今月を視る (「むすぶ」2023年6・7月号より)2023/07/12 20:14

交渉、停戦は降参を意味するものではない!
ウクライナでの戦争の停戦を! 世界の行動に合流しよう!

武器輸出解禁にストップを
 ウクライナでの戦争を利用して、ここぞとスーパー軍事大国に突き進む日本。直近でも「防衛装備移転」、つまり武器輸出の歯止めが取り払われたかのような動きが強まっている。政府は1967年策定の「武器輸出三原則」を改悪し、2014年「防衛装備移転3原則」に変えた。だが、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5分野に限定という規制を残さざるを得なかった。この規制も障害となり、輸出の実績はほとんど上がっていないという。ここにきて、自民党は「5分野撤廃」を公然と掲げるようになった。
 自民、公明両党のワーキングチーム(WT)は7月5日、「防衛装備移転三原則」とその運用指針の見直しを求めるまとめを出した。日本が英国、イタリアと開発する次期戦闘機を念頭に、国際共同開発・生産した「装備品」について「日本から第三国にも直接移転できるようすべき」や「国際法に違反する侵略や武力行使を受けている国への支援」を輸出の目的に追加し、ウクライナへの武器輸出は推進すべきと声をそろえている。さらに、F15戦闘機の中古エンジンを念頭に、完成装備品に殺傷能力があっても、部品そのものに殺傷性がなければ移転を可能とすべきだとの意見など、武器輸出全面解禁への布石も次々と打たれた。
 すでに、6月7日には、〝死の商人〟でしかない巨大な軍需産業を税金で育て支える〝防衛産業強化法〟、6月14日には、43兆円もの莫大な軍事費を調達するための〝防衛財源確保法〟を成立させた。
悪法は成立したが、その目的を達成するためのプロセスは大きな矛盾をはらむ。市民生活破壊を伴うことは確実であり、実質化を止める闘いは続く。

ウクライナでの戦争継続を求める好戦勢力
 ウクライナ軍の「反転攻勢」が連日ニュースで流される。「徹底抗戦を決めたのは政府ではなく、私たち市民だ」「悪いのはプーチンだけではない。プーチン政権を容認しているロシア人との和解は永遠にない」「戦争を終わらせるのは勝利しかない」とのウクライナ市民の怒りの声。戦争で家族や隣人を失い、傷つき、生活を丸ごと破壊された市民の耐え難い怒りの感情はだれも否定できない。だが、「戦争を終わらせるのは勝利しかない」というのは本当なのかと問いかけること、「これ以上戦争の犠牲者を生まないために、和平や停戦を呼びかけることはウクライナ市民に対する侮辱や背信になるのだろうか。私たちはそうは思わない。「今、停戦をすればロシアを利するだけ」「今の状況で妥協、停戦すればウクライナ市民の正当な権利は永遠に取り戻せない」という意見が、ウクライナ政府だけでなく、世界の反戦勢力の中にも存在していることも知っている。それでも、私たちはこれ以上の犠牲を止めるために「今すぐ停戦」を求め、自国政府に停戦に向けた外交交渉を行うよう求める行動を支持する。軍事的勝利ではなく、国際連帯のもと非武装の闘いでウクライナの人々の人権、正義を取り戻すことは「空論」などではない。
他方、米国政府はウクライナ軍の「反転攻勢」支援のために、イラク戦争で使用した非人道的な兵器クラスター爆弾を供与すると決定した。この米国の決定に、NATO諸国からも批判の声があがっているにもかかわらず、日本政府が何らの反応も示さないのはなぜか。クラスター爆弾は、オスロ条約(2010年発効)で製造や使用が禁じられている(米国、ロシア、イスラエルなどの戦争国家以外、日本も含めほとんどの国が署名、批准している)。国際法違反の米国のこの決定を黙認する理由は一つしかない。戦争の継続を望むからだ。それが自国の利益につながるからだ。覇権の確保や武器売買でのぼろ儲けができるからだ。
こんな泥沼からのオルタナティブを示す世界の動きが始まっている。「ウクライナに平和を国際サミット」(6月10~11日、オーストリア・ウィーン)で、宣言「今こそ停戦と交渉を! 9/30~10/8グローバル行動週間へ」が採択された。合流へ全国各地域での具体化が課題だ。

「むすぶ」目次 (2023年6・7月号)2023/07/12 20:16

■ 今月を視る / 交渉、停戦は降参を意味するものではない!
ウクライナでの戦争の停戦を! 世界の行動に合流しよう!
■ 寄稿 / いまこそ加害企業は強制動員被害者との真摯な対話を! 
日鉄裁判を支援する会 中田光信 
■ 沖縄レポート /「平和の礎」24万人名前読み上げ 次世代につなぐ平和の灯
            沖縄国際大学元非常勤講師 西岡信之
■ オピニオン / ウィーン平和サミットの意義を考える    東京 浅井健治                                 
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌 『月桃』   印西市 若谷政樹  
■ 読者つうしん /『おもしろかってんよ』と歩まれた飯田しずえさんに学ぶ
        大阪府太子町 湯川 恭
■ Information & Editorial Peace Note