今月を視る (「むすぶ」2023年5月号より)2023/05/22 12:42

世界が共有しなければならないのは
「人権と平和」を最優先する価値観だ!

G7サミット・広島の真の課題
無内容な「自由や民主主義」といった価値観ではなく、「人権と平和」を最優先する価値観を世界は共有しなければならない。
広島でのG7サミット(主要7カ国首脳会議)が5月19日~21日の日程で行われた。日本の岸田首相の単なるパフォーマンスではなく、広島で行うこのG7サミットを真に意義あるものにするための課題と議題は極めて明確だ。
重要な課題の一つは、核抑止力の強化ではなく、核軍縮、核廃絶である。だが、主要7カ国のうち米国をはじめ3カ国は核保有国、他の4カ国は米国の「核の傘」に入っている。ロシアがウクライナ戦争で核兵器の使用をちらつかせ、核戦争の脅威が高まる中、バイデン大統領や岸田首相はG7国の結束を強調するが、「結束」の内実は「核抑止力の強化」でしかなく、核軍縮の展望や道筋は何一つ示さない。今回に比して、昨年11月にインドネシア・バリで開かれたロシアや中国もメンバーとするG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)は「核兵器の使用・威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取り組み、外交、外交・対話が極めて重要だ。今日の時代は戦争の時代であってはならない」と宣言している。妥協の産物で不充分とはいえ、メンバーとしてロシア、中国も宣言に一定の責任を負い、拘束されるという点だけも一歩前進である。そもそもG7が敵対勢力とし、もう一つの核兵器保有国であるロシアや中国を排除して、どのような「話し合い」も「合意」も生まれないことは明らかだ。そのことを承知の上で、広島・G7サミットで核軍縮をアピールするというなら、G7サミット側による一方的な軍縮措置が必要だ。岸田首相のリードによる「新たな核軍縮提案」として大々的に宣伝されるG7「広島ビジョン」は、G7核保有国の核戦力はそのままに、中国に「核戦力データーを公表せよ」と迫り、それに応じるはずのない中国を悪者に仕立てるだけのプロパガンダに過ぎない。もはやG7であろうが、ロシア、中國であろうが、「核抑止力」にしがみつく勢力に自ら核軍縮へ進む意思も能力もないことは明らかだ。テレビの報道番組でサミットを前に平和資料館を見学した「核開発疑惑」のある国の市民へのインタビューで「自国政府の核政策をどう思うのか」を問われたその外国市民が「政府と市民は違う」と明確に答えた、その答えの中にこそ核廃絶への道筋が明確に見えている。世界の市民の意思が結実したものが核兵器禁止条約に他ならない。核兵器禁止条約に一言も触れずスルーしてしまうG7サミットではなく、世界の市民の意思である核兵器禁止条約に向き合うようサミット以後も声を高めることが重要だ。

今すぐ停戦を! ウクライナに平和を!
 もう一つの重要な課題は、ウクライナでの戦争を直ちに停戦させることだ。「ウクライナに平和を」を「ウクライナに勝利を」にすり替えさせてはいけない。「交渉というのは降参するという意味ではありません」(停戦を求めるドイツの「平和宣言」)。「外交を通じてロシア・ウクライナ戦争を迅速に終わらせるために全力を行使するよう要請します(米知識人のニューヨーク・タイムスへの意見広告)。『なぜ「ロシアの撤退」ではなく「停戦」なのか。「停戦」というとウクライナの人たちが傷つくのではないか。それでも犠牲を最小限にするには停戦しかない』『停戦とは悲劇的な終戦を迎えないための方策です』(伊勢崎賢治)。
だが、G7サミットは、「ウクライナへの強力な支援」と「対ロ制裁のレベルアップ」しか言わなかった。これでは対露中「戦争サミット」という他ない。ウクライナからゼレンスキー大統領を呼び寄せ、さらなる軍事支援を求めさせるという演出も用意した。一方で、防衛省はウクライナの負傷兵2人を自衛隊中央病院に受け入れ、治療するとサミット前日の18日、発表し、ウクライナ戦争への参加に腐心した。核兵器禁止条約をスルーし、停戦の「て」の字も出さないサミット会合など、広島を侮辱する行為である。そのことを各国の市民が自国政府に問いただし、核廃絶、ウクライナでの戦争の停戦実現、気候変動危機への抜本的対処などを求める具体的な行動が一層重要となっている。
 世界では即時停戦を求める声が高まっている。日本でも「2023年5月広島に集まるG7指導者におくる日本市民の宣言」の署名(次ページ参照)が継続する。今こそ声を高めよう。

「むすぶ」目次 (2023年5月号)2023/05/22 12:47

■ 今月を視る / 世界が共有しなければならないのは
「人権と平和」を最優先する価値観だ!
■ 沖縄レポート / 日本復帰51年 78年前の地獄の沖縄戦を二度と繰り返すな
5.21平和集会に2100人  沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之                                   
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 『喜瀬武原』   印西市 若谷政樹
■ 図書あんない / 『反戦川柳人 鶴淋の獄死』 佐高 信 著  堺市 松永直子  
■ 読者つうしん / 広島サミットを問う 核抑止ではなく核廃絶を!  
ZENKO・広島 日南田 成志 
■ Information & Editorial Peace Note