今月を視る (「むすぶ」2023年4月号より)2023/04/27 13:30

ウクライナに平和を! 直ちに停戦を!
東アジアに対話を! 台湾をめぐる米中戦争は起こさせない!

代理戦争による戦争継続は悪
ロシアが戦争を仕掛けて1年が経つ。一向に戦火が止む気配はなく、人の死と生活の破壊は増え続いている。ウクライナの現況を報じるメディアは、「ロシアが〇〇を包囲」「ウクライナが反転攻勢」など
戦況中心のニュースに終始。停戦に向けた外交交渉の動きなどほとんど報じられない。テレビのニュース番組でウクライナ戦争をめぐる解説はいつの間にか「防衛研究所」の研究員がほぼ独占するという状態が続く。ウクライナへの一方的な軍事侵攻を行ったロシアが悪いのははっきりしている。1年以上戦闘が続き、人々の犠牲と生活の被害が拡大する一方の現状で、平和を求める世界の市民が力を合わせなければならないのは、今すぐこの戦争を止めることである。ウクライナに「軍事的勝利」をもたらせるよう支援をすることではない。米国や日本を含むG7国、NATO諸国がウクライナへの武器援助を競い合っているが、ウクライナを利用した代理戦争に正義などない。
 戦争の継続は、一方的に戦争を仕掛けたロシアだけでなく、戦争当事者双方に不正義と犯罪を拡大する。「国連ウクライナ人権監視団は24日、ロシアが侵攻したウクライナでの人権状況に関する報告書を公表し、双方が拘束した捕虜を処刑しているとして非難した。ロシアは15人、ウクライナは25人を処刑したと指摘。国際人道法や国際人権法に抵触している可能性があり、双方に捕虜の人権保護や処遇の改善を求めた。」(毎日3月27日)。英国がウクライナに供与する予定の主力戦車「チャレンジャー2」の弾薬に、劣化ウラン弾が含まれることが発表された。劣化ウラン弾は米軍がイラク戦争で使用後、現地では子供の先天性異常が多発したとも報じられ、禁止を求める声が強い「汚い兵器」の一つである。
 「現状での停戦はロシアを利するだけ」、「ロシアを軍事的に追い込んでからでないとウクライナにとって不利益しかない」、強硬派は「ウクライナへの裏切り行為」とさえ言うかもしれない。だが、人命と人権に勝る国益や公益はどこにもない。かつての日本軍国主義と現在のウクライナ政府を同列にはできないが、「戦果を挙げてからの和平交渉を」との歴史的な愚を繰り返すようなことがあってはならない。何よりもまず停戦を。種々の紛争問題を平和的に解決する手掛かりがその道筋にある。停戦を実現するよう求める世界の声と行動がその道筋をつくりだす。

アジアへの戦争拡大を許さない
一方で、ウクライナ戦争を利用してアジアに軍事的緊張を拡大する動きも加速している。米国は「一つの中国」(台湾を国として承認しない)政策を維持したまま、政府や議会の高官に台湾政府との接触、交流を頻繁に行わせ、中国を挑発し、軍事を含む新たな緊張をつくりだしている。日本政府は、米国に同調、沖縄、南西諸島の急速な軍事化を強行している。
こんな不穏な状況の中で、4月6日午後、陸上自衛隊第8師団(熊本県)所属のUH60JA多用途ヘリコプターが、沖縄・宮古島周辺で飛行中、行方不明になり、後日、周辺の海中から機体の一部と搭乗していた6名の隊員の遺体が発見された。海上に墜落したことは間違いないが、墜落原因は不明のままである。着任早々の第8師団長を含む10名もの自衛隊員の命が一挙に奪われるという痛ましい事件である。遺族の悲しみは計り知れず、一人一人の命の大切さをあらためて胸に刻まなければならない。
だが、この事態に至った原因と背景や責任を曖昧にすることはできない。今回の事件で明らかになったことがいくつかある。一つは、沖縄を管轄する第15旅団ではない師団のトップが、なぜ、宮古島を上空から偵察していたのかという点である。一度「台湾有事」が発生すれば、第8師団が本来の所管エリアである熊本、宮崎、鹿児島県から南西諸島方面に緊急展開することが明らかになった。また、事故機が事前に提出していた飛行計画によると、駐屯地のある宮古島を出発し、北方の池間島、下地島や隣接する伊良部島などを視察する予定だった。計画していたコースは下地島空港や平良港など重要インフラの近くである。自衛隊が、有事に民間の港や空港を使うことを想定していることが明らかになった。
特に、下地島空港は、「屋良覚書」と「西銘確認書」によって軍事目的で利用しないことを県と政府の間で確認しているが、有事となれば、それらの住民合意は簡単に反古とされることも明らかになった。
 このように、中国との実戦を想定した綿密な計画と実戦訓練が始まっている。その意味で、師団長を含む自衛隊員の犠牲は不運な「事故死」ではなく「戦死」という他ない。
 これ以上の「戦死」も住民犠牲も生み出させてはならない。

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