今月を視る(「むすぶ」2012年5月号より)2012/05/22 17:31

原発ゼロこそが「現実」「普通」である社会へ!

5月5日、泊原発(北海道電力)が停止し、稼動している原発は日本中のどこにもなくなった。それから2週間以上が経過しているが、「とんでもないことになる」どころか「何ともない」日々を私たち市民は経験している。それでも、「夏が大変だ」という電力会社、政府のキャンペーンが日ごとに騒々しいほどに強められている。さしあたって、大飯原発3,4号機の再稼動のためであることはだれにでもわかる。

政府と関西電力は、当初約20%とした関電管内の今夏の電力量不足を小出しに変更しながら、最近では14.9%に落ち着かせ、関西広域連合など大方の行政にこの数字を「おおむね妥当」と認めさせ、15%の節電に応じることを了承させた。

民主党政権を攻撃するためにだけ、あれほど威勢よく大飯原発再稼動について、「徹底的」とも見える批判を展開していた橋下大阪市長は、「もし再稼動があるのなら、1カ月、2カ月、3カ月という動かし方もあると思う」(毎日新聞)と、別の言い訳(「フル稼働を食い止めるための次善の策」)を準備しながら、再稼動を前提にした動きを隠そうとはしなくなってきた。もはや、こんな連中のパフォーマンスに期待などできないことは明らかだが、「電力不足」のうそを一つ一つ暴いていきながら、原発なしでも十分に生活できる社会に市民の多くが確信を持てるよう取組みを強めることが大きく求められている。

この「電力不足」をめぐる問題を考えるとき、前提としてはっきりさせておかなければいけないことは、「何もせず、このままで」「電力不足になるか、ならないか」ではなく、「電力不足で社会が混乱することのないよう、どんな準備と対策が必要か」を明らかにすることである。つまり、こうすれば、電力不足にならないということを具体的に明らかにすることだ。政府や関西電力は、原発の再稼動以外、当面有効な方法はないという。だが、これは単純なウソだ。単純なウソの最大のポイントは需要を過大に設定し、供給を過小に見積もることにある。

需要の問題から見ていこう。政府や電力会社がデータ-として示す「需要の最大値」は、電気消費のピーク時をさす。これは「夏場・平日・日中」のごく一時だけだ。猛暑といわれた一昨年の例をとっても、数時間から数十時間にすぎない。このピーク時に電力不足が生じるかもしれないという問題だ。だから、この予想されるピーク時にどんな節電対策を行うかが一つの争点である。『もともと家庭の電気消費は少ない。2010年で年間わずか22%にすぎない。しかも足りなくなるのは、ピーク消費のあるごく一時だけだ。ピーク時の「夏場・平日・日中」は、家庭の三分の二は不在で、ピークの電気消費に対する家庭消費の割合は1割にすぎないのだ。したがって、そもそも家庭の問題ではない。節電すべきなのは事業者なのだ』(未来バンク・田中優さん)というのが事実である。電気消費の半分を占め、「電力需給調整契約」によって安い電気料金で利益を得てきた上位200社が真先に節電することで、解決できる問題である。ピーク時対策は、その他にも、①.揚水発電の緊急電力、②.他の電力会社からの融通、③.自家発電などによっても、全く解決可能であることを広く知らせていこう。

供給の問題は、もっと単純なウソで塗り固められている。使える発電設備(宮津火力や多奈川火力発電所など)をわざと使えないように放置し続けていることもその一つであり、多くの関電以外の他社発電設備や多くの自家発電設備の供給能力が意識的に隠されている。

政府と電力会社の「原発不可欠」のキャンペーンをはねのけ、「偽装停電」などの陰謀を許さず、運動の力でこの夏、原発のない社会へ着実に前進していこう。

「むすぶ」目次(2012年5月号)2012/05/22 17:33

peace
■ 今月を視る/ 原発ゼロこそが「現実」「普通」である社会へ!
■ 報告/ 再稼働の理由のひとつ「供給不足」のウソを暴く
■ Q&A/ 「沖縄の負担軽減」のことばすら消えた4.27日米共同発表  
■ 読書案内/『被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか』伊藤直子、他著
■ 読者つうしん/ 最西端・与那国島の自衛隊配備は、住民投票へ 西岡信之
■ 6.17原発を問う民衆法廷 & お知らせ