今月を視る (「むすぶ」2023年3月号より)2023/03/24 10:21

つくられた「軍拡世論」に対抗するために
   事実と実例示し、軍縮こそ「確かな安全保障」を訴えよう!

再び沖縄を戦場にさせない!
3月16日、福岡高裁那覇支部が、「辺野古新基地工事設計変更を不承認」とした県の処分を「違法」とする「結論ありき」の不当判決を行った。時を同じくして同日、石垣島の陸自駐屯地(ミサイル部隊配備)を開設。続く18日にはミサイルなどの弾薬の搬入を強行した。沖縄、南西地域を「不沈空母」の前線基地とする対中国戦争計画の実像がますます露わになっている。とくに改定「安保3文書」に明記された反撃能力(敵基地攻撃能力)の主軸となる長射程ミサイル(改良型12式地対艦誘導弾、射程1000キロ以上)配備の可能性が高く、ミサイル戦争の標的になる危険性がはっきりと見えてきた。
この動きに対し、住民から「実際に戦場となる」ことへの不安と、そのリスクを隠してきた防衛省への怒りと抗議の声が高まる。
2月26日には、那覇で「島々を戦場にするな!沖縄を平和発信の場に!2.26緊急集会」が、離島住民含め1600人の参加で取り組まれた。
3月5日には、「ミサイル基地はいらない」をスローガンに石垣島中心部で陸自配備に反対する住民約200人がデモ。
行政、議会にも変化が表れ始めた。石垣島では、住民が18年12月、有権者の3分の1を超える約1万4000人分の有効署名を提出し、(「石垣市自治基本条例」に規定された)「配備計画の賛否を問う」住民投票を求めたが、誘致推進派が多数の市議会が否決して住民投票は実現することなく、葬られた経過がある、その市議会で、22年12月、長射程ミサイルの配備について「憲法違反の可能性も指摘されている」などとして「到底容認することはできない」とする意見書を賛成多数で可決した。
15年の住民投票で陸自配備賛成が反対を上回り、16年に沿岸監視隊(約160人)を置く駐屯地が開設された与那国島でも、防衛省が22年12月、住民への事前の説明なしに地対空ミサイル部隊の配備を計画していると明らかにしたことで、住民の不安が一気に高まることになった。町が政府に改めて住民説明会の開催を求める事態になっている。
「駐屯地ができたからといって終わりじゃない。ここで声を上げなければ、基地はこれからも拡大する」(駐屯地の近くで配備に反対してきた農家の男性)。あきらめることなく、抗議の声をあげる住民を支え、「ノーモア沖縄戦」「沖縄の島々を戦場にさせない」声と闘いを全国に広げよう!

軍拡世論が増加?
一方、全国的な世論調査では、「自衛隊増強」など「軍拡世論」が増えている、政府や政権批判ができなくなったメディアの誘導によると考えられるが、けっして放置できない問題だ。
この間の政府、軍拡勢力による「厳しい安全保障環境」キャンペーンなど軍拡への世論工作は、周到で幅広い。今般、あらためて暴露された第2次安倍内閣による放送法の「政治的公平性」歪曲によるメディア恫喝と支配は、乱暴かつ露骨な典型例のひとつだ。一方で、「防衛省が人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究」、「インターネットで影響力がある『インフルエンサー』が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向ける」(沖縄タイムス2022年12月10日付)なども、行われている。

事実と実例示すことで対抗
どう対抗するか。「平和と安全な環境」は軍備ではなく交渉と対話によってしか生まれない。この事実と実例を示し、広く発信することではないか。
「中国は一つ」という米中合意が、台湾海峡に安定を築いてきた事実。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国と中国による「南シナ海に関する関係国の行動宣言」(02年)以来、南シナ海で武力衝突が起きていない事実。18年、史上初の米朝首脳会談が実現するなど米朝対話、交渉が行われた年に朝鮮のミサイル発射は一度もなかった事実。正当化されないが、ロシアによるウクライナへの武力侵略は、一部地域での武力紛争やNATO(北大西洋条約機構)との軍事同盟問題など、軍事的緊張が背景に存在していた事実-等々を示し、軍縮世論を広げていくこと。困難だが粘り強い取組みを切り拓こう。

「むすぶ」目次 (2023年3月号)2023/03/24 10:22

■ 月を視る / つくられた「軍拡世論」に対抗するために
事実と実例示し、軍縮こそ「確かな安全保障」を訴えよう!
■ ミニ解説 / 高レベル放射性廃棄物の処分を考える      事務局 岡本 誠
■ 沖縄レポート / 島々を戦場にさせない! 緊急集会に1600人
           沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之                                 
■ Book Corner /『若者が変えるドイツの政治』 木戸衛一 著  堺市 堤 淳雄
■ 読者つうしん / 株主総会参戦記 朝鮮半島出身女子勤労挺身隊と不二越をめぐって
印西市 若谷政樹  
■ おしらせ・会計報告 & Editorial Peace Note