今月を視る (「むすぶ」2022年11・12月号より)2022/12/01 10:22

「福祉、教育削って10兆円の軍事費へ」?
     生活破壊、軍事最優先社会への大転換を許さない!

世界第3位のスーパー軍事大国へ
現状でも日本は、世界のベストテンに入る軍事大国である。軍事費は世界第9位(2021年:6兆9300億円-ストックホルム平和研究所)、軍事力ランキングは世界第5位(2021年-Global Firepower)である。軍事力ランキング資料をネット上にあげている論者の解説では、「上位4カ国に比べると兵力においては著しく低いですが、GDPの僅か1%でも他国と比べて多い防衛予算と最新鋭の装備を備えていることもあり、この順位です。特に海上自衛隊と航空自衛隊においてはランクが高く、イージス護衛艦にそうりゅう型潜水艦など含めた海自の装備は、世界でも屈指です。昨年には最新鋭のステルス艦「もがみ型」が進水しています。最新鋭のF-35ステルス戦闘機の導入も始まっており、最終的には150機近く配備される予定で、これは今のところ、米軍に次ぐ、世界二番目の数です。」とある。また、「日本の軍事力について 、中国政府系メディアは、『核兵器以外のすべての武器・兵器を生産する能力があり、軍事力ランキングに表れない「潜在的軍事力」で見れば、日本は間違いなく世界一だ』と評価(警戒)しています。」とも。日本の国民にはほとんど知らされていないが、日本の軍事力が超ハイレベルだということは世界の常識なのだ。
ただでさえ強大な軍事力をさらに倍加させようと政府が躍起になっている。この強引な計画が現実のものになれば、軍事費・軍事力ともに、米国、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国になる可能性は高い。

「軍備増強の必要性」の大合唱
政府は、国家安全保障戦略など3文書(他に「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」)の年内改定と軍事費(「防衛費」)大幅増(5年で2倍)に一気に持ち込もうと動きを加速させている。中国との
実戦も念頭に敵基地攻撃能力(「反撃能力」)を筆頭にあらゆる面での戦闘能力の大幅アップが目標だ。メディアを動員し、すでに「軍備増強の必要性」を多くの国民が認めているかのように描く。そんなことはない。実際の世論は、「増税による防衛費増」に反対が3分の2に達している。
 政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長・佐々江賢一郎元駐米大使)が、10月22日、『防衛費の安定財源確保に向けて「国民全体の負担」が必要』とする報告書を出した。「有識者会議」は、そのメンバー構成から一目で明らかなように、政府・自民党や大企業の代弁機関であるが、「報告」内容は想像以上に“結論ありき”のひどい内容だった。「5年以内の防衛力強化が欠かせない」。「反撃能力(敵基地攻撃能力)保有―「十分な数の長射程ミサイルを装備」と、戦闘継続能力(継戦能力)向上」―弾薬備蓄の拡充、「防衛装備移転(武器輸出)三原則」の運用指針を緩和して装備移転の拡大。「先端科学技術の成果や公共インフラの機能を安全保障分野に利用できる官民一体の体制を構築」(学術や公共財の「軍民両用」化)。まさに、軍拡一辺倒、朝鮮政府並みの「先軍政治」へのアジテーション(扇動)である。さらに露骨なのは、「国民全体の負担が必要」と言いながら、国債の発行を前提としないとする一方、原案で触れていた「法人税引き上げ」を削除するなど徹頭徹尾、戦争で大儲けを企む大企業に寄り添う報告である。たった5回の会議で出したこんなデタラメな「報告」を一部たりとも容認することはできない。自民だけでなく、公明、維新、国民、立憲民主の一部も、「反撃能力」保持容認方針が報道されているが、軍事大国への大政翼賛会という他なく、批判の声の集中が必要だ。
 
市民は「軍備増強が必要だ」とは思っていない
生活破壊そのものである軍備増強計画がすんなりいくはずはない。前述した世論調査で明らかなように、多くの市民は、なんとなく「防衛力増強は必要」と思わされていても、家計を削ってまで、軍事費、軍備増強が必要だとは思っていない。それだけに、政府は必死であり、攻防は続く。仮に、政府が年内に「防衛3文書」の改定を強行したとしても、その実質化を阻止する闘いはその後も激しく続く。
沖縄・南西諸島では、自衛隊と米軍による最大規模の日米共同統合演習「キーンソード23」が行われ、これに対し、「沖縄を再び戦場にするな」と抗議の声があがる。沖縄・南西諸島の基地ゲート前では、粘り強い取り組みが継続されている。際限のない軍拡競争にではなく、生活支援のために予算を回せ!このシンプルな訴えと粘り強い取り組みを全国に広げよう。

「むすぶ」目次 (2022年11・12月号)2022/12/01 10:23

■ 今月を視る /「福祉、教育削って10兆円の軍事費へ」?
生活破壊、軍事最優先社会への大転換を許さない!
■ OPINION / 米、中、日、韓、朝鮮は東アジアで戦争するな
地球温暖化対策こそ火急だ  沖縄大学元非常勤講師 西岡信之
■ Q&A <131> / 海自・海保の連携強化をねらう日本政府                                 
■ Music Corner / 海勢頭 豊さんの歌『思無唆(しむさ)』  印西市 若谷政樹
■ Book Corner /『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』
                斎藤幸平 著  週刊MDS編集部 浅井健治
■ 読者つうしん / 核兵器も原発もいらない!“核禁条約批准署名”定例街頭行動を継続  
                       関電前プロジェクト 安井賢二
■ 追悼<伊賀孝子さんを偲んで> & おしらせ