新基地建設で大浦湾側での本格的な埋め立て工事を8月1日から開始すると通告していたが、7月31日、着手時期を「台風による影響で」延期すると沖縄県に正式に伝えた。延期時期や新たな着工時期は明示していないが、旧盆明けの8月19日以降に着手することを検討しているとの情報も報道されている。
これに対して玉城デニー知事は、沖縄防衛局が「事前協議」を曲解し、無視する中、「協議が調うまで工事を始めるべきではないということが、われわれの一貫した要請だ。しっかり厳守していただきたい」と主張した。自治体としてのこのあたり前の要求を無視することは、地方自治を破壊し、軍事を最優先する暴挙であり、到底許されるものではない。
「台風による延期」というが、県議選後に発覚した米軍兵士による相次ぐ性暴力犯罪と日米政府による隠ぺい事実の他、安和港ゲートで発生した土砂搬入トラックに抗議中の女性と警備員の男性がダンプカーに巻き込まれた痛ましい死傷事故などが「延期」の背景にあるとみて間違いない。現在、この事故を受けて土砂運搬作業が中止となっているが、玉城知事が「今後、事故の詳細などもしっかり確認していく必要がある」という通り、事故の原因や当時の詳細な状況が解明されない限り、土砂搬入や大浦湾埋め立てが許されるはずはない。米軍兵士による性暴力犯罪の徹底追及も最重要課題の一つである。いずれも軍事基地あるがゆえの、軍事基地を無理やり作ろうとする上で引き起こされた事件、事故であるからだ。
「住民の安全」眼中にない軍拡政策
 他方、日本政府の軍拡暴走が止まらない。仮想敵国・中国などと明日にでも一戦を交えるかの勢いだ。
政府や大手メディアの多くが「厳しさを増す安全保障環境」と口を揃えるが、「厳しさ」を増幅させているのは中国などの一方的軍拡だけではない。日米などの共同演習に対抗して中国が軍事演習やデモをぶつけるという繰り返しが実態だ。今、双方にとって必要なのは、緊張を和らげ、軍事衝突を絶対避けるという政治意志であり、軍縮政策だ。そして何よりも住民の安全を最優先するという強い政治意志だ。
 日米両政府が7月28日開かれた安全保障協議委員会(2プラス2)で行った共同発表は緊張緩和や軍縮とは真逆の方向だ。自衛隊が2024年度末までに部隊運用を一元的に担う「統合作戦司令部」を創設するのに合わせ、米側は在日米軍を新たに「統合軍司令部」として再構成し(これまで在日米軍部隊の運用・作戦指揮権はハワイ・ホノルルのインド太平洋軍が有していた)、運用を強化する。さらにミサイルなどの兵器(「装備品」)の共同生産についても、種類や生産能力を拡大する方針を決定している。
「日米安保の一体化」、つまり、中国との戦争において実戦の体制を整えようという内容だ。
国際法に基づく「軍民分離」を主張
 住民の安全を全く考慮することのないこうした全国総基地化は、住民の不安と警戒、反撥を呼びおこさざるをえない。一方で、沖縄・大東島の自衛隊レーダー基地計画の「受け入れ」などがあるものの、うるま市陸自訓練場計画を断念させた闘いや京都祝園弾薬(ミサイル)庫増計画や大分県敷戸弾薬庫増設計画に反対する住民ぐるみの取り組み、運動が広がっている。
 陸上自衛隊のオスプレイを佐賀空港に配備する計画に対しても、配備に反対する佐賀などの住民245人が7月29日、空港隣接地で建設が進む佐賀駐屯地(仮称)の工事差し止めを国に求める訴訟を佐賀地裁に起こした。すでに、佐賀駐屯地の工事は2023年6月に着工したが、配備に反対する地元漁師ら4人が同12月、地権者として工事差し止めを求め、同地裁に提訴し、審理が続いている。この訴訟を支援するため「オスプレイ裁判支援市民の会」などが「広く市民にかかわる問題だ」として今回の訴訟への参加を呼びかけたものだ。訴状で、佐賀駐屯地が完成すれば攻撃目標になる恐れがあり「近隣地域の住民が戦争に巻き込まれる被害が切迫している」、「(オスプレイが)墜落すれば住民らの生命・身体、財産などへ甚大な被害が生じる。生命を守り、生活を維持する人格権の根幹を侵害する恐れがある」と主張した。まさに軍民分離こそ住民の安全、「命と暮らし」を守るというジュネーブ条約など国際法に基づく主張だ。「生活の場に軍備は不要だ」。この声と主張を沖縄、全国、世界に広げよう。

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