今月を視る(「むすぶ」2014年3月号より)2014/04/18 10:25

―「集団的自衛権行使」に関する「解釈変更」閣議決定方針―
国内、世界に通用しない安倍政権の暴走は止められる

安倍政権への支持、不支持にかかわらず、「なぜそんなに急ぐのか」との当然の疑問に、安倍政権には合理的で明確な答えなどない。あるのは、「大日本帝国」復活への歪んだ「憧れ」と「アベノミクスへの幻滅が広がる前に」という手前勝手な「都合」だけである。

「集団的自衛権行使」に関する「解釈変更」閣議決定方針をめぐって、足元の与党・自民党内にも「波風」が立ってきた。当然の成り行きだ。

与党の公明党は、「集団的自衛権行使容認」に「慎重」姿勢を崩していない。「集団的自衛権行使容認の可否は国や国民にとって最も大切な事柄。たった19人の(首相と)閣僚だけで決定してしまうのは、いかにも乱暴に過ぎる」(公明党漆原国対委員長)と安倍の「閣議決定」先行への批判を強めている。

3月17日には、自民党が9年ぶりに「総務懇談会」を開き、「集団的自衛権行使容認」の政府方針について論議した。約2時間の懇談会で20人が発言。「解釈変更(による行使容認)は立憲主義に反する。正面から憲法を改正すべきだ。このまま自衛隊法改正なら、反対票を投じざるを得ない」(村上誠一郎元行革担当相)。「(行使容認は)相当な手続きを経て、かなり限定して決めなければならない」(と地理的な制約の必要性を強調。船田元・党憲法改正推進本部長)。「米国にありがた迷惑にならないか分析が必要だ」(野田毅税調会長)。「立法府の意見をしんしゃくすべきだ」(小坂憲次参院議員)。「解釈(変更)ありきというのは誰も認めていない。中身が国民(の声)に耐えうるものかだという声が多かった」(野田聖子総務会長の総括)など特徴的な発言とともに「先の戦争の反省に立って何をすべきか、という見識は皆にある」(懇談会出席者)。「今の憲法解釈は国会と行政が激しいやり取りで積み上げたもの。自民もやっと『政府だけの所有物ではない』という認識になってきた」(公明党幹部)と「総務懇談会」をめぐる与党内の雰囲気が伝えられている(毎日3/17)。「国民的理解が深まっていない中で、結論を急げば、内閣が持たない」との考えが政府・与党幹部を含めて広がり始めていることの現れである。政府・与党は一枚岩では全くない状況が顕在化してきた。

「集団的自衛権行使」の最大の対象国(同盟国)である米国はどうか。すでにブッシュは去り、かつての「ジャパン・ハンドラー」(「日本を繰る人びと」)はもはや政権の中枢にいない。「日本側が求めた就任早々の1月の日米首脳会談は、米側から『多忙』を理由に断られました。2月に訪米して実現した首脳会談で、日本の首相として初めて集団的自衛権行使の検討を始めたことを伝えましたが、オバマ大統領は記者団を前に『日米同盟はアジア太平洋の礎だ』と述べたものの、それ以上は踏み込まず、『両国にとって一番重要な分野は経済成長だ』とかわしました」(ハンドブック集団的自衛権 半田滋)というのが実情である。戦費の肥大に喘ぎ、イラク、アフガンから撤退(14年末)する米国の最大課題は財政再建にあるという事情が背景にある。また、対ロシア情勢が緊迫し対応を迫られる中、アジアに新たな緊張と物議をもたらす「集団的自衛権行使解禁」計画は米国にとって「ありがた迷惑」かもしれない。

そして、何よりも力強い動きは、第一次安倍政権から継続、繰り出される9条無効化の危険な軍事法制化に対し、それを発動させない運動が始まっていることだ。特定秘密保護法成立後も廃止を求める闘いが継続し、高まっているのはかつてないことだ。

「安倍政権に改憲などできない」を確信に、闘いを大きく広げよう。今、その時である。署名、集会、デモなど行動を広げ、自治体決議に取り組もう。

「むすぶ」目次(2014年3月号)2014/04/18 10:28

■ 今月を視る/「集団的自衛権行使」に関する「解釈変更」閣議決定方針
国内、世界に通用しない安倍政権の暴走は止められる
■ 報告/ 9条無効化による戦争国家を許すな! 前田哲男さん講演集会                 
■ Q&A/ 憲法解釈の「変更」で集団的自衛権行使 9条の無効化ねらう安倍政権            
■ 読書室/『塩花の木』(金鎮淑 著)を読んで・・・ 堺市 若宮八十英
■ 読者つうしん/「裁判員候補者」に選ばれて・・・その1  枚方市 佐藤謙司
■ ブックレット紹介 & お知らせ

今月を視る(「むすぶ」2014年4月号より)2014/04/25 10:48

―安倍政権がねらう国のかたち―
  「武力行使のできる国」「交戦権のある自衛隊」を認めない!
「安倍政権が戦争したがっていると言う人がいますが、そんなわけはない」。安倍政権周辺の閣僚、自民党議員、御用学者が、「集団的自衛権行使容認」批判に対して最近よく使う「反論」だ。第一次世界大戦以降、「戦争」が違法であることは、偏狭なナショナリストが中心の安倍政権でもわきまえなければならない事実である。したがって、安倍政権のねらいが「戦争できる国」ではなく、「武力行使のできる国」「交戦権ある自衛隊」であることに的を絞って批判を展開する必要がある。

安倍政権のやること、なすこと、言い草には腹の立つことばかりである。本来、武力紛争がない状況だけでなく、貧困や環境破壊、人権侵害など社会的不正義にも立ち向かい、取り組んでいく「積極的平和主義」を単なる「武力信仰」を意味するだけの「積極的平和主義」に置き換えたり、「武器輸出」を「防衛装備品」輸出に置き換えたり、ごまかしとイメージ操作の連続である。

理由も大儀もなかなか見出せない集団的自衛権行使合憲論。そのため、「安保法制懇」など安倍政権周辺の連中が総出でやっと探し出してきたのが、「最高裁砂川判決」である。

この「論拠」で先陣を切り、引っ張るのは、自民党内の「意見集約」に走る高村正彦副総裁である。高村らは、1959年の砂川事件最高裁判決の「わが国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然」との部分を引用して、最高裁は個別的、集団的の区別をせずに必要最小限度の自衛権を認めている、と主張する。安倍首相も「個別(的自衛権)も集団も入っている。両方にかかっているのが当然だ」「集団的自衛権を否定していないことは、はっきりしている」と奇妙な言い切りを行っている。

「砂川事件」は、1957年、東京都砂川町(現立川市)の米軍立川基地拡張に反対するデモ隊の一部が基地内に立ち入り、7人が日米安全保障条約に基づく刑事特別法違反の罪で起訴された事件である。東京地裁は「米軍駐留は憲法9条違反で罰則は不条理」(伊達裁判長の名をとって「伊達判決」と呼ばれている)と無罪を言い渡した。検察側の跳躍上告(高裁を飛ばす)を受け、最高裁は59年に一審判決を破棄し「わが国が、存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは国家固有の権能の行使として当然」との解釈を示した、というものである。

だが、この判決は、一審伊達判決を覆すために、米側から外相、最高検、最高裁に対する直接的かつ具体的な指示があったことがすでに公開米公文書で裏付けられており、「司法の独立」を放棄した極めて政治的判決であることは、広く知られている。この「最高裁砂川判決」を集団的自衛権行使合憲論の根拠とすることの無理はそれだけではない。判決は、在日米軍基地の存在が違憲ではないとするために、「自衛のための措置として他国に安全保障を求めることは禁じられていない」とした上で、「日本が主体として指揮権、管理権を行使できない米軍が駐留しても憲法の禁じる戦力には該当しない」としたにすぎない。しかも、伊達判決の再来を防ぐために、「安保条約のごとき、…高度の政治性を有するものが、違憲であるか否かの法的判断は、裁判所の司法審査権の範囲外」とのいわゆる「統治行為論」を展開し、後の違憲訴訟に逃げ道を準備した法的にはレベルの低い判決である。

安倍政権のごり押し路線は、無理に無理を重ねている。対中国紛争に、「見捨てられ危機」をあおり、「集団的自衛権行使解禁」をえさに米国を巻き込もうとしても、米国は、巻き込まれたくない意志を明らかにしている。こんな底の浅い「集団的自衛権行使」解禁計画は、広く真実を知らせるならば、必ず葬り去ることはできる。

「むすぶ」目次(2014年4月号)2014/04/25 10:49

■ 今月を視る/ 安倍政権がねらう国のかたち
「武力行使のできる国」「交戦権のある自衛隊」を認めない!
■ ミニ解説/ インドへの原発・武器輸出とODA(政府開発援助) 三ツ林安治                 
■ 平和と生活をむすぶQ&A/ 安倍政権のねらう集団的自衛権行使~多国籍軍参加
              海外での制限なき武力行使への道を許すな!           
■ 映像案内/『標的の村』沖縄の人の悔しさ、怒りをいかに受け止めるか 堺市 藤丸隆裕
■ 「裁判員候補者」に選ばれて・・・その2  枚方市 佐藤謙司
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